1章 その4
「お前は今から、俺の弟子だ。」
…え?
と思い、自分が声が出ないことに気がついた。と言うより、声が出せない状態にあるとこに気がついた。俺は全身がベッドに固定され、さらに全身に包帯が巻き付けられていた。
「ビックリしたよね?急にこんなこと言われて…笑」
ショートカットの女性とは反対の方向から声がした。また、視線だけそちらに向けると、ポニーテールの美女が椅子に座ってこちらを見ていた。え?この人モデル?
「この人、ぶっきらぼうで大雑把だから、いっつもこんな感じなの…。ごめんね?」
「謝る必要は無い。この状況に適応できなければ、コイツが【進化者】になることも出来ない。」
待ってくれ、俺の事を話しているのなら、俺を置いていかないでくれ。【進化者】?弟子?何の事だ??
ここで、俺はあの声を思い出した。正確には、うろ覚えというか、聞いた気がしたというか。あの声は、俺は今後【進化者】として生きる、とか、近くに【死神】がいる、とか言っていたな…。ってことは、この2人のどちらかが【死神】…?でも【死神】ってもっと怖いモノだろ?こんなかわい…美しい女性のどちらかが【死神】だなんて……。
「でも、自己紹介もなしにそういうこと言ったら可哀想でしょ?!」
ポニーテールの女性がそう言うと、ショートカットの女性は頷き、
「確かにな、坊主、すまなかった。俺は現【死神】倉木 光織だ。よろしくな。」
と言った。光織さん…。この人が【死神】……。なんか、早速裏切られた感が俺を襲う。
「あたしは【死神】秘書の七瀬 優弥!よろしくね!」
ポニーテールの女性も自分の名前を告げた。俺はあまり芸能人に詳しくないが、七瀬 優弥という名前を聞いたことがなかった。やっぱりモデルではないらしい…。
「ところで、あなた、名前を教えて貰っていい?後、何があったのかも。」
そう言って七瀬さんが俺の包帯を外し始めた。かなり厚く巻かれていたらしい、かなり手間がかかっていた。すると突然、2人の顔が曇った。
「光織ちゃん、これって…。」
「あぁ、やっぱりな。」
何を話しているのか、さっぱりだったが、包帯がようやく取れてきたらしく、皮膚に風が当たる感覚が少ししてきた。口元から少しずつ包帯が取れていき、顔の辺りの包帯を全ての取り終えると、七瀬さんが
「話せる?大丈夫?」
と、心配した様子で聞いてきたので、「大丈夫です。」と返そうとしたが、上手く話せない。まるで声の出し方を忘れているようだ…。
「無理をしても、仕方がない。ゆっくりリハビリしていけばいいさ。」
と倉木さん。この人、案外優しいのか?
そんな失礼な事を考えていると、誰かが入ってきた。そう言えば、ここはどこなんだ?白い天井に白い壁、チラッとだがカーテンも見える。病院らしいな…。という事は、入ってきたのは、お医者さんか?
入ってきた男は無精髭を生やし、倉木さんに負けないくらいぶっきらぼうに検査結果を話し始めた。医療用語がズラズラと並んでいたが、テレビドラマでかじった程度の俺の知識では何が何だかさっぱりだった。どうやら、俺の身体は異常がないらしい。そして、お医者さんが俺の顔を見た時、お医者さんの顔が真っ青になった。看護士さんも真っ青だ。失礼な、俺の顔は確かにイケメンではないが、そんな真っ青になるほど酷くはないぞ。それとも、俺の顔、何かついてるのか?
「なっ、なぜ…?!アレからまだ3日しか……!」
アレ?アレってなんだ?そう考えていると、倉木さんがお医者さんと看護士さんを連れ出した。病室には俺と七瀬さんの二人きりになった。
暫く、静寂が続いた。普通のラブコメやラノベなら、ここで告白なんだろうが、生憎、俺は声が出せない。ん?少しなら首が動くぞ…。顔の表情筋も少しだけなら…。頑張れば、声が出せるかも…?俺は口を開け、とりあえず、"あ"と発するよう頑張ってみた。喉を開いたり閉じたり、舌を上げ下げしたり。なんとなーく思い出してきた。確か……。
「…あ゛ぁ……。」
よし!声(?)が出た!何とも情けない声だが、一歩前進だな…。なんて考えていると、七瀬さんがかなりビックリした様子で俺のことを見ているのに気がついた。急に恥ずかしくなり、照れ笑いをすると、ますますビックリして、病室を出ていってしまった。
俺は、何か悪いことをしたのだろうか?急に心配になり、俺は顔をしかめた。
どうも、修羅男です。
今回も読んでいただきありがとうございます。
連チャンです。頑張りました。
やっと、死神を出せました。女性なんですねぇ…。しかも秘書もいて、その両方が美人。羨ましいですね。氏ねばいいのに(唐突)。
取り乱してしまいました。申し訳ない笑
さぁ、ようやく話が始まった感じがしますね。これからどんどん登場人物を増やしていくので、ぜひご期待ください!
では、また次回お会いしましょう。