番外編 僕の幸せな〇〇②
番外編 僕の幸せな〇〇②
初めてジジスの異常性に気がついたのはドミーに襲撃された夜のことだった。
倒しても倒しても闇の中から次々に現れるドミーに死を覚悟した。
気が付いたら「コペルトさん!」と俺を呼んでいたジシスの声はいなくなり、ドミーの奇声しか聞こえてこなかった。
ジシスが死んだと思っていた。だが違った。
俺が何もしなくてもドミーが苦しがる奇声が聞こえるのだ。
戦いが終わり奇声が消えた後に聞こえたのは「ふはは」というジシスの笑い声だった。
「見てみてコペルトさん!」
そう言って近づいてきたジシスの手は真っ赤。体中が血で染まっていた。
ジシスは俺にライオンの頭を持って見せてきた。
「何をした」と答えを分かっていながら聞いた。
どう考えてもこれはアースの力だ。
けど違った。ジシスはアースを発動していなかった。
「僕がねあいつらを叩いたら死んじゃったんだよ! 虫みたいだったんだ! 僕すごいよね!」
考えれば分かったことだ。
こいつはアースを発動する武器を持っていないのだから、発動すら出来ない。
……いや、違う。
こいつは常にアースを発動していると言っても良いのかもしれない。
だからこんな力を得ているんだ。
こいつは生きるアース──幻獣そのもの。
この子はもう人間として生きていけない。
あの時、自分がこの子供を助けたことを後悔した。
けれど俺の中に、この結果を喜んでいる俺がいた。
だってこいつは力になるからだ。こいつと俺でジズを潰せる。
そう思った俺は反ジズ組織ライコスを作り、行き場のないやつらを探し回った。
それだけでなくジズの内部の人間にも接触をした。
使える奴、武器、道具はあっという間に集まった。
******
そして俺たちは攻撃に出た。
こうも早く復讐が出来ると思っていなかった。
夢を見ているようだった。
──ああ、それは本当に夢だった。夢を見ていた。
いや、幻を見ていたのかもしれない。
ボロボロになった狼男を見てようやく俺は気が付いた。
俺のすべきことはこれじゃなかったって。
初めてジシスに会った日の気持ちを忘れていた。
ジシスの異常性に気がついてもこいつを子供だと思えば良かったんだ。
ジシスは武器じゃない。
俺が助けた人間だ。
俺と同じ紅い髪の少年が時間を稼いでくれたおかげでそれに気がつけた。
おかげで大きくなったジシスを背負って逃げることができた。
でも今のジシスを助けられる方法なんて知らない。
完全に幻獣になったら元に戻れない。
狼男から人間に戻すなら、ジシスの命をつないでいるアースを壊すしかないのだろう。
でもそれをしたらジシスは死ぬ。
だから俺にそんなことは出来ない。
考えもなしに前へ進んだ。
走っている途中背中に石が当たった気がした。
同時に背中に暖かい水がしみこんできた。
何が起きたかなんとなく察しがついた。
だから止まらなかった。
次第に狼男から人に戻って軽くなるジシスが、俺の察しが当たっていることを証明した。
「コペルトさん」
起きたばかりのようなジシスの声を聞いた時俺の足が止まった。
あと数分でジシスは死ぬ。理解していた。
でも何をすべきか分からない俺は謝っていた。
ジシスが俺を呼ばなくなってから、こいつを地面に寝かせた。
胸から血を流しボロボロになっているジシスは、まるで初めて会った時のような姿だった。
でも今度は助からない。
けど、最後にジシスが人間に戻れて良かった。
そんなジシスと話せて俺は救われた気がする。ジシス・・・。
「ありがとうジシス」
今度こそ俺がするべきことをする。
この世界で俺が何をすべきなのか考えるよ。
だからもう暫くだけお前と一緒にいさせてくれ。




