1話 対面①
ニアース・レミ:大人っぽい少女。黒髪のショートヘアー。怒っていると勘違いされやすい。
カイン・ビレント:体を動かすのが好きな少年。身長では女子にも負けそうだが力では誰にも負けない。
ヤーニス・ミゲル:短髪の青年。偵察クラス所属。ドドからの信頼が厚い。
1話 対面①
荒野を走る車には、トーストに塗られるバターのように、乾いた砂がついていた。すっかり車の塗装の一部である。だが車が走る砂だけの荒野を見れば、洗車する気が起きないのも納得である。
草も木も花も、何もない砂だけの大地を車は進む。その汚れはちょうどカモフラージュの役目があるのかもしれない。しかも風景が楽しめる速度で走っているのだから、なおさらだ。とはいえどこまで見渡しても荒野は荒野。見て楽しめる物などない。
車には運転手の青年、助手席にショートヘアーの少女。その後ろには金髪の少年が座っている。鈍行なのは全員が何かを探しているからだ。
「見えました! ドドさんはあっちです!」
窓から外に上半身を乗り出した少女は、左方向に指をさす。少女が指をさす方向に特別何かが見えるわけではない。他の2人が見ている景色と何も変わらない。それでも青年は少女の言葉通り、すぐにハンドルを左へ回す。砂を潰しながらタイヤが方向を変えると、車は加速した。
「ニアースってほんと目が良いんだな~。俺にはドドさんなんてどこにも見えないんだけど」
少年は純粋に彼女の目の良さを尊敬した。けれどハンドルを握る青年は苦笑いをして少年に言う。
「ニアースさんは今、アースを発動しているのでは?」
「え、そうなの?」
少年が助手席にしがみつくと、彼女は振り返って自分の瞳を見せた。
「あったりまえでしょ?こんな広い荒野で、しかも肉眼でドドさんを探せるわけないじゃないの」
そう答えたニアースの両目は、エメラルドをそのまま瞳にしたような色で、まるで蛇のような瞳。そんな目で睨まれた少年だったが「なーんだ」と落胆するのみ。再び前方に指をさすニアースは、船長のように堂々としている。
「このまま真っ直ぐ進んでください!」
青年は少女に言われるがまま、アクセルを踏む。車は風景に構わず砂煙りを巻き上げて、さらに加速した。
「おっ! あそこに人がいるぞ!」
カインが助手席と運転席の間に身を乗り出して、前を指す。それに釣られたヤーニスはハンドルを握りながら、首を伸ばして遠くを確認した。ニアースは腕を組んで呆れ顔。
「〝人〟じゃなくて〝ドドさん〟でしょ」
「ドドさんも人も同じだろ?」
「は〜。これだからカインは」
ニアースは少年の名前を呼び飽きたように言った。また、自分が発見の報告をしたかったのだろう。悔しそうに足を抱え、前方に見えてきた人影を見つめている。車内から顔を出したカインはそこで待っていた男へ大きく腕を振った。
2人の「迎えに来ましたよ〜!!」の声を受け取った男は、嬉しそうにその場でにやけた。
「お~。やかましいのが来よった来よった」