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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第2章 VSライコス編
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29話 ジズVSベヒモ① 

29話 ジズVSベヒモ①



 ────訓練室



 「アースオブ──ベヒモ!」


 「アースオブ──ジズ!」


 手の平を鉄の杭で刺したカインは岩に、刀で腕を斬ったエイドは炎に包まれた。

 

 「岩と炎か~。属性的にはカインくんの方が有利な気がするね」


 「でもエイドの炎は前よりも……」


 少年の炎は今までの物と比べると規模が違かった。


 今まで見てきたニアースにはそれが一目で分かる。


 そして彼女はこの規模の炎に見覚えがあった。


 以前これと似たような黒い炎を知っている。


 (なんだろう。頭の中に、体の中に何かが流れ込んでくる。いや、侵入される感覚。何かが僕の中に入ってくる!)


 エイドを包む炎は既に消えていた。

 肌を覆う紅い羽、自身の身長と同じくらいの大きさの翼が背中には生えていた。


 体を包む物が消えたのはカインも同じ。


 岩から解き放たれたカインはエイドに正面から突っ込む。


 自慢の腕を振り上げて早くもこの戦いを終わらせようとしていた。


 「おいエイド! よそ見するほど余裕なのか!」


 「そう。そうやるんだね。うん分かったよ。ありがとう。やってみるよ」


 エイドは下を向いたままカインの拳を避けた。


 彼は前を見ないまま、目を閉じたまま何かと話していた。


 「ジズの羽ばたき」


 背中の翼を羽ばたかせて正面のカインに風を放つ。


 しかし「風」だったのはほんの始めだけ。


 その風は数秒で炎となり目に見える赤い風となった。


 迫る炎の風にカインは命の危険を感じた。


 「大地の加護(ロック)!」


 カインはとっさに地面に手を当てる。

 すると炎に飲まれそうになるギリギリのところで、その場の地面が盛り上がり巨大な岩の盾となって少年を守った。


 (なんだよエイドのやつ! こんなの見たことねえぞ! それに、今あいつ容赦なく俺を焼こうとした!?)


 岩の後ろで冷や汗を垂らしたカインは、自身が盾を身につけていることをすっかり忘れていた。


 「カインさんの頑丈な岩。あれは焼けそうにないな。じゃあ頼むよツバキ」


 エイドは刀を両手で握り、紅い刃先を正面へ構える。


 そして1回だけその場で大きく翼を羽ばたく。


 羽ばたく音が見ている者の耳に届いた頃には既に、エイドは先ほど出現した岩の盾を刀で突き刺していた。


 「えっ! 何今の! ニアースちゃん見えた!?」


 その速さは計測不可能。もはや──


 「見えるわけないわ。だってあんなの瞬間移動じゃないの」


 (カインさんは僕がこの岩を「回り込んで来る」か「飛び越えて上から来る」と思っているはず。


 まさか岩の盾に正面から来るとは思わないだろう。


 あの人と正面から戦ったら僕はきっと勝てない。


 それをカインさんも知っている。

 だからあえて、真っ直ぐ突っ込んだ)


 相手が思っていないところから攻めるエイドのその戦法は悪くなかった。


 しかし悪かったのは中途半端にその岩の盾に刀を刺してしまったことだ。


 どうせ突っ込むのなら自分も岩を貫通し、相手に一撃を与えなくては意味がない。


 実際は刀身の半分だけが岩を貫通しただけ。


 盾の内側にいるカインにとって、半分出ているその紅い刀身は足場になってしまった。


 「その刀すげえな。岩を普通に刺すんだもんな」


 カインさんが僕の上からっ!? どうやって!?


 「その岩は斬れても、俺の(アース)は斬れないぞ!」


 見上げたエイドの目には岩の盾の上から飛び降りてくるカインの拳が映った。


 エイドはまず岩に刺さったままの刀を抜いた。迫り来るカインに備え──


 (ダメだ、それじゃあ間に合わない!)


 エイドは刀をその場に残し自分だけ後方へ回避。


 その場にわずかに舞った紅い羽を着地したカインが踏みつける。


 「(これ)。投げてやろうか?」


 「自分で取った方が速いので、平気です」


 「言うじゃねえか!」


 エイドも速いがカインが遅い訳ではない。


 ジズが速すぎるだけでベヒモも速かった。


 カインは恵まれた体格とは言えないが、蓄えられた筋肉(エネルギー)が彼のアースの影響でよりパワフルなものになっている。


 (ここは一旦回避!)


 エイドは迫るカインをギリギリまで引きつけると翼を使い上に飛んだ。


 翼が無くても高く飛び上がることなら出来るカインだったが、それ以上に高く少年は飛んだ。


 しかし彼は飛んだ後のことを考えていなかった。


 いや、実際は刀を取りに行くつもりだった。


 けれどその刀の前でベヒモが待っていることに飛んだ後に気がついた。


 「火傷しますよ!」


 待ち構えている彼に向けて翼で風を送る。


 カインに再び炎の風が迫る。

 しかし構えていれば、それを知っていれば、今の彼にはどうということなかった。

 

 炎は両腕を合わせたカインに直撃。

 2人の少女からはカインが炎に丸呑みにされたように見えた。


 「あーあー。勝負ありかな~」


 「どうかしら。あいつの新しい武器は盾だから」


 カインは初めてその武器を正しく使った。


 両腕を合わせて1つの大きな盾になった灰色の鉄板は炎に飲まれても色1つ変えなかった。


 「・・・炎からはみんなを守れることが証明されたぜ!」


 カインの上半身は盾のおかげでほぼ無傷。


 しかし今の彼の肌はアースオブベヒモの力により岩の鱗に包まれている。


 これはもう全身が鎧のようなもの。

 炎の風に飲まれてその鱗に唯一ついた傷は、焦げくらいである。

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