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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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VS獅子③

VS獅子③


 

 「うおぉぉぉ!!」


 雄叫びと共に、カインは両手で大斧を振り上げた。即座にそれを地面に叩き落とす。まるで巨人が大地を叩いたように地面がうねる。


 その衝撃は岩の波と化し、前方にいる獅子に襲いかかった。


 岩の波は、先ほどの少女の弾丸より速かった──が、獅子はそれを避けた。


 間一髪、とっさに真横へ跳んだのだ。それでも獅子は、衝撃波の凄まじさに目を奪われていた。


 その獅子の白目に、今度は弾丸が迫る。直後、獅子は低い鳴き声を上げて目をおさえる。

 

 苦悶の正体は弾丸。獅子の両目に、計8発の弾丸が同時に命中したのだった。


 いくら早く連射したとしても、8発もの弾丸を一瞬で撃つのは無理であろう。なら、発砲した少女は獅子がどこに移動するのを予知して、予め撃ったのだろうか。


 しかしそれを眼球という小さな的に当てるのは、やはり不可能。けれど8発の弾は、同時に獅子の目を撃ち抜いた。


 少女はどうしたか。


 少女は同時に撃った。いや、正確には銃で撃ってはいない。少女は弾を放った。


 一息で海を作り出す幻獣リヴァイアの能力は、水を操る。


 彼女は手の平から発生させた水で包んだ弾丸を、指の隙間に挟むと、撒き散らすように飛ばして獅子の目を撃ち抜いた。


 あの岩の波によって、獅子の次の一手が彼女には読めていたのだった。だが、まだ王手にはならない。


 「今だエイド!」


 「いいえ! 待って!」


 獅子は両目を撃たれ、人間のように頭を抑えていた。紛れもない仕留めるチャンス。


 しかしエイドを止めた少女の判断は正しかった。


 なぜならドミーは暴走モンスター。指の骨を1本ずつ折られても、息をしたまま目玉をくり抜かれてもなんともない。


 獅子は今わざと苦しんでいる。もしもそうだとしたら近づいた時に不意打ちをくらう。


 少女はそう考えた。


 しかし苦しんでいるのは嘘ではない。ドミーは痛みを感じないが、獅子の体を操っているポルム()は致命的なダメージを受けていた。


 獅子の脚を撃たれても、脳にいる自分には関係ないが目は違った。

 

 弾丸は目を突き破って脳に命中。しかもそれが同時に8発も飛んできたのだ。


 ポルムは焦っていた。


 今まで生きてきてこの感覚(痛み)を知らなかったのだ。


 少しでも知能を持った生物が焦った場合、大抵はろくな行動をとらない。鼻の上に大きな風穴を2つ開けた獅子は、3人の人間の元へ無策に突進した。


 「今よエイド!」


 獅子が止まっていた先ほどの状況には「NO」と言ったのに、突進して来る今のこの状況に少女は「OK」を出した。


 しかし人の命を左右する彼女の判断はまたもや正しかった。

 

 ただ走って突っ込んでくる獅子は明らかに動きが落ちている。それはもしかしたら脚を撃たれたことが影響しているかもしれない。


 しかしおそらくは混乱していたせいで、動きに無駄があったのだろう。

 

 二刀流のエイドは、岩の衝撃波よりも、放たれた弾丸よりも速かった。


 少年は紅い疾風となり、獅子のわずかな(たてがみ)(なび)かせると同時に、刀で頭をさらう。

 

 少年が通り抜けた後、頭を亡くした獅子の胴体はぼてぼての4歩目を迎える時に横に倒れた。胴体が倒れるその様子を、後ろから地に座った獅子の頭が見ていた。


 「終わり……です」


 「エイド! 大丈夫か!」


 刀を納め、鳥ではなくなった少年の元へ2人が駆け寄る。その時だった。


 動くはずのない獅子の頭が彼らの方(後ろ)を振り向く。


 「馬鹿者! まだ終わっていないぞ!」


 見守っていたバモンが右腕を獅子に向けた。


 それは少年たちへの「危ない」という合図であると同時に獅子への「攻撃」でもあった。


 少年たちがその合図に気がつき、武器を構えて獅子の方を向く。しかし既に、獅子の頭は地面ごと()()()()()()()


 手袋を外したバモンの右の手の平には、冷気を放つオレンジ色の羽が生えていた。

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