幻獣チルドレン②
幻獣チルドレン②
「今だやれ!どうせ狙っているんだろ。ニアース!」
ニアースさんが引き金を引いたのは2回。
銃口が向いていたのはコペルトさんの後頭部。
息をつく間もなく2発の銃弾が彼の頭を貫通した。
銃弾はそのままパンの頭も撃ち抜いた。
人に戻ったコペルトさんは僕らの目の前に落下した。同時にパンも。
砂が跳ねた時に血の匂いが一緒に飛んできた。
ニアースさんの迷いのなさからすると「援護」っていうのはきっと、こういうことだったんだ。
あの2人だけでパンと戦っていた時に決めたのかもしれない。
コペルトさん。コペルトさんのおかげでパンに勝てそうです。
「……バカナ ジブンヲ コロシテモラウ、ダト?」
僕らは奴が死ぬ前にすぐに囲んだ。
「死ぬ前に世界を元に戻しなさい」
「ソレハムリダ ナガレテシマッタミズハ ダレニモ、トメラレ、ナイ」
パンはそう言って動かなくなった。
奴が死んだ。神に等しい存在のパンがとうとう死んだ。
僕らは戦いに勝ったんだ。
だけどまだ、全く喜べる状況じゃない。
「おいおいおいどうすんだよ! 俺ら3人だけでどうしろって!」
大人はいなくなり3人だけになっていた。
頼りになるのはニアースさんだけ。
でもその彼女もパニックになっている。
「うるさいわよ黙って! 私だって叫びたいのよ!」
僕が慌てないのはもう諦めているからだ。
でも諦める前に1つだけ、世界を救う手段があると思う。
「ニアースさん。アースって僕らの命を捧げたら最大の能力をくれますよね。それこそ幻獣になったり」
「そ、そうだけど、いくらアースでも世界を元には戻せないわよ」
「でも完全な幻獣になった僕らなら、世界を救えるんじゃないでしょうか」
ニアースさんが僕の言ったことを理解するのに時間がかかった。
でも理解した彼女の表情はほぐれた。
「──もしかしたらあの博士は自分よりも先にパンが世界を壊した時のことを、想定していたのかもしれないわね」
「なあなあどういうことだよ! こんな時に難しい話をしてんじゃねえよ!」
「難しくないわよ。単純に私たち3人で世界を救えるって話」
「お前さっきアースじゃ無理だって」
「アースじゃ無理よ。でも私たちが幻獣になれば、星を作れるんじゃないかしら?」