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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第2章 VSライコス編
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地上へ③

地上へ③



  ──結局、昨日の夜にドドさんに聞く前よりも知りたいことが増えてしまった。


 考えることも多くなった。

 知らない方が楽だった。


 そうだね、楽だった。

 知らない方が良いようなことばかりだ。


 『どんな人間も信じ込むなよ!』


 どうしてドドさんはあんなことを言ったんだろう。


 ドドさんってあんなに冷たい人じゃなかった気がする。


 しつこく聞きすぎて気を悪くしたのかな。


 それとも別の理由で僕と話したくなくなったのかな。


 僕はただ自分の記憶を知りたかった。

 ドドさんなら何か知っているって思っていたから聞いたけど、ややこしくなってしまった。

 

 この世界ではポルム、ドミーとの戦いの裏で何かが起きているって言われてもだから何なんだ? 僕はどうすれば良いんだ?


 「エイド。エイド? エイド! エイド!!」


 「は、はい!」


 「またぼけーっとしてたけど平気?」


 「え、ああ。あれ? ここどこですか!?」


 あれっ!? 

 さっきまでジズクラスの訓練室にいたはずじゃ……。


 「どこって洞窟の中よ。外に向かってるの。あんた作戦分かってる?」


 しまった! 

 ずっと昨日のことを考えていて何も聞いてない。


 でも作戦なら昨日も聞いた。


 「作戦はジズの領土内のパトロールですよね?」


 「あんたさ、体調悪いなら言いなさいよ。万全の状態じゃないと作戦に参加してもらっても困るんだからね」


 「は、はい。ありがとうございます」


 あれ? 

 領土内のパトロールで合ってるよね?


 僕は元気なのにどうしてニアースさんは体調のこと言ったんだろう。


 『どんな人間も信じ込むなよ!』


 もしかしたらニアースさんやカインさんも......悪い人。敵なのかもしれないのか。


 いや! そんなわけない! 

 ニアースさんもカインさんもみんな優しい良い人じゃないか!


 今だって僕のことを心配してくれただけだ。


 なのにどうして一瞬そう考えたんだ! 


 この2人は仲間だ! 

 一緒に戦う仲間だぞ!


 悪い人なわけがない。信じて良いんだ。


 悪い人なんてここにはいない。


 「いや~! 外楽しみだな!」


 後ろで悩みながら頭を下げているエイドとは逆に、先頭のカインはワクワクしていた。まるで彼だけ遠足に行くような歩き方である。


 「は~。呆れるわ。これは作戦。遊びじゃないのよ?」


 「それ前にもお前に言われた気がするぞ」


 「エイドを助けに行く時に言ったのよ。あれから3ヶ月以上経つのにあんたは成長しないわね~。私も悲しいわ」


 「それがちゃ~んと、訓練して成長してるんだぜ」


 カインは自身の力こぶを見せつけた。 


 少女は更に脱力しため息をつく。


 「そうねー。確かに成長しているわねー(筋肉しか成長していないじゃないの)」


 「なんだか静かだなエイド」


 「えっ、そうですか?」


 「そうだよ。何かやり忘れたことがあるのか?」


 「いえ! 何もないです!」


 「あんたたち。アースは目に見えるからいいけど、飴はちゃんと3つ持った?」


 少女は腰のポケットから赤くて丸いものを取り出し、2人に見せるように手の平に並べた。

 

 2人もそれを取り出して手の平に並べた。


 少女がそれを確認すると再びそれをポケットへ戻す。


 「そういえば今から僕たちが行くジズの領土内ってどんなところなんですか?」


 「さっきバモンさんが言ってたのにあんた聞いてなかったの?」


 「き! 聞いていたんですけど、ハッキリ理解できなかったです」


 ここで正直に「はい。聞いてませんでした」なんて言ったらニアースさんに怒られて殴られる。仕方なく嘘をついた。


 「しゃあねえな~。俺が説明してやるよ」


 「お、お願いします」


 カインさんの説明は不安だけど、聞くだけ聞いてみよう。


 「領土内っていうのは、ジズの周りのことだ。ジズに入れない人が村みたいなのを作ってジズ周辺で暮らしてる」


 「どうしてその、領土内は地上なのに安全なんですか?」


 「それはだな......」


 腕を組んだまま考え始めた少年を見て少女は「は~」と息を吐く。


 そして先頭に出て説明を続けた。


 「外にいる限り例えジズの領土内でも安全ってわけじゃないわ。でもポルムやドミーが攻めてきたらすぐ分かるように、偵察クラスの兵士が領土内のあらゆるところで見張りをしているの」


 2人の少年はそう話す彼女の姿を尊敬の目で見ていた。


 「領土内って広いんですか?」


 「領土内は具体的にどこからどこまでって決まっていないの。でも偵察クラスがどこまでならポルム、ドミーがいないかを確認するために毎日出撃しているから少しずつ広くなっているらしいわ」


 「じゃあいつか地上の全てが領土内になるかもしれませんね」


 「ま、どこかでポルム、ドミーと衝突することになるけどね」


 「あぁ……」


 「俺たちがポルムとドミーをやっつければ、みんな外で暮らせるから頑張ろうぜエイド!」


 「はい! 頑張りましょうカインさん!」


 「あっ! (ひかり)が見えてきたわ!」


 先頭を歩いていた少女が指を正面の方向に刺した。そして目を輝かして走り出す。


 「おっしゃ外だ行こうぜ!」


 「ま! 待ってくださいよ!」


 2人は前に見える白い光を確認するとエサを待っていた動物のように走り出した。


 カインさんがはしゃぐのはわかるけどニアースさんまで……僕にはあの光が、見ると走り出したくなるものには感じない。


 でも2人にとっては特別なものなのかもしない。


 外ってそんなにいい場所なのかな。

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