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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第2章 VSライコス編
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村A戦②

村A戦②



 ────村A



 「見えていたわよ?そうね、()()()()()()()()()()()()()()


 「見えていただと!? 何を言ってやがる!」


 少女の言った「見えていた」を理解できたのは彼女の横にいる2人の少年たち。


 「さすが俺たちの班長だぜ」

 

 「ピンポイントアースを発動したままだったんですね!」


 「あの女はなぜ俺たちを見ても驚いていねえんだ!」


 「あの村人俺たちが2人だって、ちゃんと伝えたんだろうな!?」


 「ちゃんと聞いたわよ?『敵は2人』だって。でもそれじゃダメ」


 「おい!もしかしてこのガキたちは──」


 「私に何かを隠そうとするなら、別の大陸にでも隠しなさいよ!」


 少女はそう言いながら両手に銃を構えた。


 そして男たちが立っている建物の屋根と周囲に向けて引き金を同時に引く。


 相手からすれば不意打ちだった。

 しかし撃たれた弾丸は全て外れていた。


 タイミング、そして彼女の(実力)なら確実に命中させることが出来ただろう。


 だがそれは結果として、2人が戦闘をするための時間を稼ぐものに繋がった。


 「アースオブ──ベヒモ!」


 しかし戦闘に入ったのは1人だけ。

 彼女の頭の中の戦略は早速崩れた。


 「エイド! 何をしているの!?」


 エイドは腰の刀を抜いてさえいなかった。


 少年はこの状況で、武器を「構える」か「構えないか」を考えていた。


 (ニアースさんが発砲してカインさんがアースを発動した……僕も戦えってこと?


 そんなの出来ない。だって相手は人間! 

 僕たちジズクラスはポルムとドミーという化け物を倒すために力を使うんじゃなかったんですか。


 嫌だ。人間とは戦いたくない。

 人間を……人を……僕は殺したくない!)


 今ここは、武器を持っている者同士が武器を向け合っている戦場である。


 武器を持つか否かなどというそんな答えが決まっているようなことを、わざわざ考える時間をくれるわけがない。


 「野郎どもチャンスだ! 撃て撃て!」


 ニアースが稼いだ十分な時間はエイドにとってはあまりにも短すぎた。


 囲んでいた男たちは屋根と地上の全方位から銃を連射する。

 

 先ほど自分たちが子供に不意打ちされたことで、彼らには「子供でも殺して良い」という理由が出来ていた。


 だから大人は容赦なく殺すつもりで銃を撃ちまくる。


 「アースオブ──リヴァイア!」


 少女は銃声にすら気がついていないエイドを抱き寄せて自らの手を銃で撃った。


 その撃たれた手から発生した水は彼女と一緒に少年も包み込む。


 水は2人に迫っていた弾丸の勢いを完全に殺しエイドを守った。


 その水が消えようとした時には、カインの大斧が銃弾からエイドの身を守った。


 ニアースもエイドを抱いたまま守っている。


 カインとニアースは被弾していた。

 しかしカインは岩石のような鱗、ニアースは龍の鱗で全身を包んでいる。


 それぞれに命中した銃弾はその鎧が跳ね返している


 「やっぱりこいつら例の力を使ってるぞ!」


 「構わん! 数で勝ってるんだ撃ちまくれ!」


 「頭だ! 鱗の薄い頭を狙え!」


 男たちはたった3人の子供に撃つには明らかに多すぎる量の弾丸を、休むことなく撃ち続ける。


 その必死さはまるで不死身の敵を殺す様。

 

 しかしそんな弾丸は幻獣の鱗を突破できない。

 

 「岩の果実(ロック)!」


 弾丸が止んだタイミングで少年は盾のようにしていた斧を大地に突き刺した。


 すると3人が立っている場所の地面がうねり、彼らを食べるように包み込む。


 彼らを飲み込み岩になったそれは色といい形といい、アーモンドのような見た目をしていた。


 「あの化け物たち岩を作りやがった!」


 「これじゃあ弾が通らねえ!」


 「誰かビーナムさんを呼んで──」


 「俺がどうした?」


 ビーナムと呼ばれるその大きな男は先ほど村人をつまみ上げていた男。


 彼はその巨漢な見た目に似合わず音もなく別の屋根からその屋根の上に現れた。


 彼の太い手には村を助けたいとエイドたちに頭を下げていた男が握られている。


 「び、ビーナムさん。そいつ生きてるんですか?」


 「離して動かなければ知らん」


 そう言って手を広げた。

 屋根に落ちた男の体はそのまま屋根を転がり草の上に落ちた。


 落ちた男を気にかける者は誰もいない。


 彼らにとって今気にかけるのは他人の命ではなく目の前の岩である。


 「ビーナムさん。ガキたちがあの岩の中に隠れてます。どうしますか?」


 「隠れている?それは違う。あいつらは逃げている。逃げているなら、捕まえるだけだ」


 大男はそう言って少年たちが中にいる岩の前に屋根から跳んで移動した。


 彼は自分の両手を揉んで温める。

 ビーナムは他の銃を持っている奴らとは違い武器を1つも持っていない。


 いや、彼には武器を持つ必要が無いのかもしれない。


 全身筋肉で作られていると言ってもいい男の肉体(からだ)


 拳はハンマー、胸板は鋼の盾である。


 「ビナームさんが拳を落とすぞー! お前ら早く避難しろー!」


 それを聞いた男たちはその場から建物の密集地へ走り出した。


 その外の様子を知らぬ3人は狭い岩の中でお互いを見合って話していた。


 「カイン、5分くれる?」


 「……やってみるよ」

 

 普段強気なことを平気で言うカインだったがそれに対しては自信無さげに答えた。


 彼の額からは汗が垂れて岩の鎧を濡らしている。


 シコドラン・ビーナム:盗賊たちを率いるボス。スキンヘッドの頭をよく見ると(ワシ)刺青(タトゥー)がある。

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