翠の羽③
翠の羽③
「行くぞ! 化け物男!」
エイドは2本の日本刀を前に突き出したまま、暴走男の背中をめがけて降下。
男がエイドの位置を確認するよりも早く刀はその背中に突っ込んだ。
血が噴き出す間もなく刀の付け根が男の背中に触れる。
男の肉が斬れる感覚、臓器を突き刺した柔らかく、ねっとりとした感覚が2本の刀からエイドの両手に伝わった。
少年はその背中を血の付いた顔で見て刀を握ったまま止まっていた。
暴走男もようやく停止しその場に頭から倒れた。
「……あ、あぁあ、ああ……うわああああああ!」
翼と羽が消えた少年は自分が握っている刀、足元の血が吹き出る背中、体についている血を見て発狂した。
(血血……違う!
こんなつもりじゃない!
本当に殺すつもりはなかった違うんだ……僕は殺していない!
殺してないよ。 殺してないよね? 僕は殺ってないよ!)
「エイド! エイド!」
「エイドしっかり!」
明らかにおかしい彼の様子を見てニアースとカインはすぐに駆け寄った。
「2人とも早くその少年を連れて離れろ! 早くだ!」
死んだ男を見に来たウインの額の羽は汗をかき苔のように濃い緑色になっていた。
「えっ!?」
「いいから早く行け!(まずいぞこれは……)」
背中から大量の血を流し倒れている男の後頭部に紫色の目玉模様が浮かび上がった。
そしてそれはウインを見て、まばたきをした。