44話 マボロシの終わり①
44話 マボロシの終わり①
────草原
乾燥を極めて老いてしまった大地の上に青、緑、白の制服を着た3人が立っている。
彼らは額から汗をかいていた。
草原は珍しく曇っている。
となれば3人の汗の原因は、太陽ではない。
間も無くここへやってくる生き物のせいだろう。
百戦錬磨の彼らだったがそれが過去のものとなり、久しくプレッシャーを感じていた。
「ウイン、アマウ。俺たちだけで終わらせるつもりで戦うぞ」
「飴は3つ?」
「とりあえずは2つだ」
「バモン!あれって……」
アマウの目は半透明の人型の生物に誰よりも早く気が付いた。
人型は景色と一体化しており、もっと近づかなければ分からないだろう。
だがアマウにはその生物が目の前にいるように感じた。
それはアマウが人型から誰よりも恐怖を感じ取ったからである。
「ニューポルムだ! 全員飴を3つ飲め!」
バモンが合図を出すと3人はそれを飲み込んだ。
それぞれの武器を手にとり、例のごとく自身の手や腕などを傷つける。
「アースオブ──」
「エトピリカ!」
バモンは氷。
「ケツアル!」
ウインは竜巻。
「ルフ!」
アマウは岩石に包まれた。
この瞬間こそが戦いの始まりの狼煙。
しかしその合図は一番後方、ジズの入り口である洞窟を守っている少年たちには届いていなかった。
────対ポルム組織ジズ 洞窟前(第4地点)
「お、また会ったなカイン・ビレント」
「ドーサか」
カインは相手の顔を見て挨拶をしたが、それは今の彼にとってはただの作業だった。
「なんだその自信なさげな声は?」
「エイドのやつ見なかったか?」
「エイド・・・ああ、あの赤髪か。見てねえよ? 剣士だからこの辺じゃねえのか?」
「それがいねえんだよ。ジズを出る前は先に行ってるって、言ってたんだけど」
たくましい手の指を女性のようにいじりながらそう言うカインをドーサは鼻で笑った。
「逃げたのかもしれねえな」
「そんなわけねえだろ!」
カインはすぐにそのたくましい手で彼に掴みかかった。
「冗談だ悪かった! 落ち着け!」
さすがにここまで反応してくると思っていなかったドーサは本当に謝っていた。
でなければ自分の首が危なかった。
首を解放されると、彼はまず襟を直した。
「エイドも心配だけど、敵が見えたらその時は集中しろよ」
ルフ──岩を食べる巨鳥。
ルフが去った後はその土地から山が消える。