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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
最終章 世界の真実編
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誕生④ 回想

誕生④ 回想



 パンと共に遺跡の洞窟から出てみると、外には銃にしがみついて泣いている三十路の(いい歳をした)男がいた。


 てっきりドドは自分1人だけで逃げたと思っていたがそうではなかった。 


 私は自分のために泣いてくれる人間を見たのは彼が初めてだった。


 だから彼を引き続き雇うことにした。今度は正式に助手として。



 ******



 ドドにもパンを幻獣として紹介した。

 彼は意外とそういうオカルトへの免疫があったらしくパンを見てもあまり驚かなかった。


 だが流石の彼も、私が手にした万物を創造する力(神にも等しい力)には腰を抜かしていた。


 手をかざすだけで崩壊した洞窟の壁や天井を修復した時には背後から銃口の気配を感じた。


 私が力を得てからはそれまでの無職の男と旅人の関係が変わってしまった。


 態度も言葉遣いも変わった。

 まるで王様と家来の関係。


 そしてこの遺跡は私たち3人の研究所となった。

 

 「ステダリー博士。もう旅はしないんですか?」


 「ああ、暫くはやることが出来たからね」


 「やること、ですか?」


 「私はこの力でね、世界を創り変えようと思うんだ」


 「確かに博士のその力は凄いです。でもいくら何でも世界を作るのは・・・それに世界を変えるってどういうことですか?」


 「君はこの世界がおかしいと思ったことはないのかい?」


 私は彼が「はい、ごもっともです!」と共感してくれるのを期待した。


 いや、そういう反応をするだろうと思っていた。だから強気で言ったのだ。


 だが彼は犯罪者を見るような目で私を見て「な、なくもないですが」と、物理的にも引いていた。

 

 なぜだ? 彼が軍をクビになったのは、私と同じような気持ちを持っているからではないのか?


 「人は環境を(むさぼ)り、汚した。その所為(せい)で環境が今のように悪化しても、見て見ぬふり。表向きは国どうしで対応していくと言っているが、結局のところはどこも自分の野望のことしか見ていない」


 「マダー・ステダリーさん。あなたはまさか本当に博士だったんですか?」


 やはり彼は勘が鋭い。

 いや、今のはあからさま過ぎたかな。


 「──まさか、ニュースを見てネットで愚痴っていただけの愚か者さ」


 「シカシ オマエハ モウチガウ ソノチカラデ ナンデモデキル」


 パン。こいつは神出鬼没だ。今もどこから現れたのやら。


 この幻獣は気がつけば私の背後か隣にいる。


 「だから()()を作ったんだよ。見ておくれ」


 私は手の平にそれを創り出した。

 まだ完成ではないが名前は決まっている。


 世界を創り変えるための道具──ポルムだ。


 「これは、クラゲ?」


 「いや、アメーバが原案だよ。でも機動性が悪いから、手足を生やしたらそれっぽくなってしまったね」


 本当はもっと派手な生き物を創りたかった。


 それこそ映画に出てくるような星を滅ぼすような怪獣を。


 でも今の私にはこのような単純な生き物を創るのが限界だった。


 「コレハ ナニヲスルンダ」


 「地球上全ての生き物に寄生し、寄生した生き物の脳を操って暴走するんだよ」


 少々遠回りなやり方だが我ながら良い物を創ったと思う。


 自分の手は汚れない。なので私は疑われもしない。


 きっと世界の指導者たちはバイオテロや、見すぎた映画のせいで地球外生命体の襲撃だと考えるだろう。


 それに何よりこのポルムは、本を読みながらでも創れてしまう。


 「それは・・・して良いことなんですか?」


 「ドドくん。それはわざわざ言わなくても分かるだろう?」


 「た、多分。いや絶対だ! 力の使い方は間違ってる! あんたのその力は、遺跡のように壊れた物を直すために使うべきだ!」


 「ああそうだよ。だから壊れた地球を直すんじゃないか。君は何を言っているんだい?」


 「ステダリーさん。あんたおかしいぜ! 酒場であった時のあんたじゃない!」


 昔から人と意見が合わなかった私は、きっと彼とも対立するだろうと予想していた。

 

 それにこういうのは慣れている。

 今までならこういう人間とは縁を切るが、彼とそうするわけにはいかない。


 彼には私の計画の中で重要な役割を担っているのだから。


 「ならどうするんだい? このことを世界中に知らせるかい?まあ誰も信じてくれないだろうけどね」


 「いや、俺はあんたを監視する。もしあんたが人の道から外れるようなことをしようとすれば、その時は俺があんたを止めてやる」


 期待通りだドド。

 君ならそう言ってくれると信じていた。


 「だそうだパン。君は私を守ってくれるかい」


 「イケニエヲ ササゲレバ ソレクライノチカラハ カシテヤロウ」

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