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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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成長②

成長②



 「ポルムが生き物に寄生してから、その寄生先の脳内で成長しているというのなら、今はその成長期間なんじゃないか?ってことです」


 ダクさんが説明したことは僕が先ほど鳥肌を立てた内容と同じだった。


 カインさんもやっと危機感を感じていた。


 「おいおいそれやべーじゃんかよ! 偉い奴らに報告しようぜ!」


 「既に、各クラス長の人たちとステダリーさんは知っています。ですが!これはまだ予想の話なのでみなさんには知らせてはいけない秘密なんです。他に攻めてこない理由があるかもしれませんから……」


 「えっ!じゃあ……」


 「聞かなかった。ってことにしておいてください」


 「でもなんでお前そんなこと教えてくれたんだよ!」


 各クラス長とここの指導者のステダリーさんだけが知っている。


 ということはそれはとても重要な秘密。

 それを僕たちなんかに言っても良いのだろうか。


 もし言ったことがバレたら罰を受けるかもしれないのに──


 「お2人は友人ですから。隠し事はしたくないなって思ったんですよ」


 友人だからという理由で秘密を教えてくれたのか。


 僕に限ってはさっき仲良くなった存在、僕のことを信用してくれているというのなら、それはとても感謝しなくてはいけない。


 「ダクさん」


 「ありがとうなダク」


 「えっ? な何のことですか?」


 ダクさんはとぼけるように笑った。

 そうか、僕たちは何も聞いていないっていう約束だ。

 

 「課題は書けそうですか?」


 「おう! ポルムアイの違いとかポルムが成長している──かもしれないって、書いとくよ! なあエイド?」


 「相談するのは良いですけど同じことは書かないでくださいね?」


 僕の書いた物を見る気満々な気がして早目に警告した。


 「別に見ねえよ!自分で考えるし……」


 そうは言ったが、その横顔は汗をかいていた。


 「お2人はとても仲が良いんですね! 羨ましいです!」


 「仲が良いも何も、俺の弟子だからな」


 「へ~。カインさん弟子がいたんですか?」


 「エイドお前! その言い方はなんかニアースっぽいぞ!」


 「そういえばニアースさんはどどど、どうしたんですか」


 ニアースさんのことを聞かれると僕とカインさんは悪い意味で大人しくなってしまう。


 「あぁ~。ちょっとな」


 ダクさんはカインさんの訳あり気な言い方に何かがあったのだと察してくれて、何も聞いてこなかった。


 「じゃあなダク! ほんとありがとうな!」


 「ありがとうございました!」


 「また来てくださ~い!」


 僕たちは報告書作成のヒントを得て自分たちの部屋へと向かった。


 

 ******



 部屋へと続く廊下を歩いているとカインさんが尋ねてきた。


 冗談のつもりで「課題は見せませんよ」と返した。


 「だから違うって!……さっきさ、ドーサってやつを俺殴ったろ?あれニアースには内緒な」


 「……確かにニアースさんが知ったらややこしそうです」


 僕が内緒にしてもドーサさんが問題にしそうな気もするけどな・・・。


 「エイドはさ、知ってるか分かんないんだけど」


 「なんですか?急に真面目にならないでくださいよ」


 「ここってさ、あんまり他の奴らと親しくなりすぎるとダメなんだよ」


 「え・・・。そうだったんですか?でもカインさんは僕に優しいじゃないですか!」


 カインさんが僕に教えてきたことはとても今更な感じがした。


 人と仲良くするのがダメだなんて、考えたことがなかった僕にはとてもショックだった。


 「俺がお前に優しいのは同じ班だから別に良いんだ。でも他のジズクラスの班の奴とか他のクラスの奴らにはなるべく関わるなよ」


 もしかしてカインさんがドーサさんとのことを隠したいのは「殴ったから」ではなくて「関わったから」ということ?


 でもそれなら向こうの人たちも黙ったままにしてくれそうだ。

 

 けれど、どうして人と仲良くするのがダメなんだだろう。


 「人と関わらないだなんて、そんなの無理ですよ! だいたい誰がそんなこと決めたんですか!」


 「バモン教官にそう教わった。あとステダリーさんもだな」


 僕に戦い方やポルム、ドミーについて教えてくれたバモンさん。


 そしてジズの創設者でここで一番偉い人がそう言ったなら黙って受け入れるしかないじゃないか。


 「でも、関わっちゃダメな理由は?」


 「ハッキリ教えてくれなかったけど、死んだ時に悲しくなるとかそんな感じだよ」


 それに妙に納得してしまった。


 死ぬということは会うこと、話すことが出来なくなるということ。


 確かにそれは悲しい。

 生きていくのも辛くなるかもしれない。


 それに僕たちは兵士。

 いつ死ぬか分からない者同士なんだ。


 それを忘れて僕はカインさんの隣を歩いていたんだ。


 「そんな落ち込むなよ!ダクみたいに少しくらいなら関わっても平気だよ。でもずっと一緒にいると何か言われるから気をつけろよ」


 「いえ、そうではなくて……カインさんがいなくなったら僕は……」


 「おいおい俺を殺すなって!大丈夫だエイド。ニアース班は死なねえよ。なんたってあの班長だぜ?」


 その時、前からちょうど〝あの班長〟がやって来た。


 「あの班長って、どう言う意味かしら?」


 「げっ! ニアース!」


 「ニアースさん!」


 「あんたたちどこに行っていたの? 課題は終わらせたの?」


 「ちょっと調べごとをしていまして~」


 「い! 今からします!」


 凛とした彼女が現れるとスイッチが入ったように気が引き締まる。


 でもそれは嫌な感じじゃなくて、安心感に近い感じがある。


 「明日の朝提出だから忘れないでよ。あとこれを渡すわ」


 「な、なんですかこれ?」


 ニアースさんは僕とカインさんに丸いものを3つずつ手渡した。


 色は赤くて豆くらいの大きさ。


 「アメよ。飴」


 「お菓子か!」


 カインさんがその手の平を口元に持っていくと「バカっ! 食べないで!」とニアースさんの勢いのある手の平がカインさんの頬をしっかりと捉えた。


 〝パチン〟という良い音が廊下に響く。


 「それは武器の方のアメよ! P液抽出丸ポルムえきちゅうしゅつがん! あんたなら分かるでしょ?」

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