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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
最終章 世界の真実編
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54話 旅へ①

54話 旅へ①



 ポルムに寄生され金切り声で絶叫しているドドさんを僕らは見ていることしか出来なかった。


 人がポルムに寄生されてドミーになっていくその様子をただ見ているだけ。


 喉が固まり手足が震えて、思考は停止していた。


 「岩の雨(ロック)!!」


 カインさんは地面の土を小さな団子にしてそれをポルムに当て続けたが、ドドさんを苦しみから救うことは出来なかった。


 「とうとう人間産のドミーが生まれました! ポルムから進化したニューポルムとは違う、人類に変わるこれからの星の住人。そう、彼は昔の本で言うアダムです!」


 ポルムたちを自分の周りで躍らせながらマダー・ステダリーは狂喜していた。

 

 奴はドドさんのことをドミーと言ったが僕はそうは思わない。


 だって彼の見た目は変わっていない。

 ドドさんはドドさんだ。ドミーなんかじゃない。


 「……ドドさん? ドドさんですよね。エイドです。分かりますよね?」


 刃を失ったツバキを鞘に収めてドドさんに歩み寄った。


 挨拶をするように何も警戒はしない。


 ──やっぱりドドさんはドドさんじゃないか。


 「バカエイド! 何近づいてんだ! ポルムアイが見えないのか!」


 「じゃあカインさんはドドさんを殺せるんですか?」


 カインさんは地面に手をついたまま無言だった。


 いつでも岩の果実(ロック)を使えるようにして、僕を守ろうとしてくれているんだろう。もしくはドドさんを殺すためか。


 「エイド・レリフ。私からのプレゼントですこれで彼を」


 マダー・ステダリーが槍を投げるように、僕に向けて鞘に入ったままの刀を投げた。


 ああ、ありがたい。

 お前はどれだけ余裕をこいているんだ。


 こんな状況ですら楽しむお前は最低だ。


 「僕は、お前を斬る!」


 翼で地を翔けた。

 投げられた刀には瞬時に追いつき、その刀を鞘から抜いた時には奴の目の前。


 後はこの勢いのまま刀を奴に突き刺す。はずだった。


 背後から僕を、何かが追い抜いた。


 その追い抜いた何かはマダー・ステダリーの前に大の字で立って奴の盾になった。その盾はドドさんだった。


 「どいてくださいドドさん!」 


 「まだ彼の名を言いますか?これはもうファイン・ドドではありません。ポルムに寄生されたドミー。もっと言えば2本の腕を自由に操れるハイスペックなドミー」


 ハイスペックなドミー。

 それって僕らが前に戦ったニューポルムと同じ?だとしたら・・・

 

 「カインさん。残っている飴を全て僕に下さい」


 「何しようとしているのか知らねえけど無理だ! それをやったら俺はニアースに撃たれちまう!」


 「ドドさんを救えるかもしれないんです」


 僕がやろうとしているそれは「かも」よりも確立が低いだろう。


 だって今までドミーを助けたことなんてない。


 ドミーはいつだって殺してきたんだ。

 でも、ドドさんは今までのドミーじゃない。


 だから「かも」なんだ。


 「分かった。その代わり、ニアースには言うなよ」


 「ありがとうございます」


 彼から飴を受け取ると自分のと合わせて1、2、3・・・沢山を一気に飲み込んだ。


 どうなるのかは分からない。

 前に確か4個か6個飲んだ気がするけど、どうな──


 「くはっ! ああああ!」


 手足をそれぞれの方向に引っ張られる感覚に襲われて、血が口から地面へと流れ出る。


 体が裂けそうだ。

 頭もどっかに吹っ飛びそう。気を失って倒れるかと思った。

 

 ──でも。やっぱり僕は平気なんだ。

 飴をいくつ舐めても僕は死なないし、ドミーにもならない。


 もしも僕がドミーになったら困る奴がいるからね。 


 飴と僕。その両方を創ったのがマダー・ステダリー(お前)で良かったよ。


 「まさか君は自分からドミーになろうとしているのですか?でもそれは出来ませんよ。だって君は」


 「知っています。僕はあなたに食べらるために創られた。だからドミーにはならないように設計されている!」


 マダー・ステダリーがやっと命の危機を感じる顔をした。


 それが本来お前がすべき顔なんだ。


 今更自分の行いの間違いに気がついても遅い。


 「命だけは助けてくれ!」なんて顔をしても遅すぎるんだ!


 「いきなさいパーフェクトドミー! エイド・レリフの手足を捥ぐのです!」


 マダー・ステダリーは操り人形を動かしているような両手をドドさんに向けた。


 おそらく操られているドドさんは僕に突進してきた。

 

 彼を奴から遠ざけるために僕は一気に後方へ飛んだ。


 奴の姿がぼやけて見えるようになったところで、先ほど受け取った刀を捨てた。


 僕は追ってきたドドさんの前に丸腰で立たった。

 

 「ドドさんを操作させはしねえ! お前の相手は俺だ!」


 「アースに恵まれすぎた脳なしが! 私の前に立つな!」


 暫くはカインさんがあの男の相手をしてくれる。


 その間僕は操作されないドドさんと1対1。


 「ドドさん。僕の声が分かりますか?」


 声は聞こえているはず。

 問題なのは言っていることが分かるかどうか。


 ドミーと会話なんか出来ない。

 きっとみんなそう言うだろう。


 だけど僕はしたことがある。

 あれはニューポルムだったけどね。


 飴を大量に摂取することで僕はきっと、ポルムやドミーに近づいているんだと思う。

 

 だからあの時に会話が出来たんだ。


 「ドドさん。聞こえていますよね。ドドさん」


 「###、###?」


 言った! 

 今、僕の名前を、エイドってドドさんが言った!

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