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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第3章 楽園の終わり編
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49話 To antio①

49話 To antio①



 ────対ポルム組織ジズ とある廊下 



 「エイドはどうしてこの秘密のルートを知ってるの?」

 

 以前通った秘密のルートを進もうとすると後ろでニアースさんが立ち止まっていた。


 「ドドさんに教えてもらったんです」

 

 そう言って失敗したと気付いたのは言った直後。遅かった。


 今のドドさんは信用して良いのかどうか悩んでいた人だった。


 「なら危険かもしれないわね」


 「確かにドドさんが今どこにいるのか、無事なのかも分かりません」


 「ドドさんだけじゃないわ。マダー・ステダリー博士とあの黒装束はどうしたのよ」


 そういえば気にしていなかった。

 普段からほとんど会わないから僕の頭の中のジズの人間から忘れかけていた。


 あの2人の居場所は一番重要じゃないか。


 でも彼らが第2地点──シンジュウクラスの場所にいるのは見た。


 ということはもうジズにはいない?


 「チャップは博士たちを知らないのか?」


 「あの人の部屋になら真っ先に事態を知らせに、ダクとその護衛のハントが行ったゾ。けどすでにいなかったんダ」


 「どうしてジズのトップがこんな重要な時にいないのよ!」


 「と、とりあえず今はここを行きましょう」


 「待って!他の道を──」

 

 「下がレ!」


 そろそろ来る頃だろうと薄々思っていた。

 だから先を急ごうとしていたのに、来てしまった。


 「ドミーダ!」


 チャップさんの声に反応して振り返った時には、全身傷だらけの白目を剥いた犬が迫っていた。


 すぐに前に出たカインさんの盾に噛み付いて、そのまま噛み千切ろうとしている。


 とっさにツバキを抜いて犬の首に叩きつけた。


 首と離れた犬の胴体は勢いよく血を噴出しロケットのように飛んでいく。


 だがその口はまだ盾に噛み付いたまま。


 〝ダンダン〟


 ニアースさんが撃った実弾は犬の頭に命中。


 頭は盾を離しその場に落ちた。

 落ちた頭にニアースさんはもう1発撃ち込む。


 これでようやく1体のドミーが死んだ。

 

 「飴とアースを使わなくても勝てるんですね」


 「今のは犬だろ?それに飴の効果は少しだけ残ってる」


 「行きましょう。先頭はエイドその後ろに私とチャップさん。カインは最後尾をお願い」


 さすがにもう考えて止まっている暇はなかった。


 ドミーが1匹来た以上は例え先が崖でも進まなければ──

 

 「走れ! 後ろからドミーが来たぞ!」


 言われた順番を守りつつ秘密のルートへ逃げ込んだ。


 明かりのない道は走って走って走っても進んでいるのか分からない。


 ただ、後ろから来るドミーたちが近づいているのは確実だった。


 「どうして気がつかなかったの私。1本道って逃げ場がないじゃないの!」


 「良いから早く走れ走れ!」


 最後尾をカインさんが任されたのは万が一の時に「ロック」を使えるからだろう。


 だけどもし僕がその役目を任されていたら立ち止まってアースを発動する気には慣れない。


 敵の数も種類も分からないんだ。

 

 仮にニューポルムがいたら?

 ・・・数秒先生きてるのかも分からない。

 

 《ベンヌシステム起動。ベンヌシステム起動。これよりジズは封鎖、リセットされます。逃げ遅れた職員は直ちに避難を開始してください》


 聞いたことのない機械の声がそう告げた。

 緊張感も危機感も何もなくそう伝えるためだけの感情のない声。


 「レンさんがやったんですね」


 「封鎖って・・・急いで! 廊下にシャッターが降りてくるわ!」


 道の両端が揺れ始め天井が崩れ始めた。


 暗闇でも分かるほどの何か長くて大きい板が前方に降りてくる。


 あの大きさならこの道を十分に塞げる。

 

 まるでカインさんの「ロック」と一緒。


 「でもシャッターが降りるならドミーが追ってこれな──」


 足を休ませようとしたちょうどその時、後方で壁に石がぶつかって砕けた音がした。


 考えたくはないが恐らくすでに降りたシャッターに、ドミーが突進して突き破ったのだろう。


 「シャッターに足止めは期待できなさそうね」


 「でも生存時間が1秒は伸びたぜ」


 「最後尾を走りながらよくそんなことが言えますね」


 後ろを振り返るとカインさんの後ろに丸い人影。


 その影はいつの間にか止まっていたチャップさんだった。


 すかさず足に急ブレーキをかける。

 そのため突っ込んできたニアースさんを受け止めた。


 「バカエイド! なんで止まるのよ!」


 「チャップさんが来てません!」

   

 「どうしたチャップ走れよ! ドミーが来てるぞ!」


 僕らを追いかける激しい呼吸音は降りたシャッターのおかげで少し離れた。


 だからって止まっている暇なんかない。


 「先に行ケ。このままじゃみんなドミーに追いつかれるゾ!」


 「とまんじゃねえ走れよ! シャッターだって降りるぞ!」


 「そうですよ! チャップさんが閉じ込められます!」


 立ち止まったチャップさんは呼吸もさほど乱れず背筋も伸びている。


 あの人はまだ走れる。

 だからなんで止まったのか分からない。

 

 「それで良イ。お前らを守れるならそれで良イ!」


 「どうしてですか! 一緒に逃げましょう!」


 「オレがここでドミーを止めル!」


 「チャップさんがそうする理由はなんですか!」


 「オレはお前らを助けたいんダ」


 「どうしてですか! 僕らがジズクラスだからですか!?」


 「違うぞエイド。オレがお前らを助けたいのはお前らが、子供だからダ」


 「子供だからなんですか! 助ける順番に子供も大人も関係な──」


 「オレは大人ダ! 大人は子供守る存在ダ! だからオレはお前らを助けるんダ!」


 「何言ってんだよ早く来い! もう時間がない!」

 

 チャップさんと僕たちの間の天井が崩れだしシャッターが現れた。


 降りてくるシャッターは間も無く僕とチャップさんを隔離するだろう。


 なのに、なのにチャップさんは動かない。


 「急いでチャップさん! 早くこっちに!」


 「もしも、今度美味しい料理を作れたら残さず食べてくれよナ」


 「バカやろう! そんなこと今関係ないだろうが!」


 「チャップさん!」


 僕とカインさんは降りてくるシャッターの向こうへ走り出そうとした。


 しかし後ろからガッチリと背中を掴まれる。


 「ダメよ2人とも! 行ってはダメ!」 


 「お粗末様でした(不要這麼講)


 背中を後ろに引っ張られながらチャップさんの姿を最後まで見ていた。


 シャッターが降りる寸前、チャップさんは笑顔でこちらに礼をしていた。


 ベンヌ──不死鳥に憧れた人間が人工的に生み出した幻獣。とある聖歌隊の少女の体を使って作られたらしい。     


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