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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
94/140

94 救援に行きます

エレンの意思を確認した後は予定通りドゥーフ大聖堂に向かった、そして又流一だけ祈りを捧げると近くの聖職者に声を掛けた。


「すいません、少し相談があるのですが良いですか?」


今日はフェフナーは居ないようだ。


「はい、宜しいですよ。どのようなご相談でしょうか?」


「実は僕達は『始まりの魔法使い』について調べてまして、それでこちらにある遺物を見せてもらえないかと思っているんです」


「それでしたら信者の方なら誰でも見られますよ」


「はい、それは昨日聞きました。でも残念ですが僕達は信者ではありません。そこで相談なんですが、僕達は聖地の1つ『絆の地』の場所を知ってます。その場所を教えるので代わりに『始まりの魔法使い』の遺物を見せてもらえないかと思いまして」


流一は昨日フェフナーが加藤雷華の事を「御使い様」と呼んでいたので、今日は「加藤雷華」と呼ぶのを止めた、感は悪いが気遣いは出来るのである。


「なっ!本当ですか?本当に『絆の地』の場所をご存知なのですか?」


「はい」


それを聞いた聖職者はしばらく考え込んでいたが、より上位の聖職者に相談することにした。

聖地の情報などたとえ嘘であったとしても放置出来るものではない、だからといって安易に判断出来る立場でもなかった、だからこそ判断出来る者に相談するのだ。


「わかりました、ではこちらへお越し下さい」


信者でも無いハンター風の5人、普通であれば大聖堂の奥になど決して入れたりはしない、しかし今回は『ライカ教』関係者以外絶対に聞かせられない話しなので特例として大聖堂の奥へ通す事にした。


そして流一達は、豪華では無いが落ち着いた雰囲気の応接室へと通された。


「こちらでしばらくお待ちください」


聖職者はそう言って上位の聖職者を呼びに行った、そしてしばらくして豪華な神官服を身に纏った1人の男を連れて戻ってきた。


「お待たせしました、司教枢機卿のカールトンと言います。話しはノイマン司教から伺いました。そこで、もう少し詳しくお聞きしたいのですが宜しいですか?」


『ライカ教』の階級は教皇をトップに司教枢機卿と司祭枢機卿が各2名、その下は定員無しで助祭枢機卿、大司教、司教、司祭、教師、伝道師と続く。

ノイマンは内容の重要度に鑑みナンバー2を呼んできたのだ、もっとも2日前に聞いた『教皇の病気引退』が事実であれば実質ナンバー1ではある。


「はい、僕はハンターパーティー『デザートイーグル』リーダーの流一と言います。『契約の地』の情報についてはこちらの条件さえ飲んでもらえるならお教えします」


「そちらの条件は御使い様の残してくださった遺物を見せて欲しいというものでしたね。それについては情報が正確なら私司教枢機卿カールトンの名において了承致しましょう」


「わかりました、ではお教えします。その場所はベルトロン王国とテュルク王国に跨がるカルデラの中にある山の麓です」


「カルデラとは何ですか?」


この世界は地質学なども発展していないため「カルデラ」と言う言葉が何かわかってもらえなかった、だからセラフィムも「カルデラ」では無く「火山の噴火で出来た窪地」と言っていたのだ。


「カルデラとは火山の噴火で出来た窪地です」


「そんな場所なんて有るのですか?」


「有ります、四方を山に囲まれているので下に降りるのは苦労しますが、そこに有るドラゴン連山と呼ばれる3つの山の内の真ん中の山です」


「ドラゴン連山・・・そう言えば・・・わかりました。では早急に確認の者を向かわせましょう」


カールトンは『契約の地』の手掛かりとして教会幹部しか知らない資料の1つに「3つの山の真ん中」という記述が有った事を思い出した、これは信者は勿論聖職者でさえ一部の者しか知らない事である、それを目の前にいるハンター達が知る訳も無い。

なのでその事を言い当てただけでなくドラゴン連山と言う名前も知っていた事で信用出来るかも知れないと思ったのだ。


「ところで、その場所が真に聖地で有ると証明する物は有りますか?」


「大きな岩に『始まりの魔法使い』とドラゴンの友情の印が刻まれています」


「それはあなた達が刻んだものでは無いのですか?」


「それは有りません、もし疑うようなら「鑑定」の使える魔法使いを同行させてはどうでしょう?少なくとも最近刻まれた印では無い事は確認出来るでしょう」


「なるほど、そうですね。そうそうドラゴンの名前とかは知っていますか?」


「知ってます、セラフィムです。『始まりの魔法使い』が名付けたそうです」


「そうですか、ありがとうございました」


カールトンは顔には出さなかったがさらに驚いた、何故ならドラゴンの名前は代々教皇に就任した者だけにしか伝えられない聖遺物にしか記述されていないからだ。

カールトン自身もドラゴンの名前を知ったのはつい最近なのだ、現教皇の引退に伴い次期教皇に就任が決まった後、引き継ぎの為に受け取った聖遺物の中身を確認していた時だ。

なので『絆の地』の情報は真実だろうと確信した、しかしだからこそその事を知っている事に疑問を持った。


「ところで、その情報はどこで得たものでしょうか?」


「それは教えられません」


カールトンは流一の目を真正面から見つめた、流一もカールトンの目を見つめ返した。

しばしの沈黙の後カールトンはこれ以上聞く事を諦めた、流一は信用出来ると確信したからだ。

信用出来る人間だからこそ情報源は決して漏らしたりしないと思ったのだ。


「わかりました、ではその事についてはこれで終わりにしましょう。それでは『御使い様の遺物』の閲覧については『絆の地』の確認が取れてからになりますが宜しいですか?」


「もちろんです。ただ確認にはどれ位かかりそうですか?」


「そうですね、これから早急に人選をして出発したとしても2ヶ月ほどはかかると思います」


「わかりました、ではまた2ヶ月後に来ます」


「わかりました、2ヶ月後にお待ち致しております」


交渉も成立したので『デザートイーグル』はドゥーフ大聖堂を後にした。


次に行くのは商業ギルドだ、そこには牧場の出張所のような場所があるので馬達を預けるのだ。

この世界では大きな町の近くには必ずといって良いほど牧場がある、主な業務は商人の馬車用の馬を預かったり、年老いた馬を引き取ったり、新たな馬を斡旋したりなどだ。

なのでいちいち商人が牧場に赴かなくても良いように商業ギルドに出張所を設けている、そこで予約すれば時間のロス無く馬を預けたり引き取ったりしてくれる、商人に限らず時間は貴重なのだ。


「すいません、馬を預けたいのですが」


「はい、1日120マニ、1ヶ月ですと割引が付いて3500マニですが何日お預かりしますか?」


受付は顔とお腹周りがややふっくらとした中年の女性だった。


「5頭を2ヶ月でお願いします」


「それでしたら合計で35000マニですね。料金は先払いとなりますが宜しいですか?」


「それで良いです」


「後確認ですが、もし契約期間より早く来られても料金はお返し致しません。また逆に契約期間内に受け取りに来られなかった場合は1ヶ月だけ延長してお預かり致します、その際の料金は違約金含め1日1頭150マニとなります。それでも取りに来られなかった場合は馬の所有権を家の牧場がいただきます。宜しいですね?」


「わかりました」


流一はそう言うと背負っていたバックパックからお金を出して支払った、流石に商業ギルドで収納魔法を見せるわけにはいかないので事前に準備していたのだ。


「では馬の確認をします」


料金の支払いが終わると受付の女性と一緒に馬の所まで戻った、すると受付の女性はそれぞれの馬の首にペンダントのような物をかけた、持ち主を間違えないための目印だ。

そして店に戻ると馬にかけた物と同じ模様の刻まれた木の札を渡された。


「これが預かり証になります。受け取りに来た時はこの札を提示して下さい」


「では宜しくお願いします」


流一達は預かり証を受け取ると急いで王都バルカンを出た、そして身体強化を使い通常徒歩で半日ほどかかる森の入り口まで行きセラフィムを呼び出した。


「セラフィムさん、お願いします」


「「宜しくお願いします」」


流一に続きエレンとセリーヌもセラフィムに頭を下げた。


「うむ」


セラフィムはそう一言だけ返事をすると近くの木の根元に自分の鱗を隠した。

セラフィムの転移能力は自分の鱗を使って行うため、問題解決後にブレイン王国まで転移で来れるようにしたのだ。


「それではどこでもよいから我に掴まれ」


そう言われると、みんなそれぞれの場所に捕まった。


「用意は出来たか?では行くぞ」


セラフィムがそう言うと全員が白い霧に覆われ、霧が晴れた時にはフランドル王国宮殿の大広間に立っていた。


「状況を考えるとウィルヘルムは会議室にいると考えて良いでしょうね」


エレンはそう言うと会議室に向けて歩き出した、他の皆んなはそのエレンの後に続く。

王宮内は警護の兵は少ない、なので会議室に行くまでに出会ったのはメイド等使用人ばかりだった事もあり足止めされる事なくすんなり行けた。


バーーーン


会議室のドアを勢いよく開けるエレン、その場に居た者全員が此方を向いた。


「何者だお前らは」


面識は無いが、軍人らしい雰囲気の男が誰何した。


「あ、あなた様方は・・・・・」


見覚えのある者は一瞬で驚きと恐怖に硬直した、そうサイラスの首を刎ねた時大広間に居た面々だ、その者達はセラフィムの正体も知っているので仕方ない。


「エレノア様・・・どうして、いえどうやって此処へ?」


国王なのに敬語とは情け無い限りだが、ウィルヘルムも『デザートイーグル』とセラフィムの強さを身を持って味わっているのだから仕方ない。

しかし流一達を知らない面々からすると、国王が怯えた様子で敬語で喋る相手と言う事で困惑している。


「そんな事はどうでも良いでしょ、ウィルヘルム。それより隣国が戦争の準備をしているそうじゃないの、詳しく教えなさい」


「エレノア様はこの国を助けてくれるのですか?」


「当然でしょ、この国は私とセリーヌの故郷なんだから。それにこの国を貴方に託した責任もあるしね。それから私に様付けするのは止めなさい、貴方は国王なのよ、もう少し威厳を持ちなさい」


「ありがとう、ありがとう」


ウィルヘルムは安堵の表情を浮かべて涙を流した、それだけでかなりまずい状況だったのだろうと推察出来る。

ここに来てやっと『デザートイーグル』とセラフィムを知らない者達も知っている者達の態度、特に国王の反応により理解した、この者達こそ7万8000の軍を壊滅させた化け物なのだと。


「礼は良いから早く状況を説明しなさい」


「ああそうだな、ガウェイン頼む」


説明を任されたのは軍務大臣のガウェイン侯爵だった、エレンが前国王のサイラス以外一切責任を追及しなかったのでそのまま軍務大臣を拝命していた、もっともガウェイン自身は跡取り息子が戦死した事で罰を受けているとも言えるのだが。


「それでは僭越ながら説明させていただきます・・・」


そうしてガウェインが語ったところによると、リシュリュー王国、アルバート王国、ガベン王国の3国が戦争準備をしているのは確実らしい。

そしてその目標がフランドル王国である事も、理由が『デザートイーグル』との戦争で兵士の数が激減したという事もセラフィムから聞いた通りだった。


戦争を行うに当たりアルバート王国はガベン王国と同盟を結んだが、リシュリュー王国とは同盟を結んでいない、その代わりアルバート王国とリシュリュー王国の間には不可侵条約が結ばれたらしい。

アルバート王国としてはフランドル王国と戦争をしている隙にリシュリュー王国とエムロード大王国から共闘して攻め込まれるのを警戒したのだ。


リシュリュー王国は無駄な拡大主義はとらない構えだが、アルバート王国とガベン王国がフランドル王国を倒して領土を拡大させると国力に差がつき過ぎるため参戦して領土を主張するしかない、なので共闘はしないが参戦はすると言うスタンスらしい。


そして兵力はリシュリュー王国が四万から四万五千、アルバート王国が四万五千から五万、ガベン王国が三万から三万五千、それに対しフランドル王国軍は全体で四万、王都守備隊を残す必要があるため前線に出せるのはどんなに頑張っても三万五千がやっとだ。

仮に敵兵の半数が輜重輸卒だとしてさえも倍以上の兵力差だ、『デザートイーグル』が来なければ完全に詰んでいる。


「わかりました、ではどうするのが良いと思いますか?」


現状を確認したエレンはフランドル王国の人間ではなく仲間の方に向かって聞いた。

それに対し流一が即座に意見した。


「リシュリュー王国の参戦が積極的な侵略じゃないなら説得出来ると思うんだけど」


「そうですね、私達で説得すればリシュリュー王国の参戦は回避出来そうですね」


エレンもその意見には賛成のようだ。


「出来ればアルバート王国の方も説得して欲しいんだけど」


「そうね、私もアルバート王国とフランドル王国には戦って欲しくないわ」


アメリアとユリアナはアルバート王国の出身である、戦争になれば知り合いも多く徴兵されるので戦争などして欲しくない。

ましてや今回の相手は仲間の故郷である、2人にとっても両国の開戦は絶対に避けたいところである。


「それならアルバート王国にも使者を出さないとね、と言っても誰を向かわせるか・・・」


エレンは使者の人選を考え始めた、元王族であり社交界デビューはしていないものの国内の貴族については熟知しているからこそ出来る事だ。


「とりあえずたった五千や一万で王都だけ守っても勝ち目はないんだし、四万の全軍をガベン王国の迎撃に向かわせたら良いと思うよ」


流一が再び意見した。


「お待ちください、それでは交渉が不調に終わった時のリシュリュー王国とアルバート王国に対する備えが無くなってしまいます」


「あなたは?」


「申し遅れました、私は外務大臣を拝命しておりますエルバランと申します」


「そうですか、しかし戦の常識として寡兵をさらに分割しては各個撃破されるだけで勝機は全くありませんよ」


「確かにそうかもしれませんが、全く備えが無いと言うのもいたずらに国民の不安を煽るのではないかと」


「備えはありますよ、僕たちこそがその備えです」


流一が言い切った、女性陣も胸を張っている、誰も否定しようとはしない。

聞いている方も「そんなバカな」や「出来るわけがない」などの否定意見は出せなかった、つい最近身をもってその強さを実感したばかりなのだから。

そんな中1人だけ高笑いを浮かべる者がいた、そうセラフィムだ。


「ハハハハハハハハ面白い、実に面白い。さすが流一じゃ。どれ、それなら我もこの面白いイベントに参加する事にしようか」


「参加するって、どうするんですか?」


流一が不思議そうに聞いた。


「まずガベン王国は流一の言う通り全軍で迎撃に当たれ。次にリシュリュー王国じゃが、そこには流一が説得に行け、我も共に参ろう。最後にアルバート王国は相応の地位の者を向かわせアメリア達4人が補佐として付いて行けば良かろう」


「リシュリュー王国はセラフィムさんが付いてきてくれるなら大丈夫だと思うけどアルバート王国の方はどうかな。戦争する気満々の国を相手に交渉は上手く行きますかね」


「うまく行くわけなかろう、はなから交渉でどうにか出来るなど思っておらん。4人を向かわせるのは実力の差を見せつけるためじゃ」


「最初から戦うつもりで行くんですか?」


「もちろんじゃ、戦争など兵士の斬り合い殴り合いで決着をつけるなど具の骨頂じゃ。相手の心をへし折ればそれだけで終わる」


「具体的にはどうするんですか?」


「普通に行って会談と言う名の宣戦布告をすれば良い、お前達がこの国でどんな戦いをしたかを教えた後にな。戦争を仕掛けようと思った相手から先に宣戦布告を受けるのじゃ、混乱することは間違いない。そして宣戦布告の後は心置きなく戦えば良いその場でな」


「その場でですか?」


「もちろんじゃ、戦争をしたいと言っている者こそ真っ先に殺せば良い。戦争をしたいと思っているものは戦うのが前線の兵士だけだと思っておるのじゃ、そうではないと言う事をその愚か者どもに教えてやれば良いのじゃ。もっとも授業料は己の命だがな」


「でもそれだとエレン達が敵国で孤立しませんか?」


「お主は謙虚が過ぎるようだの。孤立したところで問題はないぞ。この4人なら万の軍に囲まれても笑って生還できる実力を持っとる。それにこちらの決着が早く着けば直ぐに合流できるからの」


「成る程、じゃあエレン、セラフィムさんの言う通りで良い?」


「もちろんです。それで行きましょう」


流一、セラフィム、エレンの3人だけで方針が決定してしまった、もっともウィルヘルムには素直に従う以外の選択肢はない。

他の会議に集まっている面々も異論は無い、と言うより話の次元が違いすぎて意見さえ出せない。


そもそもリシュリュー王国の説得は確定事項、使節の派遣はまさかの宣戦布告、敵地に孤立しても万の軍隊に囲まれても笑って生還できると言うのだ、常識で物事を考える面々には異論を挟むどころかまず理解するのが難しい。


兎にも角にも翌日から早速行動を開始する事になった。


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