20話 村A戦①
20話 村A戦①
────村A
「ここが村Aですか」
少年たちは廃墟のような場所にたどり着いた。
数年前、この廃墟がまだ町と呼ばれていた頃は多くの人々が、この辺りで暮らしていたことを想像させる。
しかし今では屋根に穴が空き、壁には亀裂が入っている。
かつての家としての役割を十分に果たせそうにない。
壁の外から中が見える建物内には住んでいる人がいない。
そのせいか空は晴れているのに冷たい空気が漂っている。
「敵がいるんだから、気を引き締めなさいよ」
「じゃあおっさんはここで待って──」
カインは男をゆっくりと降ろそうとしたが、男は自ら背中を離れて元気に走り出した。
「ジズを連れてきましたー! 約束通り村のみんなを解放してくだせえ!」
男はそう叫びながら建物が並び立つところへ走って行った。3人とも彼を急いで追う。
「おっさんどういうつもりだ!」
カインがそう言った時には既に手遅れ。
少年たちは建物の陰や屋根から現れた数十人の男たちに囲まれてしまった。
すぐに状況を整理した少女は、正面を見ていた少年2人に上を見るように建物の屋根を指した。
「2人ともよそ見しないで!」
少女が指差した建物の屋根には先ほどまで少年たちと一緒にいた男が、一際大柄な男の横にいた。
「約束通り連れてきたことは評価してやる」
ジーパンにタンクトップ姿の大男は、頭を下げている男をつまみあげた。
「早くみんなを解放し──」
男がそう頼み込む前に「閉じろ」と言い、大男は大きな手でその男の口を掴んだ。
そのままうさぎの耳を持つように彼を持ち上げる。
大男の腕は持ち上げられている男の体と同じくらい太い。
今にも窒息しそうな男がわずかな力でその腕に触れると解放されて、何とか息を繋いだ。
この光景を少年たちが見ている暇はなかった。
少年たちはお互いに背中を合わせ臨戦態勢に入っていた。
「お前たち3人でよく来たな」
「それもガキっ子」
「村人を解放して欲しかったらお前らの持ってる武器、服、食物全部置いてけ」
「そんでそこの少女は俺たちと来い」
「そこの赤い髪の小僧もだ。野郎だが良い顔してやがる」
地上と建物の屋根から盗賊たちの声が投げられた。
「敵は2人だけじゃなかったんですか!?」
「俺たちは、ハメられたんだよ!」
「村は交渉材料で、本命は私たちってことでしょうね」
2人の少年は囲まれて武器を向けられている恐怖と、把握していた情報との違いに混乱していた。
しかし少女だけは何も感じてはいなかった。
まるで、これが訓練だと思わせるほど少女だけは落ち着いている。
「おいテメエら何話してんだ! こいつが見えねえのか?」
屋根の盗賊の1人が長い銃の銃口を空に向け自慢げに掲げた。
「見えていたわよ?そうね、ここに来る前から見えていたわ」
少女は屋根にいるその男を鼻で笑って地上から見下した。そう、緑色の眼球で。
盗賊:文明が滅び秩序が無くなった環境にもっとも適応出来た者たち。大きな組織に属さず数人のグループでサバイバル生活を行っている。それぞれの経歴は様々である。




