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プロローグ

 トラック、ゲームの悪役令嬢、破滅フラグ。


 たった一行で現状報告をしてみる。

 私は伯爵家の令嬢レイラ。前世の日本で遊んでいたゲームの悪役令嬢だ。

 ストーリーはよくある人柄のいい平民ヒロインがやたらモテまくるやつ。

【私】ことレイラ・ロリンズはその悪役である。対立構造は脚本の基本だね。

 私は王都貴族学院に入学し、王子の尻を追いかけ暴走。

 ヒロインをしょうもない罠にはめようとして自爆。そしてヒロインを侮辱した罪で断罪。処刑。

 ……なぜ侮辱で処刑? 追放ならわかるが処刑? やり過ぎじゃね?

 まったくゲームの世界は悪役令嬢に優しくない。

 さすがにそれは嫌なので全力でシナリオに逆らっていきたいと思う。斜め上の方向と手段で。

 さてさて、私は幼いときから優秀さを周囲に認められ天才の中の天才として世に名を轟かす……とはいかなかった。

 この世界に魔法は存在する。

 だから無双できると信じていた。実際に魔法は天才的と家庭教師には褒められた。

 だが家庭教師は詩と音楽の先生だった。

 中世ファンタジー系世界での女性の地位は限りなく低い。

 旦那の地位が女性の幸せに直結する世界なのだ。

 上流階級の女性に必要な教養は詩と音楽。

 魔法はおろか、手に職さえ下品と蔑まれるのだ。

 少なくとも私は能力を生かすチャンスは与えられなかった。

 もしこの世界で女性の社会進出が当たり前だったのなら、原作のレイラも血走った目で王子の尻は追いかけなかっただろう。

 だって第一王子って元婚約者の私を「ヒロインを侮辱した」とかいうよくわからん罪で処刑しちゃう冷酷な男よ。

 罠にはめるって言っても嫌われるように誘導する程度なのに処刑ですよ!

 一発グーパン入れる程度の罪でしょ!

 というわけで私を含む女子は観賞・贈答用なのである。

 私は贈答用には最適だった。無駄に派手できつい顔ではあるが美形である。

 贈答用として価値のあるこの顔では、両親には何を言っても相手にしてもらえなかった。

【女の子】であることを強要され、詩に歌に楽器にダンスに刺繍をひたすら練習する生活……そりゃ性格歪みますわ。

 親に領地を豊かにする話をしてもガン無視。今ではコソコソと新技術のミニチュアを作る生活である。

 なので私は現在「空想癖のある少し変わった子」というレッテルを貼られ、親の敷いたレールの上を全力で走っている。

 だが私は思うのだ。


 貴族学院にさえ行かなければいいさ


 と。

 どいつもこいつもいい気になりやがって。私がいつまでも大人しく従うと思っていたら大間違いである。

 いい気になるなよ!

 私は書斎に忍び込んで貴族学院の入学願書を勝手に廃棄。

 さらに小さなときからコツコツと贈り物を換金して貯めた貯金を持ち出す。

 そしてあらかじめ取り寄せた『王都産業学校』の願書を提出した。

 これでも前世で私は工業高校に通っていた。

 私の前世はIT科に通う女子高生……実際はプログラミングと電気機器の学科所属だった。ある程度の工業知識はある。電気工事士も持ってるのだ。……二種だけど。

 でもこの世界で必要なのは機械工学の知識だろう。専門外だけどなんとかなるんじゃないかな。たぶん。

 こうして私は本来のシナリオを捨て、王都にある『王都産業学校』に入学したのである。

 なお、原作では後半ごろに戦争が起こっていたが、そんなのは私の知ったことではない。

 国がメチャクチャになっても技術があれば食べていけるだろう。

 というわけでレッツ家出。

 私は窓から外に出て、屋根に登る。そして屋根の上で腕を組んだ。

 ふはははは! 私の時代の到来なのである。

 そのまま屋根から屋根へ飛び、屋根から飛び降り華麗に着地。

 ふふふ、悪役令嬢はボルダリングとパルクールくらいはこなすのだよ。

 こうして私は王都への乗合馬車に乗車したのである。

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― 新着の感想 ―
 初っ端ロケットスタートかなりバイタリティのある主人公で面白い。けど淡白気味なので周囲の反応とかくどくない程度深掘りしてもいいかも
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