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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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封印された幻獣②

封印された幻獣②


 

 「ハントさん。飴って、分かりますか?」


 「それは、P液抽出丸ポルムえきちゅうしゅつがんのことかしら?」


 「分からないんですけど、ニアースさんやカインさんが持っているやつです」


 「それならやっぱりP液抽出丸で間違いないわ。あれは、ポルムの体液や細胞を弱体化させた──人体強化の薬なの」


 「ポルムは生き物に寄生してくると聞いていますよ? それなのに体に入れて良いんですか?」


 寄生生物をわざわざ体内に入れるだなんてさっきのアースの話よりも信じられない。そんなことをしたらポルムに体を寄生されてしまうはずだ。


 「弱体化させているし、一部の体液や細胞だから平気よ」


 「でもどうしてそんなものを作ったんですか」


 「ポルムに寄生されてドミーになったら、身体能力が急上昇するのは聞いたかしら?」


 「はい。戦闘機が相手にならないんですよね」


 「そんなドミーを見た人間は思ったの。ポルムに寄生されずにドミーのように身体能力を上昇できないかって」


 「す、すごい発想ですね」


 こう言っていいのか分からないけれどそれを考えた人は頭が良い。


 「でもそれが完成したのは結局ポルムとドミーが攻めてこなくなる寸前。遅かったわ」


 ため息をついたハントさんを見て初めて、この人に()()()()()()()()()()()()()ことに気がついた。ドドさんにこれだけはするなって言われていたのに、してしまった。


 「け、けど今は対抗できる武器がアースと飴で2つもあるじゃないですか!」


 謝罪をしたかった僕の意味のない励まし。励ましになっているのかも分からない。とにかく、話題を変えたかった。


 「確かにね。その2つを同時に使って戦うことができる人間もいるし、無駄にはならなかったわ」


 「幻獣の力と強化された身体能力、最強ですね!」


 「──そうね」 


 過去を思い出しているのか彼女はまた下を向いてしまった。

 

 「さ、早くしないと私のアースの発動時間が切れるからおしゃべりはここまでよ」


 「アースって何分くらい──」


 太ももを何かの針でチクリと刺された。でもハントさんは手に何も持っていない。翼を動かしていて尻尾が僕から離れて、それで僕を抱いて・・・


 「ごめんねエイドくん。話の続きはまた機会があったらしましょう」


 女は軟体生物のように脱力している少年をベッドに寝かせた。寝かせた彼の体を見ながら持っていた紙にたくさんの文字を書き込み始める。彼女の目は獲物へ急降下する鷹のように鋭く光る。

 

 「お~っす。エイドは元気か?」


 彼女が紙にペンを走らせてから数分後。清潔感のあるこの部屋に長髪で砂埃(すなぼこり)を付けた男が入ってきた。


 「今終わったところ。明日の朝までは寝ているでしょうね」


 女は文字で真っ黒になっている紙をドドに見せる。彼はそれを手に持とうとしたが寸前で彼女に返した。代わりにベッドで寝ている少年を見る。


 男にとって寝ている少年を見たのはこれで2度目。灼熱の太陽と大地に挟まれて寝ていた時と何ら変わらない少年の寝顔。見終えると男は安堵感からか長い息を吐いた。


 「寝すぎな気もするが疲れているだろうし、ちょうど良いな」


 「それよりあなたはシャワーにでも行ったら?鏡も見て少しは身だしなみに気を使うべきよ」


 「幸せになりたかったら鏡を見ないことだ──って言葉が好きでね。それに、お前に綺麗にしてもらおうと思ったんだがな」


 男は女の肩に触れようとしたがそれを見切った女に尻尾で叩かれる。おまけに鋭い眼光を当てられてしまった。


 「汚れを落とすのにアースを使わせないでくれる?」


 汚物を見る目で返事をされた男は落ち込み、女への文句を小声で床に向けて呟いた。


 「何か言ったかしら?」


 女は耳に手を当てて大袈裟に尋ねる。


 「エイドがジズクラスに配属されることになった。アースに適合する予定だ」


 「・・・そう。確かに幻獣が好みそうな顔しているもの」


 「どういう意味だ?」


 男は言葉と目で彼女を睨みつけた。先ほど自分が向けられた眼光にも劣らない鋭さはまるで、悪を問い詰める正義の人間の目。


 「古来から綺麗な人間が生贄に使われてきたって、聞いたことあるでしょ?子供とかね」


 女は淡々とした口調で答える。その口調から先ほどのハントの言葉に深い意味がないと理解したドドは、からかうように笑った。


 「お前なんかを好む物好きな幻獣もいるんだな~」


 「セーンムルウの毒で死にたいのかしら?」


 「診断結果の書類もらってくぞ~」


 男は女の方をあえて見ないようにして黒く塗られた紙とそのまま部屋を出た。


 「あんたそんなんだから幻獣に好かれないのよ!」

 

 小馬鹿にされても怒らなかった女だったが無視されたことには腹を立てる。さすがのドドもその声に反応してわざわざ顔を見せに戻った。


 「好かれるのはドミーだけで十分だ」


 男は紙で手を振って再び部屋を出る。気のせいか男の姿は部屋に入る前よりも、砂埃などの汚れが落ちて清潔感が顔を出していた。

P液抽出丸(飴):ポルムの細胞から作られた薬。使用者の脳や体に作用して一定時間の間、超人的な力を授ける。

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