38話 ニューポルム①
38話 ニューポルム①
────対ポルム組織ジズ領土内 草原
青い制服と緑の制服の青年達の後ろには、赤い制服を着た少年たちが歩いている。
カインはその3色の列の最後尾におり、歩くペースが落ちていた。
それは疲れているというよりも退屈しているという感じだった。
現に彼は息も切らしておらず背中も伸びている。
「そういえばピキは結局置いてきたのね」
「はい。お世話はダクさんがやってくれています」
連れて行こうか迷ったピキだったが、僕にはピキを1人で守れる自信がなかった。
それに何としてでも生きて帰る理由として、ジズに置いて行った方が良いとも思った。
「バ~モン教官。まだ着かないんすか~?」
「カイン・ビレント。あの世に着きたくなければ武器を構えろ」
その一言で一瞬で彼は両手を用意した。
他の者も同じく武器を構える。
彼らの視線の先にいたのは頭、胴体、脚に紫色の斑点模様がある馬。
馬と言ったがその目は草を食べる生物ではなく、血を欲する獣のような目。いや、狂った白目。
「シマウマのドミー。たった1体か」
ターゲットを見て気を抜いたのはウインだった。
拳を腰についたその男にバモンはすかさず大袈裟な声で注意をする。
「警戒しろウイン!」
「アースオブ──」
「待ってエイド!」
刀を抜こうとしたその手は少女の両手に抑えられた。
彼女が止めたのには理由があった。
それはそのドミーがいつもとは違ったからである。
「逃がすかよっ!」
「待てウイン! 追うな!」
走り出していた彼は後ろからの一言で止まり、元の位置にまで歩いて戻ってきた。
不満を顔に出しながらも、声だけは機嫌を良くをした。
「なんで止めたのさバモン」
「あのドミーはなぜ俺たちから逃げたと思う?」
その質問は全員の思考を誘導した。
(なんでだろう。なんで逃げたんだ? もしかして本物のシマウマだったとか?)
少年も少女も考えていた。
けれど今はそうするべきではないのを唯一、考えていないウインは言いたかった。
「おかしいとしても、目の前のドミーを駆除しない理由はないだろ?」
「……そうだな。念のために各自飴を1つ舐めておけ。アースはまだ使うな」
「了解!」
それぞれが口に飴を含むと武器を手に取りシマウマが逃げた方向へ一斉に走り出す。
飴による肉体強化で彼らは普通の人間ではなくなった。
彼らは逃げた獣にすぐに追いつくと思っていた。
だが彼らが飴を舐め終わった後も見えてくる景色は乾いた大地に枯れた草、照りつける太陽だけである。
走り出したはずの彼らはいつの間にか再び歩いていた。
「ここってもう領土外ですかね?」
「そうそう。いつドミーやポルムが現れてもおかしくないぞ~」
「ウインさんはどうして嬉しそうなんですか」
「いました! 2時の方向です!」
突如として草原に響いた少女の声で3色の服が同じ方向を見る。
しかしそこにはシマウマの姿はなく、遠くの方に黒い山のようなシルエットが存在していた。
「何か見えますね」
「領土外は昔、街だったところがあるから大きな建物の残骸が残っているんだよ」
「それがあの山っすか」
「じゃあもしかしたら生存者が!」
「いないわよ」
高まった気分で全員の顔を見たエイドだったが、ニアースの一言以外に反応はない。
その一言は周りがフォローできないほど即答で冷たい態度。
だがいつも通り彼女は本当のことを言っただけで悪気はない。
とはいえそう言われたエイドが気になったバモンは彼の背中を2回、ホコリを払うように叩いた。
「エイド。今はドミーだけに集中しろ」
「了解です!」
エイドが先ほどよりも気のこもった返事をすると他の者もそれにつられた。