不死の炎②
不死の炎②
────対ポルム組織 洞窟前 第4地点
洞窟の入り口の穴はその前に敷き詰めるように並ぶドミーに塞がれた。
誰もがその岩山の穴の中へと避難したかった。
だがそれは自殺行為。
自らを襲う狼に突っ込んでいく羊はいないだろう。
しかしそうせずに逃げたところで「死ぬ」「殺される」と、少年達は思っていた。
「君たちはジズクラスだろ!? 早くアースを発動しろ!」
戦意を失った少年たちの前に黒い制服を着た青年や大人が現れてそう言う。
偵察クラスの彼らは洞窟に向けて一斉に銃を発砲した。
ただの兵士である彼らは死にたくないその一心で引き金を引き続けた。
鼓膜を破るほどの轟音は子供達に「自分たちよりも弱い人が戦っている」ということを気がつかせ、勇気を与えた。
「アースオブ──ベヒモ!」
カインと同じように皆次々に己の体を幻獣に捧げる。
少年たちは力を体に宿し始めた。
カインが岩に包まれたように1人1人が水や炎などに包まれていく。
包まれているその間は外の様子は見えない、聞こえない。
だが何となく〝さっきよりも静かになった〟と、感じている者もいた。
それは気のせいではなく、その感じた通りとなる。
両手に装備した盾を身構えて岩から出てきたカインは両腕をダランと脱力した。
(俺は目の前の光景を疑った。
俺が岩の中にいたはほんの5秒くらい。
それだけで、たったそれだけの時間で、さっき俺たちの前に立っていた銃を撃つ背中が消えていた。銃声がやんだ。
聞こえるのは注意したくなる不快な咀嚼音。
思った通りドミーの口元は赤くなっていた。
地面には血で濡れた銃が腕付きで落ちている。
あの人たち偵察クラスの一部だよな。
5秒も戦えなかったのかよ。
ドミーの数だって全然変わってねえぞ)
「斬れ! 叩け! 殴れ! なんでも良いから戦え!」
(誰かがそういや、俺が言っていた。叫んでいた。
自分が戦えば良いのに誰かに命令していた。
けれどみんな想いは同じだった。
みんな何かしらの能力を発動して戦おうとしていた。
誰のどんな能力かは知らないけれど水の弾丸が──水の弾丸!?)
「三百の眼」
例えるならそれは水の流星群。
その水の弾丸は、敵だけの命を正確に撃ち抜く。
肉を喰っていたドミーたちの半分がそれで倒れた。
誰もが振り返ろうとした時、水の絨毯に乗った少女が怯える少年たちの背後から最前線に降り立った。その姿はさながら救いの女神。
「ニアース!」
「おせえよニアース・レミ!」
「あら、ドーサも生きていたの?」
「誰かさんの弾丸に撃ち抜かれるかと思ったぜ」
「それよりニアースはどうしてここに? お前は確か前の方で」
「ダクから連絡が来たのよ」
「だ、誰がダクにそんな連絡を?」
「……俺だよ」
緑の鱗に包まれたドーサが鍵爪を生やした手を上げた。
「お前が!?」
「さっきダクにエイドがいねえから、他の部隊に確認してくれねえかって」
「それを聞いた私がアースの力で探していたの」
「ああ、お得意の」
「そしたらこっちでやばそうなのが見えたから急いで来たのよ。感謝しなさい?」
「そうだエイドは!」
「今はまずドミーよ!」
たった1人の少女が現れただけで自信を無くした幻獣たちは前を向いた。