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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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15話 成長① 

15話 成長①



 ────放送室



 机を挟んでダクさんが先生、僕たちが生徒のように座っている。 


 ダクさんが教えてくれることになったので忙しいドドさんは偵察兵のところへ戻った。


 「ちなみにお2人はポルムやドミーについてどどど、どのくらいご存知ですか?」


  答えようかカインさんに譲ろうか迷ったのだが、隣から真っ直ぐとこちらを見つめている力強い視線を感じたので僕が答えることにした。


 「ポルムは鳩くらいの大きさの寄生生物で、見た目はアメーバやクラゲに似ていると教わりました」


 「そうですねその通りです。ではカインさん──」


 「分かりません!」


 名前を呼ばれただけなのに反射的にそう言った。


 座っている姿勢と声の大きさは優等生なのに、何も答えられないところは残念だ。


 「いや、まだダクさん何も言ってないですよ」


 「お、おう?そうだったか。で、なんだ?」


 「ドミーの説明をお願いします」


 両手を広げて何かを訴えるように手を振りながら説明を始めた。


 「ドミーって言うのはあれだろ? ポルムに寄生されて(あたま)を乗っ取られた生き物だよ!」


 その直後「どうだ! 完璧だろ!」と余計なことを加えたが、言った説明は僕の考えていたものと同じだ。


 「そそそ、そうですね。ドミーというのはポルムに寄生されて操られている生き物です。さらにつけ加えますと、ポルムに寄生されるとポルムアイと呼ばれる、紫色の目玉の模様が体に表れます」


 ポルムアイ……あの気持ちが悪い目玉模様か。確かそれが──


 「3つになると完全なドミーですよね!」


 「はい、その通りです。中にはポルムアイが3つ表れる前に肉体が動かなくなったり、寄生された時にショック死する生き物もいます。例えば僕たち人間です」


 そう、ポルムに寄生されたら絶対にドミーになるわけではない。


ドミーになる、ならないの違いは詳しく分かっていないみたいだが人間と鳥のドミーはまだ見つかっていないのだという。


 「人間のドミーっていないのか?」


 「はい、今のところは見つかっていないそうですよ」


 「ドミーになると身体能力が化け物になるんですよね」


 「そうです。一瞬で数歩分を移動したり高く跳びあがったりします。特に2足歩行が出来る生き物のドミーは化け物以上だそうです……でも! アースがあれば勝てますよ!」


 「おう! どんなドミーも俺がぶっ飛ばしてやるよ!」


 「かかか、かっこいいです!」


 カインさんは立ち上がり自慢の力こぶをアピールした。


 今みたいに座って頭を使う時はあれだけれど、武器を持って戦う時は本当にかっこいい。


 「報告書のお題は獅子のドミーが、今までの犬やシマウマのドミーと違っていた理由ですか?」


 「そうだ! ダクなら分かるか?」


 物知りなダクさんでも考え始めた。

 でもすぐに答えてくれた。


 「最近読んだ偵察クラスの報告書の中にそれと、関係がありそうな報告がありました」


 「どんな報告ですか?」


 「実はドミーが成長している可能性があるというものです」


 あのドミーが成長している。

 そんなことを初めて聞いた僕らは息を合わせて驚いた。


 「ですがドミーとは操られている生き物ですから実際に成長しているのは」


 「脳に寄生したポルムですか?」


 「と、僕も考えています」


 ポルムに寄生されてドミーとなった生き物はそもそも生きているのかどうかすら怪しい。


 成長していると言うならその体の中で暮しているポルムになるはず。


 でも成長って一体どんな成長を・・・。


 「けどそれって気のせいとかじゃないのか?そのドミーが強かったから成長しているって、言い訳を言ってるだけじゃねえの?」


 驚いた割にカインさんは冷静に話し始めた。


 というよりもまず、成長しているという話を信じていなさそう。


 でも今言ったことも考えられなくもない。


 「確かに成長している証拠が何もなければそう考えます。ででで、ですが見つかったんです! その証拠が!」


 そう言うと棚からファイルを取り出して、写真が載っているページを開いた。


 「これは?」


 「ライオンのドミーじゃねえか!」


 そこに写っていたのは顔を横に向けてこちらを見ている獅子。


 たてがみの名残があるからオスのライオンだ。


 「ポルムアイの数を数えてみてください」


 写真に顔を近づけた。この時カインさんが思っていたか知らないが、僕は()()()()()と思っていた。


 「1、2、3……なんだ3つじゃねえか」


 写真で見る限りポルムアイは額の真ん中、横腹、前足そして尻尾だ。


 「違いますカインさん。尻尾のを入れて4つです」


 「エイドさん。ここに5つ目があります」


 ダクさんは獅子の顎あたりを指差した。


 見直すと確かにそこにも小さかったがポルムアイが見えた。


 「嘘だろ! ポルムアイが5つって聞いたことないし見たことないぞ!」


 カインさんは写真に再び顔を近づけてポルムアイを指で数え始めた。


 「もしかして成長している証拠って、ポルムアイが増えたってことですか?」


 「その通りです。以前までドミーに見られるポルムアイの数は3つで稀に4つでした。しかし最近はそれが5つあるドミーもいるみたいなんです」


 「で、でもそれもよ! 傷跡を見間違えたとかじゃねえのか?」


 証拠を信じられないカインさんはそう言った。


 確かにポルムアイは傷跡にも見えなくもない。


 「それが最近はポルムアイが3つのドミーの方が珍しいみたいなんです」


 そう言われて威勢の良かったカインさんはファイルを置いて黙ってしまった。


 「つまり、今はほとんどのドミーのポルムアイは5つってことですか?」


 「はい。なので見間違えじゃないんです」


 僕とカインさんは口を閉じた。


 「──ポルムやドミーが攻めてこない理由が分かった気がしませんか?」


 その意味を理解して鳥肌がたった。


 「待ってくださいダクさん! それは考えすぎですよ!」


 「......ど、どう言うことだよお前ら!」


 「ポルムが生き物に寄生してから、その寄生先の脳内で成長しているというのなら、今はその成長期間なんじゃないか?ってことです」

ポルムアイ:ポルムに寄生された生物の体に出る目玉の模様。色は紫である。目として機能しているのかどうかは分からない。

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