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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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9話 それぞれの暮らし① 

9話 それぞれの暮らし① 



 ────チャップの食堂────



 「よっエイド!」


 「カインさん。お疲れ様です」


 やってきた彼の体は汗や砂まみれ。いかに頑張って訓練をこなしたかが見て分かる。


 「おっ、もうご飯きてんじゃん!」


 「はい、意外と人が来ていたので混む前に注文しておきました」


 お昼になったらさすがにこの食堂にも人が来ていた。満席とは言えないがそこそこ。みんな見たことがない人ばかり。白衣や制服など、それぞれの仕事に適した服を着ている。


 「サンキューな!」


 「体は綺麗にしなくても良いんですか?」


 別に僕は構わないけど彼のことを思っての発言。カインさんは自分のことを見ると少し考えて「良いよ。待たせちゃうし」と僕を気遣った。


 「すいません」


 「エイドっていつも謝ってない?」


 「そうですか?」


 言われてみると反射的にそう言っている時が多いかもしれない。


 「そういやエイドっていくつなの?」


 「いくつ・・・」


 「歳だよ歳! 何歳ってこと」


 歳。僕は何歳なんだろう。見た目的にカインさんと近いと思うけど、頭に数字が浮かばなかった。


 「わ、わかりません」


 「でも俺より大人っぽいよな」


 大人っぽい。そういう自覚はなかった。自分の体を見て落ち込んで「僕、そんなに老けていますか?」

と、不満を示したのだがカインさんは吹き出した。


 「ちげえよ! 見た目じゃなくて言葉とかがだよ!」


 「そういうことですか。でも()()()()()()()()()ので、もしかしたら歳上かもしれませんね」


 「俺の前でそういうことは言うなよ」


 鋭い目をしたカインさん睨まれた。そういえば身長の話題は彼にNGだった。


 「は、はいっ。二度と言いません」


 「分かれば許してやる。ただその串焼き肉(スブラーキ)は俺のな」


 「えー! なんでですか!」


 顔を上げるとフォークを持ったまま、彼は偉そうに腕を組んでいた。まるでどこかの門番みたい。スブラーキの門番だ。


 「罰だよ罰! 俺の身長に触れた罰!」


 「でも~」


 カインさんのフォークが僕のお皿のスブラキを連れて行こうとした、その時。


 「あんた達、何騒いでんのよ」


 聞き覚えのある冷たい声が現れた。


 「あっ。ニアースさん」


 「何しに来たんだよニアース!」


 「あんたに用はないわよ。私が話に来たのは、エイド」


 彼女はカインさんの方を見もしないで言った。相変わらず冷たい。いや、怖い。

 

 「ぼ、僕ですか?」


 立ったままこちらをじっと見るニアースさん。何か悪いことをしたのかなと不安になる。


 「あなた、元気そうね。カインといたからかしら」


 「そうだな! 俺さまはみんなを元気に出来るんだぜ!」


 当たり前のように彼女も彼のことを無視する。


 「エイドのアースは出来たの?」


 「はい!つい、さっき・・・」


 椅子にかけていた日本刀を机の上に出した。すると出した瞬間「はっ! これ日本刀じゃねえかよ!」とカインさんが机に手をついて立ち上がる。スブラーキを前にした時よりもテンションが高い。周りの人までその様子に反応しこちらに視線を向ける。


 「声が大きいですよ」


 本来ならニアースさんがそう注意をすると思っていたのに、彼女は彼を擁護した。


 「カインがこうなるのも仕方ないわ。これはそのくらい珍しい物よ」


 まさか2人が日本刀を知っていたとは、知らなかった僕がやはり普通ではないらしい。


 「そんなに有名だとは思っていませんでした」


 「おいおいエイドまじかよ! 日本刀を知らないのか? サムライソードだぞ?」


 カインさんはまるでレンさんのように驚いた顔で僕のことを見ている。


 「さむらい・・・ソード?」


 「これは太刀じゃなくて脇差ね。2本ってことは二刀流!?エイドって凄いのね。なんか見直したわ」


 タチ? ワキザシ? それより今ニアースさんが僕を褒めた!?


 「そんなことないです。僕なんか筋力がニアースさんよりないって言われたんですよ」


 「はぁ? 私だってそんな力ないわよ!」


 キツく言い返されてしまった。筋肉が多いって良いことなのに。嬉しくないのかな。


 「じゃあエイド、俺と一緒に筋トレするか」


 「・・・機会があったらお願いします」


 カインさんが力こぶを見せて誘っている。しかしその筋肉を見て、この人の筋トレは僕には合わないと確信した。


 「そうだエイド。あなた()()()()()に配属されたみたいね」


 「そう、なんですか?」


 「まあ、アースを持ってるやつは全員ジズクラスだしな。でもバモン教官、今日そんなこと言ってたか?」


 「さっき私に言ってきたわ」


 アースに適合した人はみんなジズクラス。ジズクラスって何なのか知らないけど、カインさんが所属しているところだから、戦いの訓練をする厳しいところだと思う。


 「てことは!!」


 「いきなり何ですかカインさん」


 「エイドは俺の班と同じってことだよ!」


 「あんたじゃなくて私の班よ! 班長は私なんだから!」


 「すいません話に追いつけなくて・・・」


 「あなたの所属はジズクラスで、私と同じ班ってこと。分かった?」

日本刀(脇差):小型の日本刀。エイドが持つものは約50センチほどで、脇差の中では大きい方に入る。

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