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幻獣チルドレン  作者: 葵尉
第3章 楽園の終わり編
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41話 秘密の食堂①

41話 秘密の食堂①


  ────対ポルム組織ジズ 玄関 ホールL

 


 海の底のようにどこまで続いているのか分からない深い(暗い)天井。


 端から端まで声が届くかどうかも分からないほど広く何もないジズの玄関。


 唯一ある明かりはその暗闇の天井で光る小さな石の粒のみ。


 この暗さを有り難く思っているのは、泥棒のように辺りを警戒しながら歩くこの3人だけだろう。


 「いや~。食堂で言われた時は驚いたゾ。まさかエイド!」


 「大丈夫ですよ。僕とドドさん以外でチャップさんのやっていることを知っている人は居ませんから」


 「お前たち物は持ったな?じゃあ行くぞ」


 「あれ?外へはこっちからじゃ」


 外へと続く扉に向かったのは僕1人だけだった。


 「今日は材料が多いからな。偵察クラスの車を使う」


 「……それバレませんか?」


 こんな時間に車が1つ出て行ったら怪しまれるんじゃないだろうか。


 「偵察クラス長の俺が偵察クラスの車を運転していて何かおかしいと思うか?」


 「いえ、普通ですね」


 「だろ?」


 「お前らは別の通路から外に出て待っていてくれ」


 「他にも地上へ出る道があるんですか?」


 「ああ、案内してやるゾ!」


 「じゃ、また後でな」


 顔も見えない暗さだけどその声でドドさんが親指を立てて、歯を見せているのは分かった。


 何だかワクワクする。

 見つかったらとんでもないことをしているのにこの感覚・・・楽しい。


 

 ────ジズ領土内 草原



 ドドさんってもしかして運転は下手?

 道が悪いのかタイヤが悪いのか、右に左に揺れる揺れる。


 「残念だったなエイド」


 一瞬運転のことを言っているのかと思った。


 けれどドドさんの後ろ姿から聞こえる声が真剣だったからそうは聞かなかった。


 「何がですか?」


 「今日は曇ってる」


 「・・・ああっ! 星のことですか?」


 言われてから思い出した。


 今は夜の外。

 本物の星が見えるじゃないか。


 砂の付いている窓に顔を近づけて空を見た。


 だけどやっぱり何もない。

 真っ黒な雲が何もない草原の地面と同じように広がっている。


 「エイドは星を知らないのカ?」


 「はい。見てみたいです」


 「そんならまた今度一緒に来イ!」


 「はい!」


 今度か。

 暫くはすることないし、またすぐ行けそうだな。


 「そういえば今日はどこに行くんですか?」


 「ジズの地図にはねえ場所だから名前はない」


 「じゃあまだジズが見つけていない村ですか?」


 「村って言っても旧市街地のような廃墟に住んでるだけだけどな」


 「どうしてジズにはその廃墟の存在を知らせないんですか?」


 「今回新しく入った偵察クラスの兵士(やつら)さ、どっから来たと思う?」


 「ジズが知ってる村からですか?」


 「元を辿ればな。実際は生活区の中から集めた」


 「集まるんですね」


 「兵士になれば良いものが食えるし生活区にいるその家族にもわずかながら報酬が渡る。戦いたくない奴でも来るんだよ」


 「半強制ダ!」


 それまで助手席で黙っていたチャップさんが言った。


 怒っている顔は正面を向いたまま。誰に向けてそう言ったのかは分からない。


 「だからジズに、今から行く村のことを知らせたらそいつらもみんな兵士になっちまう」


 「けど、話を聞いてると外でいるよりは生活区。そして生活区よりは兵士になった方が良いんじゃないですか?」


 半強制なのだとしても僕にはそれが悪いとは思えない。


 だって生活が良くなるんだ。

 外でポルムやドミーに怯えて食べ物に困っている人が、僕らのような生活ができるようになるんだから良いじゃないか。


 戦いたくないなら積極的に戦いに参加しなければ──


 「あいつらはお前と違って幻獣の力(アース)を持ってない。飴だって使えても2つが限界。銃の腕前は素人。そんな奴らが使い捨ての機械(ロボット)のように命令されて最前線に送られる。どれだけ残ると思うよ」


 そんなことが起きているなんて知らなかった。

 知っていたらさっきみたいに軽い気持ちで言ったりしなかった。


 その人たちは戦うしかないんだ。

 でも戦えるうような人たちじゃない。


 そんな人たちがドミーに勝てるわけがない。


 「えっと~」


 「言わなくて良い。全滅だ」


 「おいドド! それは言い過ぎダ!」


 「そうだな。また俺が1人で生き残るわな」


 「そういうわけじゃ──」


 白いエプロンを付けた男が隣の長髪の彼を再度怒鳴ろうとした時、揺れていた車が停止した。


 「着いたぞチャップ。仕事だ」

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