地上での遭遇②
地上での遭遇②
────地上 ジズの領土内
穴やヒビが入っている家のような建物がいくつかあるところ。
その建物の屋根に立っている男たちは、そこから3人の少年たちを見下ろしている。
「お前らたったの3人でよく来たな」
すると周りにいた複数の男たちも続いた。
「それもガキっ子」
「村人を解放して欲しかったらお前らの持ってる武器、服、食物全部置いてけ」
「そんでそこの少女は俺たちと来い」
「そこの赤い髪の小僧もだ。野郎だが良い顔してやがる」
10人はいる大人の男たちに少年2人と少女1人は包囲されていた。
どうしよう……僕のせいでこんなことになってしまった。
僕があの時ニアースさんにもっと、もっと強く自分の意見を言っておけばこうはならなかったかもしれないのに!
────数十分前
横に並んで歩いていた3人だったが少女の足だけが突然止まった。
「全員止まって!」
「なんだよ急に」
「ニアースさんどうかしたんですか?」
少女より数歩進んだ2人は後ろを振り返る。
少女は指を前に出して遠くを見ていた。
「前に何かいる。二足歩行……人間!?」
「どこだよ!」
「前の方ですか?」
少年たちも少女の指の方向を見たが彼らの目には、荒野の風景しか映らなかった。
「俺が確かめてくるぜ」
「バカ! 止まりなさい!」
カインはそう言いながら既に走り始めていたが、二アースの声が彼を捕まえた。
「な、何でだよ! 人間なんだろ?」
「ドミーの可能性があるでしょ!」
少女はすぐにそう言い返した。
その声に真剣さを感じ体に緊張が走ったのは、黙って聞いていたエイドだけ。
先ほど走り出した彼はまだ、お気楽状態。
「はぁ? 人間のドミーはこの世にいないんだろ?それにここは、領土内。安全地帯だぞ?」
「その油断が危ないんでしょ! 私のアースで様子を見るから2人は周りを警戒して」
「了解です」
そう返事をしたのはエイドだけだった。
だからといって返事をしなかったカインは「指示を了解しなかった」わけではない。
今は了解を声に出したくなかっただけなのだ。
だからちゃんと周りに異常がないか目を配っていた。
「アースオブ──リヴァイア! 可視領域拡大!」
腰から1丁のハンドガンを取り出した少女は、それのグリップの下から仕込み刃を出して手に突き刺した。
手から赤い血が噴き出すよりも早く、少女の体は手から発生した青い水に一瞬で包まれた。
(あれ? 前は銃で手を撃ってアースを発動してたと思うけど、今日は仕込み刃で手を刺した。それにリヴァイアイって言った。リヴァイアイって何なんだろう)
少女の体を包んでいた水が弾けるように消えると、中から現れたのは水に包まれる前とほとんど変わらない少女の体。
しかし唯一、目元の皮膚は魚の鱗のようになっており眼球は緑色に変わっていた。
その眼球はまるで宝石のように美しい緑。
「ニアースさんそれって──」
「やめとけエイド、これの時のこいつは集中してるんだ」
「これの時って何ですか?」
「アースを使い慣れると体の一部だけに力を宿せる──ピンポイントアースってのが使えるようになる。代償も少なく済むから場合によってはピンポイントアースの方がいい時もある」
「そうなんですか」
(確かに今みたいに遠くを見たい時は目だけに力を宿せば良いから、ピンポイントアースの方が良いのか。けれどニアースさんはアースを発動する前にその人影を発見していた気がするけど、なんでだろう。僕らと同じ状態だったはずなのに)
ニアース・レミは今、視覚だけに全神経を注いでいた。
(やっぱり人間だわ……流血してる!?まさかドミーじゃ。でも、ポルムアイはない。体も腐っていないわ)
自分の目に映ったものを見て彼女はすぐに指示を出した。
「カイン! すぐに直進して!」
「なんだよ! さっきは行くなって言ったくせに!」
「怪我をしているの! 2人とも飴を1つ噛んだらすぐに向かうわよ!」
それだけ言うと少女は飴を噛み砕き2人を気にせず走り出した。まるで車のような速さ。
「飴を舐めて全速力で走るの楽しみだな~」
「先に行ってますよカインさん」
「おい待てよエイド!」
ピンポイントアース:通常より生贄を少なくすることで、幻獣の力を少しだけ体に宿すアースの使い方の1つ。