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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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それぞれの暮らし②

それぞれの暮らし②

 

 

 「あなたの所属はジズクラスで、私と同じ班ってこと。分かった?」


 僕は知らぬ間にジズクラスというものに入っていた。そしてニアースさん、カインさんと同じ班らしい。


 「僕も訓練をするんですか?」

 

 「そりゃ~ね?」

 

 ニアースさんはカインさんを見てイタズラな笑みを浮かべる。するとすぐに「じゃあ伝えたから。カイン?明日は遅刻しないでよ」と、彼女は一度も席に座らず食堂を去ろうとする。


 「ニアースさんはお昼食べないんですか?」


 「私は今ダイエ──じゃなくて、そう、体積を減らしているの!」


 ニアースさんが珍しく慌てている。そしてなぜか怒鳴られた。


 「タイセキ? タイセキってなんだエイド?」


 「・・・すいません。記憶がないので」


 都合の良い嘘をついてしまったが、上手く言えないのは本当。体積は物の大きさのことだった気がする。けれど、こんなことを僕はどこで知ったんだろう。やはり思い出せない。


 「そんなこと言って、ニアースはまた部屋で1人で食うんだろ?エイドもいるんだし一緒に食えよ」


 カインさんは笑って手招きをする。その笑顔には嫌味が含まれていない。しかし彼女は顔を横に向けて黙っていた。


 「食べなくても良いですから、僕たちと一緒にいてください!」


 「何言ってるの。食堂は食べるところよ?だから私は座らないわ」


 「同じ班ということですし、もっとお互いのことを良く知っておきたいと思いまして、訓練のこととか」


 「ふーん。ならしょうがないわね~。カイン、サラダとパンもらってきて」


 すたすたと歩み寄ってきたニアースさんは僕の隣にどすんと座った。


 「なんだよ。結局食うのかよ」


 文句を言いながらも嬉しそうなカインさん。僕らも笑って彼を見送る。食事を受け取った彼が戻った後に、改めて3人でご飯を食べた。


 ニアースさんは野菜が好きみたいで、カインさんが残したサラダまで食べていた。体は細いのに意外と食べていたのでビックリ。


 「そうだエイド。朝に言った()()()()()()()の話覚えてるか?」


 「あ~。ちょうど呼び出しの連絡が入って、話が途中でしたね!」


 「あんたまさか、あの時にここにいたの!? ほんと呆れるわ」


 トマトを口に入れたままニアースさんが言う。


 「終わったことは良いだろ。そうだ、ニアースも行こうぜ生活区(せいかつく)。どうせこの後暇だろ?」


 「暇・・・じゃないわよ。でもなんで()()()()()()に行くの?」


 彼女はトマトを雑にフォークで刺す。行きたい僕らとは逆に面倒くさそう。


 「エイドが気になるんだってさ」


 「い、いえ! 僕はこの野菜とか肉が、どこから運ばれてきたのかを知りたいだけで」


 確かに気になってはいるけれど、不満そうなニアースさん相手にそれだけの理由では不十分。こうでも言わないと僕も、トマトのように刺されそうだった。しかし不満そうだった割に彼女は快く了解してくれた。


 「良いわよ。エイドがカインと2人きりってのは可哀想だし」


 「なんでだよ!」


 「だってあなた、あそこのことをエイドに説明できるの?」


 「・・・少しならできる」


 「それは説明できるって言わないのよ」


 「ま、まぁまぁ。僕は人数が多い方が楽しいですから。2人ともお願いします!」


 ニアースさんは全ての野菜を食べ終えると「ついて来なさい」と、トマトの種がついた口を見せる。彼女は一足先に席を立った。


 

 ────玄関 ホールL ────



 「ここって確か遺跡の入り口。ジズの玄関ですよね?」


 やってきたのは僕がジズで一番最初に来たところ。躓いて転んだところだ。相変わらずの広い空間に、自分が押しつぶされそうな感覚になる。


 「ここってほんと広いですよね」


 「でも生活区はもっと広いわ」


 ここも十分広いけど、確かに人が住むとなると、もっと広い場所が必要そうだな。でもそんな広い場所はいったいどこにあるんだろう。


 「なあニアース。エイドの(アース)は持ったまま行くのか?」

 

 「あ、隠した方が良いですか?」


 「別に良いんじゃない?私たちは兵士なんだし」


 「そうだな。じゃあ入るか」


 カインさんは何もない場所で立ち止まってそう言った。入る?入り口なんてどこにもないのに。


 「どこに入るんですか」


 「()()()


 ニアースさんはしゃがみこんで遺跡の床を撫でたり、叩いたりしている。すると、目の前の床が勝手に動き、人が1人通れるくらいの穴が出現した。すごい。魔法みたいだ。


 「床が勝手に動いた!?」


 「途中まで暗いから気をつけてね」


 何事もなかったかのように彼女はその穴の中へと消えてしまう。 


 「カインさん大丈夫なんですか?」


 「早く行こうぜ!」


 背中を押されて暗い穴の中へと足を突っ込む。足に何か硬い物が当たった感触がある。落ちないと安心し、もう片方の足も穴に入れる。


 「中は階段になってるからゆっくり進めば平気だぜ」


 「ありがとうございます」


 幸いにも足元には電球があった。穴の中の階段を降りていき、入ってきた穴が白く小さな光になった時、最後の階段を降りた。


 そこには腕を組んだニアースさんが待っていた。


 「遅かったわね」


 そんなに時間かかっていないと思うけどな。あ、カインさんはまだ来ない。


 「生活区はあんたが思っているようなところとは、違うかもしれないけど良い?」


 「それ、今言うんですか」


 「ま、1回くらいは見とくべきかもね。()()()()を」


 そう言って目の前にある扉を開けようとした時。彼女は重要なことを口にする。


 「そういえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 「じゃあ誰か1人ここで待っていないといけませんね」


 「ふ~。着いた着いた。この階段ほんと長いよな」


 カインさんがようやく到着。僕とニアースさんは顔を合わせて、お互いの考えを確認をした。


 「ちょうど良いのが来たわね」


 結局カインさんを扉の前に残し、生活区と呼ばれるところに僕とニアースさんは入る。彼には待っていてもらう代わりに、今度スブラーキをあげる約束をした。

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