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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第2章 VSライコス編
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ジズVSベヒモ③

ジズVSベヒモ③



  ────対ポルム組織ジズ マダー・ステダリーの部屋


 

 「いや~。彼の成長は実に素晴らしい! 着実に育っています!」


 マダー・ステダリーは1人で喋っているわけではない。


 一応この寂しい部屋には彼以外にもいる。


 しかし、無意味に部屋を歩き回る彼とは違い、黒装束の者は黙って椅子に座っている。


 ただでさえ明かりが足りていない部屋。


 意識して見なければ椅子の上にその黒装束の者がいるかは分からない。


 その黒い顔は今どんな顔をしているのか、まず起きているのかさえ分からない。


 けれど興奮している男の話を聞く相手にはなっているようだ。


 「欲を言えば〝あの後〟を見たかったです。しかしそうしてはきっとベヒモの少年の命はなかった。ですからバモンには感謝をしなくてはいけませんね」



 ────数十分前 対ポルム組織ジズ 訓練室



 どんな盾も貫くことが出来る矛と、どんな矛も通さない盾を売っている商人の話がある。


 もしも実際にその2つのような矛と盾があって、その矛でその盾を刺したらどうなるのだろう。

 

 盾も矛も同じ素材で作られているのだとするのならその結果は、使い手次第なのではないだろうか。

 

 エイドは炎に包まれた刀でカインが隠れている岩に斬りかかった。


 その一連の動作は素振りをするようで、何のためらいも感じられない。


 握った刀をただ無心で振るだけ。

 

 炎によって溶けかかった岩を迷いのない刀がそれの頭から真下に降りていく。


 爆発する炎の矢でも壊れなかった岩が今、粘土を2つに分けるように簡単に裂けて断面を見せる。


 しかし刀は途中で斬れない物に当たった。

 

 その時初めて刀は音を鳴らした。

 金属と金属がぶつかった高い音ではなく、プラスチックとプラスチックが当たったような軽い音。


 「まさか上から斬ってくるとは思わなかったぜ。エイド、お前正気か?」


 「カインさんのその鉄の盾はどうして斬れないんですか?」


 「さあな! どうしてだろうな!」


 真っ2つに分かれた岩の中から出てきたカインは、盾を合わせて炎の刀を受け止めた。


 エイドとカイン。ジズとベヒモ。

 速さではジズが勝っていた。では力はどうだろう。


 けれどそれは考える必要もない。

 なぜなら「正面から戦ってはカインに勝てない」と彼は知っていたのだから。


 力とはすなわち腕力の差。


 これは幻獣(アース)の力を借りてもエイドはカインの足元にも及ばない。


 カインは刀を片腕で受け止めることも出来たであろう。


 彼には相手が全力かどうか疑うほどの余裕があった。


 そしてここから勝負は一瞬で決まる──はずだった。


 「2人ともそこまでだ!」


 エイドの腕は羽をむしられるように握られた。


 「お前はエイド・レリフか? それとも天空(そら)幻獣神(げんじゅうしん)・ジズか?」


 「……バモン教官?」


 思い出すように自分を見てきたエイドの目でバモンは安心した。


 「2人ともアースの発動を解け。もう終わりだ」


 「どうしてバモン教官が?」


 「あいつらに呼ばれてな」


 バモンが指差す部屋の入り口には、息を切らしたニアースとアマウがちょうど入ってきた。


 「良いかよく聞けエイド・レリフ。石を飲んだことによりお前の体は半分幻獣だ。その幻獣にお前の意識が負けないように気をつけろ! 良いか!」


 「平気ですよ。僕はただジズの声に従っただけです」


 (そうだ。石を飲んでも僕は何も変わっていない。聞こえてきたジズの声の言うことを実践してみただけだ。なのに何でこの人はこんなに怒って──)


 「それが危ないと言っている! お前はカイン・ビレントを殺そうとしていたんだぞ!」


 「そんなことするわけ……するわけ……」


 (そんなことしていない。僕はジズの教えてくれた通りに力を使っただけ)


 エイドの頭の中についさっきまでの戦いの一連の映像が流れてきた。


 そのほとんどの記憶には己の力のままに燃える炎が映っていた。


 「良いよエイド。今日のことは忘れろ。だから今の自分を、アースを発動しても忘れないようにしろよ」


 カインさんは僕の肩を軽く叩いた。


 今の自分。今の自分ってどんな僕。

 泣いている僕で合っているのかな?

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