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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
最終章 世界の真実編
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叶う夢③

叶う夢③



 僕らは簡単にマダーステダリーを包囲した。


 「降参しろマダー・ステダリー! お前に勝ち目はない!」


 3人に武器を向けられてもこいつは逃げようとしない。


 でも今度はパンも助けてくれないぞ。


 「さてと、私は今ポルムを創った。ざっと30匹。私はね、直接自分の手は汚さないんですよ」


 男の周りでゼリー状の手の平サイズの物が動いていた。


 それらの体の中央と思われる部分に紫色の目がありこちらを一斉に見た。

 

 「ドドさん飴は!」


 「使い切った」


 「僕のをどうぞ!」


 「すまねえな」


 飴を手渡し出来るほど僕らには余裕があった。


 ドミーなら厄介だったがポルムは僕らの敵じゃない。


 ツバキで斬るだけで終わる。炎を使う必要もない。


 気持ち悪いほどいたポルムはドドさんが飴をなめている間に、僕とカインさんにより一掃された。


 「ポルムなんかで僕らを止められると思ったのか!」

 

 時間稼ぎだったとしても1分秒稼げたかどうか。


 無駄な抵抗だと思う。もうこの男にも策がないんだろう。


 「飴──P液抽出丸ポルムえきちゅうしゅつがん。ポルムの肉体強化を促す細胞のみを抽出し、摂取しやすくした飴。そんな都合の良い物があるとまだ思っていたんですね」


 今度は言葉で僕らを混乱させる気だ。

 今更お前が何を言おうと信じない。


 「みなさん気にしないでください。こいつの苦し紛れです!」


 「もしもその飴が、ポルムに寄生された時のショックに対する、免疫をつけさせるための物だとしたら?人間のドミーを作れますね~」


 「その口! 焼き切ってやる!」


 怒りと共にこみ上げる炎を奴に放出した。


 炎は簡単にステダリーを飲み込む。


 死んではいないと思う。でも生きることは──


 「今度は100のポルムです」


 「ポルムを盾にした!?」


 焼かれたのはポルムだった。

 男はポルムで自分の体を覆っていた。


 「さあいきなさいポルム達。狙いはファイン・ドドです!」


 ドドさんを狙うのはアースの適合者ではないから?


 ……違う! 

 あの人がこの中で一番多くの飴をなめてきたからだ!


 でもポルムがそんな言葉通りに動くわけない。


 そう思っている間に、ポルムたちはドドさんに迫っていた。


 「あいつポルムを操れるのか!?」


 「私はポルムの創造主です。自分で創った物を自分が扱えなくてどうします?」


 「なんでドミーやポルムたちがジズに攻めてこない時期があったのか、今更分かったぜ」


 いくら弱いポルムでもドドさんを気にしながら、そしてこの数を相手にするのは厳しい。


 それに油断すれば自分だっていつ寄生されるか分からない相手。


 斬っても斬っても死なず永遠と再生する相手と戦っている気分。

 

 さっき無駄に炎を使わなけば良かったと後悔した。

 

 「くっそうキリがねえ! 絶対100体以上いるぞ!」


 「一撃。お前らで何とかやつに一撃当てろ! やつはまだ人間だ!」


 「でもそれじゃあドドさんが」


 「お前たちが先にやつを倒せば、ポルムは創られなくなる!」


 マダー・ステダリーがいる限りポルムは創られる。


 あいつさえ倒せばポルムは終わる。

 そうすれば僕らはコペルトさんたちの援護が出来る。


 それをすべきなのは分かっているんだ。

 でも僕とカインさんがいない間、ドドさん1人でポルムを相手にするのは……


 「エイド! 早く!」


 「分かっています!」


 一瞬で終わらせれば良いんだ。

 僕ならいける、できるよ。そうだろう?ジズ。


 「紅き翼は僕の足に炎は鎧に、そしてツバキに全てを溶かす炎を授けてくれ!」


 「岩の果実(ロック)!」


 カインさんはマダー・ステダリーを岩の中に閉じ込めた! 


 後は僕が炎のツバキであの岩ごと真っ2つに斬って焼くだけ。


 翼を1回大きく羽ばたかせる。

 こちらへ向かってくるポルムを焼きながら、やつがいる岩の前に迫る。

 

 「終わりだ! マダー・ステダリー!」


 ツバキを水平に構えたまま、岩を上下に真っ二つにして翔け抜けた。


 岩以外の物を斬った感触はあった。

 手応えをはっきりと感じた。僕はあいつを斬ったんだ。

 

 でも、ツバキを鞘に納める時に気がついた違和感。


 刃がない。ツバキの赤い刃が砕けてる。


 「いや~。君が正面から来てくれて助かりました。この鉄板の盾は丈夫ですね。


 あれは、カインさんの盾!?


 いや、そんなことよりなんでだ、あいつを斬ったはずなのに! 


 なんで僕のツバキが・・・僕のツバキを返せよ! 

 

 「いつの間に俺の盾を!」


 「良いですか? 万物を作れるということは、君たちの武器も作れるんですよ。今の私ではさすがにアースまでは再現できませんが」


 あいつが腕につけていた盾はカインさんと同じ物だった。


 その盾にはツバキに耐えた後がある。


 盾はすぐに砕けたが、奴はまた新たに盾を創った。


 僕の砕けたツバキを見ながらツバキさえも創り出して手に持っていた。しかも2本。


 「ぐああああっ! 誰か! 俺を殺せぇぇぇ!」


 断末魔のような悲鳴。


 後ろを振り返ると、無数のポルムに取り付かれたドドさんがいた。


 身動きが取れずポルムで出来た檻に閉じ込められている地獄の光景。


 その中の1匹がドドさんの口を触手でこじ開けて、体内へと入っていくところを僕は見てしまった。


 「ドドさんが!」


 「僕はツバキがない! カインさん早く!」


 「け、けどあんなのどうやって」


 何をしても助かる気はしなかった。

 最低だ。僕らはドドさんを見殺しにする。


  「無駄ですよ。ポルムが一度ターゲットの体内に入れば最後。彼は人類初の完璧な! 純粋な! 人間産のドミーになれます。おめでとうドド。君は私の助手としての役目を完璧に果たしました」

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