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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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対ポルム組織② 

対ポルム組織②



 《緊急放送です。各クラスのりりり、リーダーはグリフォンの間まで集合してください。繰り返します各クラスの──》 


 「おっ、ダクの放送ってことはあいつら着いたみたいだな。さてどっちが勝ったか」


 「緊急って言ってましたけど、何の放送だったんですか?」


 「お前さんが着いたから迎えようぜって放送だな!」


 「・・・ひ、人が集まるんですか」

 

 「怯えてるのかエイド?でもそんな不安にならなくても平気だぞ。いても5人くらいだからよ」


 「えっ──そんなに少ないんですか?」


 そういえばジズで何人の人が暮らしているのか聞いてない。もしかしたらそんなに多くない?だったらこんなに広いスペースが余っていることにも納得がいく。


 「挨拶するのはそれぞれのクラスのリーダーだけだからな。まぁ後々他のやつと会うだろうが」


 「あっああ・・・そうですよね」


 リーダー。つまり、偉い人たちが集まるということ?人数が少なくてもそれはそれで緊張する。


 「グリフォンの間はこのまま真っ直ぐ行った正面の扉の先の部屋だ。ついて来い」


 「・・・はい」


 「なんだ? 体調悪いのか?」


 「い、いえ! 元気です!」

 

 目が覚めたら今までの記憶が思い出せない僕。自分の名前すら分からない僕。世界について知らない僕。言ってみれば僕は他所者(よそもの)。ここの人たちはそんな僕を受け入れてくれるだろうか。

 

 未だにそんな不安を持ちながらドドさんに手を引かれ、いつの間にか遠くにあると思っていた扉の目の前に来ていた。


 「戻ったぞ~!」

 

 ドドさんはそう言いながらその扉を開ける。僕はその背中に隠れた。


 

 ────グリフォンの間



 玄関と言われていたケルベロスの間よりグリフォンの間は狭い。狭いと言ってもこの部屋だって人が何百人も集まれそうなくらい広いんだけどね。


 「ドドさんお帰りなさい! ぶぶぶ、無事で何よりです!」


 「男の子はどこなの?」


 「生存者の分の飯もできてるゾ!」


 聞き覚えのある声と初めて聞く声たちが3人分──後ろにいた僕の背中を押して無理やり正面に出すドドさん。前にはもちろん3人の人がいて、僕のことを珍しい物を見る目で見ている。もちろん全員初めましてだ。


 「こいつが例の生存者だ」


 「初めまして! エイド・レリフです!」


 名前を言えば警戒されることはないのはニアースさんが教えてくれた。洞窟に入る前に自己紹介をしていたからか、はっきりと言うことが出来た。

 

 「えええ、エイド・レリフさんですね。覚えました!」


 「あら、可愛い子ね」


 「好きな食いもんはなんダ?」


 3人とも内容もタイミングもバラバラに話しかけてくる。だけどそうやって話しかけれてくれたことは嬉しかった。


 「悪いなエイド。みんな久ぶりに初対面の人間と会ったからな、自己紹介を忘れてるんだ」


 ドドさんがわざとらしくそう言うと、3人はハッとして自己紹介をはじめた。

 

 「あ、すいません。僕の名前はダク・ターリン。通信クラスのりりり、リーダーです」


 特に聞き取りづらいわけではない。でも話し方に特徴のあるこの人はダク・ターリンさん。僕よりも子供の男の子。だけど足を揃えて、敬礼までしている立ち方のせいで大人びて見える。見た目もとても真面目そう。そういう点ではニアースさんと気が合いそうだ。


 「私は衛生クラスのリーダー。ケア・ハント。ここで唯一の医者なのよ」


 全身真っ白い服の人はケア・ハントさん。ただでさえ白い肌だからなおさら白く見える。それと対照的な黒くて長い髪の毛も部屋の光に照らされて艶めいている。素敵な大人の女性だ。でもなんだろう、まるで僕のことを食べるような目で見てくる。


 「エイドくんって言ったかしら?いつでも私の部屋に遊びに──」

 

 「ま、ヤブ医者だがな」


 ドドさんのこの一言で優しい表情をしていたハントさんは鬼と化した。


 「毒を射つわよ?」


 雰囲気と声を一変させたハントさんは胸ポケットから注射器を取り出し、その針をドドさんに向ける。どうやら本気で言ってるみたい・・・。


 「とまぁ、長生きしたけりゃこいつを医者と呼ぶことだ」


 「・・・はい」


 でもどうしてヤブ医者?今だって慣れた手つきで注射器を一瞬で手に持ったし、この見た目からもそんな風には見えない。あ、でも着ている白衣がコスプレのようにも見えなくもない。もうちょっとその、()()()()()()()()()()()()()と思う。けど長生きをしたいからそれは言わないでおこう。幸い僕には優しそうだし。

 

 「ハイハーイ! 俺プリップ・チャップ! 衛生クラス所属の料理人! 世界一の料理人!」


 「せ、世界一の料理人!?」


 愛らしいまん丸とした体の男性が飛び跳ねながら名乗り始めた。マスコットキャラクターのような姿は世界一の料理人には見えない。それにどちらかというと料理人というよりも、食べる方が似合う。世界一の大食いとかなら納得がいくんだけど。


 「世界一の料理人と言われたのはこいつの祖父の話だけどな」


 ドドさんがそう補足すると彼もそれに反応した。


 「うるセー! 俺も世界一ダ!」


 チャップさんは重たそうな足を上げて床に叩きつけている。気のせいではなく確かに揺れを感じた。

 

 「でもあの料理じゃね~」


 「何だと! こんな世界、食えるだけでもありがたいと思えヨ!」


 「──そうですねチャップ。君は世界一の料理人です」


 誰?部屋の奥の方から新しい声が聞こえた。決して大声ではない穏やかな声。なのにその声はまずチャップさんを黙らせて、全員を注目させた。


 「ステダリーさん!」


 ドドさんはその人に向かってそう言ったというよりも、その人を見て反射的にそれを言っていた。そして自己紹介をしていた3人は即座に僕の前をどいて、その人が通る道を作った。


 にぎやかだった空気が一気に凍りついたのを、黙っているみんなから感じる。引き締めた顔で、こちらへ歩いてくる人を見ている。


 向かってくるその人が只者ではないのは何も知らない僕でもわかる。見た目はおじいさんだけど、何者だろう。

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