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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第2章 VSライコス編
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翠の羽②

翠の羽②


 

 「ジズで2番目に強いと言われてる人だぞ!」


 「ジズクラスの中でも特別優秀な3人で構成された、三幻鳥(さんげんちょう)クラスの内の1人よ」


 「そんなすごい人には見えなかったです。へらへらしてる感じですよ?」


 (話した時はずっとニコニコ笑っていて、不真面目そうに見えた。


 信じられないけどもしそうなら僕たちもこの村も助かる!


 だってあんな盗賊にジズで2番目に強い人が負けるわけがない)


 少年たちが目線を送る先、鍛え抜かれた肉体を持つ大男が、細身の青年の前で一歩も動けずにいた。


 見るとビーナムは足を小さな竜巻で拘束されていた。


 「おじさん大っきいねえ~。何食べたらそうなるのかな~。もしかして飴とか舐めてるの?」


 ウインは後頭部に両手を回し知り合いのように話しかけた。


 「……お前も幻獣(エイドロン)か」


 「おじさんはただの盗賊じゃないみたいだけど、一体どこに所属しているのかな?」


 青年はさらにビーナムに近づく。

 その場で踏ん張る男の顔を下から涼しげな顔で覗いた。


 「野郎どもいつまで隠れている! 早く俺様を援護しろ! このムカつく緑男(グリーンマン)を撃ちまくれ!」


 「あー、あんたの援護ならもうこないよ。俺が先に吹っ飛ばしておいたから☆」


 笑顔とピースを合わせて踏ん張り続ける男に送った。


 「貴様覚悟をしておけ……俺はこう見えて仲間だけは大切にしているんだ」


 「そっかー残念。俺は出来れば一方的な戦闘はしたくないんだけどな~」


 「安心しろ。俺は今から幻獣(エイドロン)を超える!」


 ビーナムはポケットから飴を取り出し一気に飲み込んだ。


 今男が飲んだ飴の数は5つだった。


 「うおおおおお!!」


 男の体中の血管が浮かび上がる。

 そして自分を閉じ込めていた風の檻から一歩で抜け出し青年に殴りかかった。


 「うわ~速い速い。おじさん飴何個目?飲みすぎると人に戻れなくなるらしいよ。渡してくれた人は教えてくれなかったのかな?」


 振り続ける拳はウインをかすりもしない。


 ビーナムが遅かったわけではない。青年が早すぎた。

 

 青年が風を送るように緑の手を扇ぐと、大男の拳にピンポイントで強風が迫った。


 (う~ん。速いんだけど殴り方に技術(くふう)が足りない。


 これじゃあ地面も空中も歩ける俺には当たらないよ。


 でも、ずっと同じ速さで殴るのは凄いな。

 

 もしかしてだんだん速くなってる?)


 「クソ野郎がっ!」


 「風を受けながらここまで動けるなんて凄いよ。飴が幻獣(アース)を超えるのも時間の問題だったり……」


 「よそ見とは、余裕だな!」

 

 ウインが考え事をした一瞬、確かに隙が生まれた。


 しかしそれでも男の拳が青年をかすることは出来なかった。


 「まだ人の言葉を話せたんだ。じゃあ人間のうちに俺が今、助けてあげるよ(無理だけどね)」


 「何を……言っている!」


 (このマッチョマンが飲んだ飴の数は確実に3つを超えているはず。


 ハントさんの説明では飴を短時間に3つ以上飲み込むとポルム細胞、ポルム体液が体内でポルムになって寄生されるって聞いたけど、あの変態姉さんが言ったことが本当かどうか見てみようかな)


 「hぁhぁhぁ」


 「おじさんどうしたの? もう終わり?」


 男の拳が急に止まりその場に膝をついて両手で頭を押さえ始めた。


 「atあmあgあ!!」


 (あたま・・・(あたま)!?)


 「uooooっ!」


 「しまった!」


 ビーナムは目の前のウインではなく、岩の後ろに隠れているエイドたちの方へ向かった。

 

 元々俊敏に動けていた大男の速度は先ほどのエイドを超えていた。


 反応が遅れた青年だったが慌てはしない。


 「翠鳥の巣(ケツアルルーム)!」


 大男の周りに小さな竜巻がいくつも発生し男を囲んだ。


 それは風の牢獄。抜け出すことはおろか身動きすら取れないだろう。


 立っているだけで精一杯のはずである。


 (さっきはこれ以下の風で動けなかったんだ。この強さの風なら呼吸をするのもやっとだろ?)


 しかしそれはウインの思い込みだった。

 今のビーナムはもはやさっきの人間ではない。


 さすがに一度は立ち止まったが竜巻を恐れずに突き抜けた。


 「止まらない!? 逃げろジズクラス!」


 「逃げろ」と、言われても逃げたところで追いつかれるのはエイドたちも分かっていた。


 先ほどから戦闘を見ていた彼らはもう既に男を倒す準備ができていた。 


 「六つの瞳(リヴァイシュート)!」


 少女は6発の銃弾を水で包み込む。

 それを左右に3発ずつ分けて手の平の上に浮遊させた。


 そして手を前に振ってその銃弾を前方へ送り出す。


 全6発の銃弾が同時に前方に発射された。

 

 それはまるでレーザー。

 水に押されているので、弾の速度(威力)も確実に増していた。


 少女への負担が大きいのか彼女は後ろに倒れそうになった。

 

 が、その背中はカインが体で支えている。

 その安心感からちゃんと狙うことが出来た少女は、全6発の弾丸を迫る暴走男の両足に命中させた。


 けれど男が迫る速度が弱まっただけで男は血を噴き出しても止まらない。


 「エイドー! 行けるかー?」


 「この遅さなら十分です」


 (さっきのあの赤い少年! いつの間に空に!?)


 ウインが見上げた空には刀を握りしめたエイドがいた。


 彼は一度背中の翼を羽ばたかせると迷うことなく地面に直進。


 「こい!」って言わないなら、僕から行くぞ! 今度こそ、殺してやる!


 「行くぞ! 化け物男!」

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