24話 赤い髪の青年①
24話 赤い髪の青年①
────対ポルム組織ジズ 洞窟の入り口前
エイド達と村Aから戻ったウインは洞窟に入ったところで立ち止まった。
「じゃ、俺はここまで」
「ウインさんは一緒に戻らないんすか?」
「君たちと一緒に戻ったら、何かあったんじゃないかって怪しまれるでしょ?」
少女は考えれば分かることをわざわざ聞いたカインにため息をつく。
「それに、他のクラスや部隊とはあまり親しくしてはいけないっていう、謎の決まりがあるからね~」
少年たちは去っていく青年にお辞儀をし彼を見送った。
ウインは洞窟を出ると岩山の壁を沿うようにして走り去る。
(村Aの人間が全滅寸前だったのはクラス長なら知っているはず。だけど人間のドミーまでは知らないだろう。俺もだけどあの子達も上手く報告してくれよ)
どこを見ても同じような岩の壁。
しかしウインはある位置にくるとその壁の前に立ち止まった。
その壁に指で触れて何かを描くように岩を撫でる。
すると岩の壁が扉のように動き人が1人通れるくらいの幅が現れる。
扉の先にはここが開くことを知っていたかのように1人の青年が立っていた。
「遅いぞ。何をしていたアベル」
「班長! ひっさしぶりー!」
ウインはバモンを見ると両腕を飛ぶように広げ彼に抱きついた。
彼はバモンよりも背が大きい。
しかし元気なアベルが子供で、落ち着きのあるバモンがお父さんという風に見える。
そんな大きな子供に抱きつかれたバモンは最初嫌な顔をした。
けれど目を閉じて彼の熱を感じると安心し、微笑みが溢れそうになった。
バモンが何も言わないのをいいことに、彼は数秒経過しても抱きついている。
そんな彼にさすがに「離せ」と言いたかったバモンだったがそうは言わなかった。
「・・・イーサンは見つかったか?」
安心し目を瞑っていたウインの目が開き、ようやくバモンの体を離した。
神妙な顔になった彼は通路の壁に寄りかかる。
「例えあいつを見つけても、俺は見逃すよ」
「そうだな。とにかく無事で良かった」
「ワイアットもね」
「名前で呼ぶなアホ」
「いーじゃん。2人だけなんだから」
通路の壁を見ている両者は口を緩く閉じて鼻で笑った。
「そうえばお前の教え子にあったけど。あの子は天才だね」
「あぁ、ニアース・レミのことか」
「違う違う。あの子は努力家って感じ。天才ってのはエイドだよ」
「エイド・レリフが?」
疑問を感じたバモンは彼の顔を見て確認した。
「だってあの子翼を生やしてたぜ?」
「それは羽が生えた腕が翼のように見えただけじゃ──」
「背中から。だよ」
ウインはそう強調した。
「あれって凄いよな。アースに適合して飛べる翼を出せるのって確か……」
そう言ってバモンの方を向こうとしたが寸前で辞めた。
しかしバモンが「イーサンだ」と言ってしまったので結局彼の方を向いた。
「何? やっぱりあの少年とあいつを重ねて見てるの?」
「馬鹿を言うな!」
バモンはそれを強く否定した。
だがその反応を面白がるようにウインは続ける。
「でも、あいつと色々似てるよ?」
「似ているのは髪の色だけだ。性格は全然違う」
そう大声で言ったバモンを見てウインは悲しいような、嬉しいような気持ちになっていた。
「──まだ、あの時のことを気にしてんの?」
「当たり前だ。あいつがここを出たのは俺の責任でもあるんだ」
「もうちょいで1年か。いい加減そんなこと言うのやめてくれよ……班長」