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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第1章 アース編
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4話 対ポルム組織①

4話 対ポルム組織①



 洞窟を歩き続けて初めてこれまでとは違う光景を目にした。そこにあったのは見上げるほどの扉。その赤土(あかつち)色の扉の前にはニアースさんとカインさんが座っている。


 「お前らこんなとこに座って何してんだ?」


 「遅かったですねドドさん」


 「待ってましたよ!」


 「待ってた?」


 「私たちは扉のパスワードを知らないんですよ・・・」


 「そうか、ニアースでも知らなかったのか」


 「ちょうどいい機会です。私に教えてください」


 「俺にも教えてください!」


 立ち上がった2人はドドさんの前に駆け寄る。この扉のパスワード、そんなに知りたいものなのかな。だって外は危険なんだから、わざわざ地上に行きたいなんて思わないけど。


 「教えてやりたいが()()()()()()()()()()()()()し、()()()()()()()()()()()()()()()()だろう?」


 そう言いながら2人をどけて扉の前に立ったドドさん。その大きな扉の前で手を動かしている。それに対してピピッと機械音が応える。


 「ドドさんそれを知っていて私たちを先に行かせましたよね?」


 ニアースさんは握り拳を作ってドドさんの背後に近づく。ナイフでも持っていたらまるで暗殺者だ。

 

 「んな怒るなって。ほら、入れ」


 木の幹くらい分厚い扉が、土を削ってゆっくりと開く。見た目は石や岩のように自然な物で出来ている扉なのに、パスワードを入力して自動で開くだなんて仕組みが想像できない。


 「お前らは先に行って帰ったと報告してきてくれ」


 「また私たちを先に行かせるんですか?」


 「先に報告が出来たやつには後で()()をやる」


 ニアースさんのため息を見たドドさんは切り札のようにそれを言った。いったいどんな褒美だろう。2人の瞳が一瞬で大きくなった。態度をこんなに簡単に変えるなんてパスワードよりも良いものなんだろうな。


 「負けそうになっても()()()()は使うなよニアース」


 「それはつまらない冗談ですよドドさん。飴はもちろん、カイン相手にアースだって使うまでもありません」


 「よお、ニアース。何ならハンデをくれてやっても良いんだぜ?」

 

 アースはさっきも聞いたけどアメ? アメを使うな? また僕が分からないことをドドさんが言っている。それを尋ねる間もなく2人は両手と片膝を地面について準備万端。今にも走り出しそう。見た目だけで判断したらやっぱり体が鍛えられているカインさんの方が速そうだけど──


 「GO!!」


 ドドさんの大声と手と手を合わせた破裂音。ほぼ同時に反応した2人は扉の中へと消えた。あまりの速さに砂が舞う。2人の背中はもう見えない。


 「さーてエイド。今更だがここが対ポルム組織、ジズだ」


 「・・・対ポルム組織、ジズ」 


 ドドさんは言っていた。ジズがどうして洞窟(こんなところ)にあるのかは着けば分かると。そしてこの先がポルムやドミーと命をかけて戦う人の集まっているところ。


 どれだけの人がいるのだろう。その人たちは僕を歓迎してくれるのだろうか。ドドさんには「来てくれるだけで良い」と言われた。でも正直、不安なままだ。


 「扉の奥はもっと暗いから気をつけてこいよ」


 すでに扉の中に消えたドドさんを追いかける。言われた通り扉の中は明かりが無い。小さなトンネルを通っている感じだ。でも先の方に小さなオレンジ色の光が見える。光が大きくなると共に暖かい空気も流れてきた。それらを感じると不思議と勇気が出て足が前に動く。


 途中、足元の感触が何か硬いな物に変わったのを感じる。光に手が届くそのくらいまで歩いた時、僕はつまずいて頭から前に転がった。


 「イっててて・・・」


 「おいおい大丈夫か?」


 「ど、ドドさん」


 手を伸ばすドドさんはオレンジ色の光に照らされていた。それは太陽ではない光。起き上がり周りを見渡すが、つい、口を開けたまま固まってしまった。だって見えている現実が受け入れられなかった。


 目の前に広がっていたのは洞窟からは想像できないほどとてつもなく広い空間。天井は先が見えないほど高くて、壁は走っても追いつけないほど遠くにある。僕たちを囲む茶色の壁には、扉のようなものがいくつも見える。


 とても広い空間なのにあるのは扉だけ。いると思っていた人間は1人もいない。ずっと洞窟を歩いてきた僕は大きすぎる環境の変化についていけず膝が震えてしまう。


 「・・・こ、この場所ってなんなんですか」


 「ここは一応()()()()()()()って名付けられてる」


 「なんだか物騒な名前ですね」


 「実際にそう呼んでるのは一部だけだが、言ってみりゃジズの玄関みたいなもんだよ」


 「玄関!? こんなに広いのに玄関だなんてもったいない」

 

 「ハハハ、良い反応だ。だが、たまに集会とかの集合場所にも使うぜ」


 僕の予想ではジズの中は古代の人間の祖先が暮らしていたような場所だと思っていた。それがまさかまさか、こんなにも広い場所だった。床は土じゃなくてツルツルしている。特別な石で出来ているようだ。まるでホテルだ。


 「こ、こんなのどうやって作ったんですか」


 「()()()()()()()なんだと。だから俺にも分からねえ」


 「じゃあジズがここにある理由って」


 「察しの通り、()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()ってことだな」


 地上はポルムやドミーなどの危険が溢れているから地下で暮らすのは分かる。にしてもよくこんなに立派な遺跡が・・・地下で生きなければいけないからこの遺跡を見つけたのか。それとも遺跡があったから地下で暮らすようになったのか。僕はどうでも良いことを詮索していた。

  

 「この広さでここが玄関ってことは中はもっと広いんですか?」


 「いやそれがそうでもなくてな──」


 《緊急放送です。各クラスのりりり、リーダーはグリフォンの間まで集合してください。繰り返します各クラスの──》


 壁? 床? 天井?子供の声が響いた。男か女かは分からない。まるですぐ隣で会話をしているように鮮明に聞こえた。放送の声とは思えない。

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