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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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成長③

成長③



 「それは武器の方のアメよ! P液抽出丸ポルムえきちゅうしゅつがん! 分かるでしょ?」


 「なんだよそれ!」


 平手を食らったカインさん。

 慣れているのか痛いとも言わない。流石です。


 「確かそれってポルムの体液から作った人体強化の薬……でしたっけ?」


 「なんだよそれくそじゃねえか! 寄生されないのか!?」


 カインさんはさっき口に入れようとしていたアメを、汚い物を持つみたいに指先で摘んでいる。


 でもポルムの体液から作ったと聞いたらその反応は当然だと思う。


 「ちょっと待って、なんでカインが驚いてんのよ。あんたは何回も教わってるはずでしょ!?」


 「・・・そうだっけ?」


 「そうよ! 逆にエイドはちゃんと覚えていて偉いわね」


 「まあ、最近教わったばかりなので」


 「でよ、これ飲むとどうなるんだよ」


 「これを食べると私たちもドミーのように身体能力が上がるのよ」


 これはポルムに対抗するためのアースに次ぐ2つ目の武器。


 ポルムの脳を活性化させる成分を取り出して固めたもので、これを体内に取り込むと僕たちもドミーのように常識を超えた動作が出来るらしい。


 「マジ!? すげーじゃん! アースいらないな!」


 ついさっきまでゴミのように持っていたアメを、卵を持つように両手で大事に包み始めた。


 「バカだからあんたは忘れてるかもしれないけれど、アースが出来るまではこれで戦ってたのよ」


 「これってアースよりも凄いんですか?」


 「わかんないけど流石にアースを超えるのは無理でしょ。あれは魔法みたいなものも使えるし。特にエイドなんて空中を走ることが出来るじゃない?」


 「あ、そうでしたね」


 そうだ、アースにはそれぞれに魔法のような技がある。


 アメは身体能力を上昇させるだけだ。


 「だけ」って言ってもアースを使わないでドミーと戦えるんだからかなり凄いんだろうが......。


 「これ赤いけど味があるのか? まさかポルムの血じゃないだろうな!」


 「味は使う人の好みに合わせられるから、トマトにしといたわよ」


 僕とカインさんは口を開けて絶望した。


 「な、何よあんたたち! その目で私を見るのをやめなさい! 蹴るわよ!」


 「蹴るのはこっちの台詞だニアース!」


 「そうですよ! 何で僕たちに好きな味を聞いてくれなかったんですか!」


 だいたい何でトマト!?


 ぼ、僕は嫌いってほど嫌いじゃないけれど、トマト以外にも何か!


 その~。何かしらあったでしょ!


 「だってあんたたち探してもいなかったじゃない。ていうかどこ行ってたのよ」


 「うっ……」


 「そ、それは~」


 「何? 私に言えないわけ?」


 他の班の人と関わっただけでなく、その班の班長を殴ったなんて言えない。


 カインさんと目を合わせ、お互いの考えていることを確認した。


 「それよりニアース! お前落ち込んでないのか!」


 「そうですよ! 元気になりましたか?」


 これで話題をそらせる。

 僕たちにとって「どこに行っていた?」が弱点なら強気なニアースさんの弱点は「落ち込んでないですか?」だ!


 すると思った通りの反応をニアースさんは見せた。


 「あんたたちこの私が落ち込んでいるとでも思ってたの?だいたい私はあのライオンにポルムアイが4つあるのは見えていたのよ。だから他のドミーよりも頭のポルムが成長していて賢くなっていたことも! 生命力が増して頭だけになっても動けることは知っていたわよ! でも襲ってくる確率が極めて低いと判断したの! なのにあの人はうるさいのよ! そんなのは分かってたっつーの!」


 バモンさんの代わりにそのマシンガンの口調で撃たれた僕たちはまるで叱られた気分。


 「どうもすいませんでした!」とその場で腰を曲げて頭を下げた。


 「あ、あんたたち何謝ってんの?気持ち悪いわよ」


 「いや、謝らずにはいられなくなった」


 「僕もです」


 きっとこれはニアースさんがバモン教官に言いたかった全てなのだろう。


 でも彼女はあの場では耐えたんだ。

 ならそれを言われるのは僕で構わない。


 そして謝るのもバモン教官じゃなくて僕らで良い。


 「あっそー。どうでも良いけどあんた達」


 「はいなんでしょうか!」


 「どんな時でも私の言うことを信じて。私の目は誰よりも真実(ただしい)ものを見ているから」


 「そんなこと言われなくてもよ」


 「僕たちはニアースさんの班員です。当たり前じゃないですか」


 「確認できたなら良いわ。早く課題しないと夜の配給の時間になってすぐに消灯よ」


 「また食堂になっちまう! さっさと課題やるぞ!」


 「行きましょうカインさん!」


 2人の少年は少女を1人廊下に残して猛ダッシュで去った。


 「バカな2人ね。食堂でも別に良いじゃない。トマトも食べれるしそれに、3人で一緒に食べられるんだから」

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