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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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それぞれの暮らし④

生活区④



 僕の横に座ったニアースさんが遠くの空を指差す。そこはさっきの街よりも奥の場所にある街。なのに大きな建物がいくつも見える。

 

 「あそこがどうかしたんですか?」


 「あそこは生活区の中でも()()()()しか暮らせないところなの」


 「特別な人って、どういう」


 「簡単に言うと科学者とか技術者。あとは元権力者とか」


 ニアースさんは興味が無さそうに淡々と、土をいじりながら答えた。


 「だからですよ。平等じゃないから余計ストレスがたまるんですよ」


 確かにここに長くいるせいもあるかもしれない。けど、ここで長く不平等な生活をしているせいで不満がたまっているんじゃないのか?


 「でもそれは優秀な人からしたら平等じゃないと、ジズのみんなが思っている」


 「そんなにすごい人が住んでいるんですか?」


 「実際あそこにいる人はジズの創設に協力したり、暮らしのサポートをしてくれているの。だからこのままが平等なのよ」


 「サポートならあの街の、食べ物を作っている人たちだって同じじゃないですか!」


 「同じ──じゃないわ。教われば誰でも短期間で出来るようになることと、長期間教わっても誰もが出来るようになるわけではないことは、同じじゃない」


 彼女に怒りがわいた。現実に対しての怒りだ。僕はニアースさんみたいに大人じゃない。だからそんなにも、冷静に理解できないよ。


 「──さっきの街の人たちは、よく石以外を投げませんでしたね」


 「武器を持っていないから、怒っても石を投げることくらいしかできないのよ。それに外よりはマシだから本気でここを出ようとはしない」


 「早く戦いを終わらせないといけないですね」


 「・・・え、エイド?」


 土をいじるのをやめてようやく顔を上げた彼女は、僕の顔を心配そうに覗き込んできた。ニアースさんの顔、僕は好きだ。でも今は、その黒い瞳に視線を奪われない。僕は目の前の2つの街を見ていた。


 「早くポルムとドミーに勝って、この不平等な世界を無くさないといけないと僕は思いました。連れてきてくれて感謝しています」


 「・・・そう。なら良かったわ」


 ──少女、ニアース・レミは大きく見えた少年の背中を見守っていた。


 (エイドも馬鹿ね。平等な世界なんてどんな時代になっても作れるわけないじゃない。戦争前の平和な時代だって不平等な世界だったんだから。


 お金がある人は無い人よりは有利なの。がむしゃらな努力で環境の差は何とかならない。恵まれた子供はその恵まれた環境で努力をするんだもの。土台が違うのよ。


 生まれた時点からあるその圧倒的な差は埋まらない。それこそ生身の人間がドミーに立ち向かうくらい無謀。

 

 ──でも、稀にとんでもない才能を持った人間が現れて、環境とかを関係なくその差を埋めてしまうことがあることも知ってる。


 ある日突然このご時世に無傷の状態で見つかって、さらっとアースに適合してあっという間にジズクラス入り。あなたはまるでそんな人のようねエイド。


 だからあなたならもしかして──なんて、私は少し期待しちゃってるの。それに私ね、あなたの前を見つめるその背中が好きよ)



 ────その日の夜 ジズより西のとある荒野



 日が沈み、肉眼では前に出した自分の手さえ見えなくなる程の闇の中。荒野に車が数台止まっている。辺りには壁にヒビか入った家々。


 その家を見つけては入って出たりを繰り返している数十人の大人たちがいた。長袖長ズボンの黒い服装。頭にはヘルメットをかぶり、腰には銃や剣を装備している。


 「ヤーニス、村Dの状況は」


 ある1台の車の運転席に座っているドドは隣にいる青年に尋ねる。


 「把握している外で暮らす者(アステゴイ)は全員殺害されています。傷口を見るにドミーの可能性が高そうです」


 青年はボードを手に持ち、慣れた口調で報告している。


 「ドミーはどうした。やったか?」


 「偵察に行ったムーファ班からは犬のドミーを複数駆除したと報告がありましたが、アウテオ班からは先ほどから連絡がありません・・・」


 ヤーニスは深刻な顔で隣のドドを見る。だが不安が深まるのは男も同じ。


 「至急全ての班を車に撤退させろ。全班が揃い次第次の目的地へ向かう」


 「了解です!」


 返事をした青年は太ももの上に置いてあった無線機を手に取った。青年が無線機に呼びかけると車は陣形を作り移動を開始する。


 (ポルムたちは侵攻してきたか。もっと休んでくれりゃあ良いのに、予想を上回るペースだ。幸いにも集団ではないようだが、これは脅威だな。集団がどこまで来ているのかだけでも知って帰りたいが──)


 「ドドさん!アウテオの無線機を使って何者かがこちらに連絡を入れて来ました」


 震える青年の手から男は無線機を奪い取る。


 「アウテオ無事か! 応答しろ!」


 ドドは自らの長髪を掴みながら叫ぶ。が、返事の声を聞いてその手はすぐに脱力する。


 《こいつはアウテオって言うのか》


 「・・・誰だ。アウテオをどうした!」


 男は目や首を動かす。動揺もあったのだおる。だが彼は車内から外を見て、自分と会話している何者かを探しているのだ。


 《()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。覚えておけよ》


 「人間か!? おい、答え──くっそ切りやがった!」


 男の顔にはいつの間にか出ていた汗が垂れている。


 「ドドさん・・・」


 「帰還だヤーニス。大至急ジズへ帰還する!」


 無線機を青年に投げつけてハンドルを握るドド。十の車の群れは同じ方向へと走り出した。

偵察クラスの装備:旧世界の軍と同じように銃をベースとした装備。しかし飴を使用しての近接戦闘も得意なので、剣や鈍器を装備している。

         

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