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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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兵士として②

訓練室:座学を行う教室的な部屋から、実技を行うトレーニングルームのような部屋まである。同じ訓練室でも、部屋によって広さも異なる。アースを使用した訓練ができる部屋は特に人気である。


兵士として②


 

 「バモンさんとの挨拶はうまくいった?」


 廊下に出ると珍しく冷たいニアースさんが心配してくれた。


 「はい!ニアースさんのアドバイスのおかげです」


 「お~い。もういいか?」


 カインさんはその場でランニングをして落ち着きがない。もしかしてずっとこんな状態で待っていたのかな。


 「すいません。まずは何をするんですか?」


 「俺は岩の棒で素振り」


 「私は射撃」


 「全員、バラバラなんですね」


 「元々ジズクラスは一定以上の体力値がないと入れないから、今更筋トレとかしないのよ」


 「じゃあ何で貧弱な僕がジズクラスに・・・」


 「知らない。私じゃ無理だけど、カインならエイドを見ながら訓練できるでしょ?」


 「え~。でも俺は──」


 「筋力アップはあなたにしか任せないと思ったのに残念だわ。ほんと、残念」


 駄々をこねそうなカインさんだったが、その芝居染みた言い方に簡単に乗せられてしまう。ああ、どこまで単純なんだこの人は。良い人だけど。

 

 「断ってすまねえエイド。今日1日でお前を鉄の肉体にしてやるぜ!」


 「鉄じゃなくて、鋼でしょ」


 「どっちも変わんねえだろ!」

 

 「まあいいけど、怪我だけはさせないでよ」


 心配しているとは思えない気の抜けた彼女の声で。手を雑に振りながらニアースさんは廊下を進んで行った。


 「じゃあ俺たちも行くかエイド」


 「はい! お願いします!」


 こうして僕はカインさんと一緒に筋トレをすることになった。先日は上手く誘いから逃れた。しかし筋トレからは避けられない運命だったみたい。



 ────マダー・ステダリーの部屋────



 1つの机を3つの椅子が囲んでいる。しかしその場にいるのは2人だけ。


 「お疲れ様でしたファイン。では報告をお願いします」


 2人の男は握手をしてから対面する形で椅子に座った。


 「ドドにしてくださいよ。仕事中ですし」


 「口が慣れているので拒否します」


 「ポルム、ドミーの侵攻状況及び、外部居住者(アステゴイ)の現状確認の偵察任務ですが・・・」


 「どうしました?」


 「──偵察クラスの班が1つ行方不明になりました」


 男は唇を噛み締める。膝に置いていたドドの手は、ズボンの生地を引き寄せている。

 

 「仕方ありませんよ。戦いに犠牲は付き物です。で、アステゴイは?」


 ただ座って話を聞いている冷静な男は、話題を変えるように次の質問をした。しかし話す男は落胆したまま。


 「そちらはもっと酷く、全滅でした。ちょうどドミーと交戦したので、もう一足早ければ助けられたかもしれません」


 「報告は以上ですか?」


 感情を見せないステダリーが聞くと男は「待ってください」と顔を上げる。


 「ステダリーさん。一番重要な情報があります」


 「どうしたんですか汗をかいて、空調を変えますか?」


 一番重要という言葉を気にかけず、彼には冗談を言う余裕すらあった。しかし次の質問でその表情がようやく硬くなる。


 「()()()()って聞いたことありますか?」


 「────ライコス。かつてこの地に存在した国の言葉で、狼ですね。しかしそれが何です?」


 「行方不明の班の無線から通信があり、応答したところ何者かが出て自らをジズに対抗する組織──ライコスだと名乗っていました」


 「ほう?この時代に人間同士の争いをしようということですか?馬鹿馬鹿しい」


 「全くです。これまでジズ以外に組織と呼べる拠点を持ち、生活インフラが整い、なおかつ戦力を持っている組織は()()()()()()()()()以外に確認されていません。なので盗賊のイタズラの可能性もありますが」


 「でも以前から、この秩序の無い世界を望む荒くれ者はいましたよ。ここより旧市街地に近い前線地帯の例の財団は、そう言った無法者たちの相手に忙しいと聞いています」


 「ジズの領土内でも無法者たちがいましたが、我々偵察クラスが発見した度に全滅させてきました。奴らは質よりも量の集団ですからね、ジズの敵ではないですよ」


 ドドは男の心配を払拭するように言う。だが男の表情はまだ緩まない。


 「しかしポルムとドミーが攻めてこなくなった今、私たちはそういう連中から見れば目障りでしょう。我々は次の世界を担う存在。もしもそんな連中が団結していたら脅威です」


 「偵察しますか?」


 「お願い──したいですがポルム、ドミーに対抗する戦力ですら、十分とは言えないのがジズの現状。主力である偵察クラスには、万が一の迎撃要員としても近くに残っていてほしいものです」


 「しかしそれではライコスの情報を掴めませんよ!」


 そんな弱気な男を見てドドは目を覚ますよう、彼に近づく。


 「そうです。そこで私にはあるアイディアが浮かびました」


 詰め寄られた男は今までの不安な様子は演じていたのかと、疑いたくなる余裕の笑みを浮かべた。


 「・・・アイディアですか?」


 それを見たドドの顔には不安が漂う。

ゲーツ・ローツ財団:第3次世界大戦後の世界から存在していた組織。故に対ポルム組織ジズよりも、旧世界の色を濃く残している。世界各地に支部があったが今はわずかとなっている。新世界の秩序構築に向けて活動中。マダー・ステダリーの意向によりジズとの関わりはない。

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