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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第2章 VSライコス編
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28話 新たな力① 

28話 新たな力①



 ────領土外の草原



 「おい。あの黒いやつらが偵察クラスってやつじゃねえか?」


 「よし!殺ってやろうぜ」


 破れている服が見せる彼らの肉体は、その発言が虚勢ではないことを証明している。


 現に彼らの視線の先にいる黒色の制服を着た兵士たちよりも、体つきが一回り大きい。


 「兵士さんは3人か」


 「薬は飲んだな? 行くぞ野郎ども!」


 先頭を歩いていた男が走り出すと後ろの4人がそれに続く。


 彼らは獲物を仕留めにいく肉食動物のように迷いなくターゲットへ砂煙を上げて迫る。


 黒服の兵士たちは狙われていることにその時初めて気が付いた。


 「向こうから何か来るぞ!」


 「人間・・・か?」


 「あれは生存者って感じじゃないですね。盗賊の類でしょうか」


 「念のため銃を構え──」


 銃を構えていた3人の兵士に襲いかかる5人の男たち。


 彼らは風の如く兵士を包みそして通り過ぎた。


 その鎌鼬(カマイタチ)が去った後、腕と頭を無くした兵士たちが地面に倒れた。


 乾いた大地に血が降り注ぐ。


 「すげえなこの薬! あの兵士たち俺たちの動作に気が付かなかったぜ」


 男たちはそれぞれがもぎ取った(あたま)(うで)を、ボールやラケットのようにして手の上でおもちゃにした。

 

 そうする度に荒野に血の雨が降る。


 「んま、相手からすれば俺たちはただの盗賊だから舐めてんだろうよ」


 「おっ、みっけたぞ! 飴だ!」


 「こいつの飴は黄色だ」


 「こっちのは青いぜ」


 おもちゃに飽きた男は倒れている(からだ)が身につけている黒い服を漁った。


 盗賊らしくポケットに真っ赤な手を突っ込み漁る。


 ポケットの中には持ち主にしか価値が分からないような物も入っていた。


 しかしそれの価値を知る者がいなくなった今、それらは時々吹く風によって飛ばされていく。


 「こいつらも飴を舐めとけばまだ、俺らと戦えたかもしれないのにな~」



  ────対ポルム組織ジズ ヘパスト・レンの工房


 

 「おー! これがそう!?」


 「んだ。これがお前さんの新しい武器(アース)だ!」


 レンは腕を組み得意げに笑った。

 カインの目の前には長方形の細長い金属の板が2つ立てかけられている。


 よく見ると腕を通すベルト部分と手で握るグリップ部分が備え付けられている。


 しかし工夫されている点はそれだけで色も灰色と実にシンプルな見た目。


 その見た目からこれが武器で言うと何になるのかすぐには分からない。しかし強いて言うのなら──


 「これって確か盾だっけ?」


 「そうだ。盾を2つ作った」


 「すげー! 武器が2つってエイドみたいだ! でもどうして2つ?」


 「良いから早く両手で持て」


 少年は言われた通り両手にその金属の厚い板を装着した。


 先ほど少年はこれを「盾」と言ったが腕に通してから見てみると、これは旋棍(トンファー)にも見える。


 持ち手(グリップ)と言い腕の外側の金属はまさにそうだろう。


 けれどそれにしては腕を覆う金属の面積が広い。


 少年の太い腕を余分に隠せる金属の板。


 そして持ち手だけでなくベルトで腕にしっかりと固定されている。


 「レンさん! これすげー軽いよ!」


 「んなこたあどうでも良いんだ! 手のひらを自分に見せて腕を付けろ!」


 「こ、こうか?……なるほど!」


 腕と腕、金属の板と板を合わせてそこに現れたのは1つの大きな盾。


 少年の上半身はこの鉄の板で隠れている。


 しゃがめば全身を盾の後ろに隠せるだろう。


 「そいつは1つでも十分頑丈だ。そんで軽い!だが1つだと守れる範囲が狭い。でも、2つ合わせればまさに鉄壁の盾になる!ちなみに(アース)は今お前さんが右に付けてる方に装着してあるからな」


 「ありがとうレンさん! 1つでも盾として使えそうだけど、これって持ちながら敵を殴ったり、端で切ったりできるな!」


 「ああ、まあそれはオマケみたいなもんだ。お前はそれで敵を倒すんじゃなくて、みんなを守るんだろ?」


 「守るよ!」


 「アースの発動は持ち手のところのボタンを押せば鉄板の中から鉄の杭が出てくる。それで──」


 「じゃあ早速訓練場で使ってくるぜ!」


 「バカ! 守る訓練が1人で出来るのか?」


 「あ~。そういや攻撃してくれる人がいねえ」


 「これをエイドに持っていけ。そんでついでに訓練に誘いな」


 レンは側に立てかけてあった刀をカインに渡した。


 受け取った少年はそれを一目見ただけで男に返そうとする。


 「レンさん。これはエイドの刀じゃねえよ?」


 「飲んだ──って言えば分かるか?」


 「……そっか」


 カインはエイドが自分と同じようになってしまったことにショックを受けていた。


 また、そうなって欲しくないがために、自分がエイドに隠し事をしていたという罪悪感のようなものを感じていた。


 「何ぼさっと下向いてんだ! 訓練するならしゃきっとしろ!」


 「お、おう。レンさん本当ありがとう!」


 男の声に背中を押された少年はなんとか、エイドの元へ歩き出した。

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