左腕②
左腕②
────対ポルム組織ジズ
とある廊下でバモンとドドが対面し2人の間に妙な緊張感が走った。
すれ違った時、先に話しかけたのはドドだった。
「報告なら不要だぞバモン教官」
「どういうことだ」
バモンは背を向けたまま尋ねた。
「イーサン・コペルトが見つかった」
言われたことを理解した数秒後。
バモンは振り返ってドドの胸元に手をかけようとした。
ドドは敵意がないと示そうとしたのか、即座に両手を上げた。
「緑の奴にも言ったが落ち着け。そうは報告していない」
「ウインにも会ったのか?」
「さっき廊下でな。ところでお前はライコスを知ってっか?」
「・・・狼のことか?」
バモンの頭の中に、昔読んだ辞書の1ページが蘇る。
「そうだが動物じゃなくて組織の名前だ。すでに偵察クラスが何人か殺られた」
「偵察クラスが殺られるとは、相当な手練れだな」
「そのライコスにイーサン・コペルトは関係していると思われる」
ドドは相手が怒らぬよう慎重にその名前を言った。
しかしバモンはその心配を余所に鼻で笑い返した。
「悪いがあいつは群れることが嫌いで、人を率いるということには向いていない性格だ。人違いだろう」
自信を込めてそう言った彼をドドも鼻で笑った。
「部下がどこに行っているかも分からない班長に言われても、説得力に欠けるな」
皮肉を言われたのは分かっている。
だがその班長は気にしない。
「あいつらが俺に嘘をついてまで守ろうとする物があるのなら、俺は何度でも知らんフリを演じるつもりだ」
そう言い残し廊下を進んだ。ドドもまた反対方向に進む。
「ワイアット・バモン。あれで鬼教官…か。なんとも損な性格をした男だ」