始まる終わり③
始まる終わり③
────数日後
対ポルム組織ジズ 玄関 ホールL
いつも誰もいないこのだだっ広い玄関に僕らは集められた。
3人だけじゃない。
ジズに属している全クラスの全人間が集められた。
中には一般人のような人もいた。
生活区の人かもしれない。
僕らを集めたのはマダー・ステダリー博士。
博士はどこから持ってきたのか大きな台の上に最初から立っていた。
何も知らずに集められた僕らの顔をその高いところから見下ろしている。
この場にやってくる人がいなくなっても暫くは黙っていた。ずっと見下ろしていた。
そんな博士の口が開いたのは騒ついていた集団が黙り込み、数百を超える目線が自分に向けられていると自覚した時。
「明日、対ポルム組織ジズの存亡をかけた戦い。つまり──人類の未来をかけた戦いが始まります」
それはあまりにもいきなりの、予想していない発表。
いつも優先的に情報が知らされる班長のニアースさんでさえ、各クラスの長でさえ、集まったその場で初めて知った顔をしていた。
集団はその内容に騒つくことさえ出来ない。
みんな固まっていた。
口を開けたまま魂を抜かれたように時が止まっていた。
発表を知った時にはもう手遅れで逃げることが出来ないのを僕は理解した。
僕たちは戦わざるを得ない。
きっとそうやって覚悟を決めさせるために、わざとギリギリまで発表をしなかったのだろう。
────カインとエイドの部屋
「さっきの地上の様子の写真本物だったのかな」
「偽物を見せるわけないでしょ」
「でも写真の隅から隅まで全部ドミーだったじゃん」
驚きの発表と同時に突如岩の壁に映し出された画像にいたのは僕らがこれから戦う相手。
それはもちろん寄生されたモノ。
これまで10体とかなら見たことがあった。
けれどさっきのは指で表せる数じゃない。
壁一面がドミーだった。
ドミーが大陸になってそのまま動いてきたような数。
きっとあれを見た人のほとんどが〝終わりだ〟って思っただろう。
でもその直後にもう1つ発表された「シンジュウクラスが参加します」の一言で空気が一変した。
それまで口が開いたままの人達は魂が戻ったのか急に騒ぎ出し、ほとんどの人がまるで勝ちを確信したように拳を掲げて雄叫びを上げていた。
今さっきまで〝終わりだ〟って思っていたはずなのにどうして急にそうなったのか「シンジュウクラス」を知らない僕には理解出来なかった。
「あの写真よりも私は神獣クラスの方が嘘かと思ったわよ」
「ニアースさん。そのシンジュウクラスって何なんですか?前からジズにありましたっけ?」
「ないわよあんなの」
「味方じゃないんですか?」
「味方よ。でも詳しくは言えない」
「どうしてですか!」
「だって知ったらきっと、エイドは怒るだろうから」
「怒りませんよ?」
「いんや、エイドは怒るよ」
「カインさんまで!」
2人とも何も教えてくれなかった。
僕が知ったら怒る? でも味方なんだろ?
一緒に戦ってくれる味方のことを聞いた程度で怒るなんて、2人は僕のことを何だと思っているんだ。
「どうせ明日見れるんだから良いじゃない」
「明日。本当にここにあのドミーたちが来るんでしょうか」
「来ないのが一番よ」
開戦の日は明日。
ドミー達はジズの領土内の外側ギリギリまで来ているらしい。
ってことは外で暮している人たちは・・・日の出と共にみんな殺される。
前に僕がチャップさんたちと一緒に、ご飯を渡しに行った人たちも殺される。
ドミーが来るなんて知らないで今も明日があると思って暮らしているんだ。
あの人達はまたチャップさんが来るのを楽しみにしている。
けれど、ジズの中の人間で外の人達を気にする人はいない。
いたとしたらチャップさんと僕だけ。
僕はみんなに外の人を助けようと訴えようと思った。
バモンさんのような大人なら力になってくれると思った。
でも、僕よりも助けたい気持ちが強いチャップさんが何もしていなかったんだ。
それを見たら、僕だけが子供みたいに騒ぐわけにはいかないじゃないか。
それにもう、明日なんだ。
どっちみち時間がない。諦めるしかないんだ。
今更何もできないんだから。




