45話 不死の炎①
45話 不死の炎①
────第2地点
ウインが氷の隕石を落とすほんの数分前、神獣クラスの布陣近くにエイドはいた。
人目を気にしてかがみこんでいたが、赤い髪の赤い服の赤い刀を帯刀している少年は、この茶色の外の世界で隠れることはできないだろう。
(シンジュウクラスのことを知りたくてなんとかバレずにここまで来れたけど、最前線の三幻鳥クラスはジズ最強だから負けるわけないだろうし、どうせ誰も戦わないかな?
でも運良く逃げ込んだ敵を倒すために戦ったりしていや、それもないか。
にしてもここにいる人たちって強そうに見えないな。
武器も特に見えないし、服装も僕らのような制服じゃない。
というかあれって生活区の人や外の人たちじゃないか?
でもなんでそんな人がシンジュウクラスってところにいるんだ?)
「あっ! あれって!」
思わず声が出てしまった口をとっさに両手で塞いだ。
声が聞こえたら殺される。そんな恐怖を感じた。
な、なんであの人が、なんでステダリー博士と黒装束の者がここに!?
黒装束の者は今まで見てきて強さが分かるからここにいる理由も分かる。
けどなんで博士が? 様子を見るため?
でもそれならジズの中、もしくは一番後ろの布陣で情報を受け取れば良い。
なんでわざわざドミーが来る可能性がある第2地点にいるんだ。
いや、もしかしたらここですら安全ってことか?
────ジズ入り口 洞窟前 第4地点
落ち着かないカインにドーサが近づいた。
カインがイラついていたので、今度は恐る恐る慎重声をかける。
「エイドは見つかったかカイン?」
「いねえよ。もう戦いは始まってるのにあいつどこに行ったんだよ」
「な、なあカイン。変なこと聞くけどよ」
「ああ? なんだよぶん殴っぞ?」
「お前って今アース発動してんのか?」
「するわけねえだろ! 敵が来た時に効果が切れたらどうすんだよ」
「じゃあなんであそこに岩があるんだ?」
ドーサは持っていた鎚矛で洞窟がある岩山の、頂上の方を指した。
「は? 岩?」
カインは真上を見上げた。
すると彼の目にもドーサが見たものが映った。
首を限界まで反らなければ見えない岩山の頂上。
そこには彼が言うように確かに岩のようなシルエットがあった。
だが人よりも数多くの岩を見てきた少年にはそれが岩ではないとすぐに分かった。
「いや、あれは岩じゃねえよ。てか昔からあんなとこに岩なんかなかったろ」
「ならなんだ!」
「俺にも分かんねえよ。けどあれってよく見たら動いてないか?」
「・・・マジだ。動いてやがる」
岩のような塊が風に揺れる草のように動く様子を見てカインは閃いていた。
「ドーサ。この岩山の裏って知ってるか?」
「知らねえけど、ここからの景色と同じなんじゃね? どこまでも荒野だろ?」
「もしよ、お前がジズを倒そうとしたらあの岩山を登って後ろから奇襲、とかするか?」
「やめろよカイン。あの塊がまさかドミーだって言うのか!?」
ドーサのたった一言の単語に、それまで2人をうるさいとしか思っていなかった周りの者たちが一斉に反応した。
「ドミー?」
「ドミー!? どこ?」
「えっなになに?」
「ドミーがここにいるわけねえだろ」
周りの視線を感じてカインは小声に切り替えた。
しかしドーサはさらに大声を出す。
「どうすんだカイン! お前のせいだぞ!」
「いや、気がついて良かった。だってあれ・・・落ちてきてるぞ!!」
岩山の頂上から巨大な影がバラバラになり落ちてきた。
この高さから落下したらどんなに頑丈な岩でも砕けるだろう。
しかしその影の全てが地面に落ちても物が砕ける音はせず、地に足をつけた音しかしなかった。
その着地した物を見たとき、この場にいた集団全員が武器を構えていた。
構えていた──否、怖くて武器を前に突き出しているだけだった。
震えている足で後ずさりをしながら武器を持っているだけ。
本当に武器を構えていたのはカインの1人だけだった。
しかしそれもしょうがない。
誰だって自分達の数の倍以上はいるであろう生き物の集団が目の前に現れたら怖気付くだろう。
しかもそれがドミーという狂っている動物たちなのだから。
「ライオン、シマウマ、ハイエナにゾウまでいるな。ドーサは何か分かるのいるか?」
「……」
「おい、ドーサ?」
「全部ドミーだろバカが」