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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
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70 今更告白されても・・・

セラフィムに連れられ『デザートイーグル』は獣人の村へとやって来た。


「セラフィム様、なぜそいつらを・・・」


驚いて言葉をかけて来たのは流一達をドラゴンのところまで連れて行った獣人だ。


「落ち着けロボ、この者達は敵では無い。我の客人じゃ。それよりザールを呼んでくれ」


流一達をセラフィムの所まで連れて行った獣人はロボと言う名前らしい、そしてこの村の村長的な立場の獣人がザールである。

セラフィムにザールを呼ぶよう命令されたロボはかなり警戒しているようだが素直に呼びに行った。


しばらくしてロボがザールを連れて戻ってきた、ザールもやはり犬か狼の獣人っぽかった。


「これはセラフィム様、ワザワザお越し下さりありがとうございます。それで本日はどの様なご用件でしょうか?」


「うむ、今日は我の客人を連れてきた。少し皆で話しがしたいので何処か場所を用意してくれ」


「わかりました、それでは私の家へお越し下さい」


そう言うとザールはセラフィムと『デザートイーグル』を自宅へと案内した。


村は人数こそ多いが、着物はもちろん家もかなりボロボロである。

それでもザールの家だけはまだ少しはまともであった。


ザールの家に入ると早速セラフィムと『デザートイーグル』で会議が始められた、とは言え先ずはこの村の事など当たり障りの無い話題から入る。


それによると、この村はセラフィムが守護する村で後2ヶ所、全部で3ヶ所同じような村があるそうだ。

村に名前は無く村長的立場の獣人の名前で区別するらしい、つまりこの村なら『ザールの村』と言う訳だ。

それぞれの村は大体150人から200人の人口があり、全て獣人だそうだ。

そしてその話しの流れのまま調査に移って行った。


要約すると、セラフィムは約1300年前に大陸の西からこの地へやって来たらしい。

理由は雷華の死後数百年して数も多く繁殖力も強い人間が他の種族を差別し始めた事が始まりだ、それによりエルフ、ドワーフ、妖精族、有翼人が人間との関わりを断ったのをキッカケにセラフィムも人間と距離を取るためやって来たそうだ。

獣人達も一部は人間との関わりを断つため大陸の辺境へと安息の地を求めて旅立った、その中でこの地にも数百年前から住み着いたそうだ。

しかし人間は数が増えると辺境にも進出し国家を沢山作りだした、そしてその地に暮らす獣人を捕まえては奴隷とするようになっていった。

そしてこの地でも3つの村が度々奴隷狩りの被害に遭っていたが、4ヶ月前、偶然にも1人の獣人が奴隷狩りから逃げていたところセラフィムの下までやって来た。

雷華と友人だったセラフィムにとっては獣人が奴隷にされるのは見過ごす事が出来ないので助けてやった。

そしてその獣人から村の事を聞いて保護するようになったと言う事だ。


「成る程、そうだったんですね。ではその後やって来たハンターはどうなったんですか?」


流一は山に入れなくなった事情はわかったので今度は先発のハンターについて聞いた。


「最初の2組は攻撃して来たのでな、殺した」


淡々と答えるセラフィム、とは言え攻撃されたのならそれも仕方ないのだろう。


「3組目と4組目は別の村で捕らえてある、攻撃はされなかったのでな。しかし正直扱いに困っておったのじゃ」


トミー少年の父は4組目なので生きているらしかった。


「では僕達が連れて帰っても良いですか?そのかわり二度と奴隷狩りなどが来ないように言っておきます」


「わかった、では明日この村へ連れて来るようにしよう」


セラフィムは二つ返事で了承すると、獣人に明日ハンターを連れて来るように命令した。


これで依頼は終了である、後は生き残りのハンターを連れて帰ってギルドに報告するだけである。

重要なのは奴隷狩りが二度と来ないようにする事だが、ドラゴンが守護している事実を報せればそれもそう難しくは無いだろう。


「では今日はこの村に留まるが良い」


「はいそうさせてもらいます」


その後は雑談となった、もっとも流一にとっては『始まりの魔法使い』の調査という側面もあるのだが。


その中で『始まりの魔法使い』はこの世界の事や帰りの方法について本にして残している事、その本は大陸の西方にある国の内の何処かが保管している事がわかった。


「じゃあこの依頼が終わったら次は西を目指そうか?」


流一がそう告げるとアメリアとユリアナは納得した顔だったが、セリーヌとエレンは何か複雑な顔をしていた。


「エレン、セリーヌ、どうしたの?俺何か変な事言った?」


流一の言葉にしばらく考えたエレンが何かを決意したように喋りだした。


「皆んなに伝えたい事があるんだけど。実は私の本名はエレノア=ベスティア=フォン=フランドルと言って、フランドル王国の元王女なの」


「「「えっ!」」」


これには流一はもちろんアメリアとユリアナも驚いた。


「じゃあセリーヌは?」


「私は元エレノア様の護衛騎士をしていましたセリーヌ=フォン=ジークムントと言います」


「「「ええーーー」」」


(((今更そんな告白されても・・・・・)))


3人とも驚きと困惑の入り混じった複雑な表情になってしまった、それを見たセリーヌとエレンも固まっている。


期せずして訪れた静寂を破ったのはセラフィムだった。


「なんじゃ、お前達は何も知らずにパーティーを組んでおったのか?」


「ま、まあ、今まで知らなくても問題無かったですし」


流一が最初に起動した。


「それより()王女と言うのはどういう事じゃ?」


セラフィムの質問に対し、フランドル王国の政変についてセリーヌが説明した。


「成る程の、大陸の西に行くにはフランドル王国を経由する事になるから困っておるのか」


フランドル王国を迂回して大陸の西に行くのはかなり難しいと言う事実がある。

フランドル王国の南西はフィールマ大森林が広がりその南側は広大な魔物領域が海岸まで続いている。

そして北は氷河まで続くウーラル山脈が連なっており越えて行くのはかなりの労力がいる、特に馬で移動する『デザートイーグル』には難しいのだ。

結局この日は今後の方針について結論が出なかった。


その日の夜、流一はヨネ子にメールした、そしてこれまでの経緯を詳しく伝えると解決策を尋ねた。


【要するにエレンとセリーヌを連れたままフランドル王国を越えれば良いんでしょ。だったら普通に行きなさいよ】


「いや、だからそれが出来ないから相談してるんじゃないか」


【それは流一が出来ないと思ってるだけでしょ。フランドル王国の貴族でもエレンの顔を知ってる人間が少ないならそうそう気付かれないわよ。それに、流一はエレンをずっと逃亡者のままにしておきたいの?】


「そんな訳無いじゃないか。当然、誰にもどんな勢力にも気兼ねせず過ごせるようになれれば良いと思ってるにきまってるよ」


【なら堂々と行きなさい。もし仮に見つかっても戦えば良いだけじゃない、あなた達を捕らえる事なんて出来はしないわよ】


「そんな他人事みたいに。相手は国だよ、人海戦術で来られたら流石に逃げおおせないよ」


【情け無いわね。良い?あなた達はフランドル王国では何処の街や村にも寄る必要は無いのよ、しかも移動は馬で高速だから王国内に居る日数も少ないわ。つまりフランドル王国の人と会う事がほとんど無いのよ、それで見つかるって相当運が悪いわよ】


「確かにそうだけど・・・でももし運が悪かったら?それこそ軍を相手に戦う事になるかも知れないよ」


【一応言っとくけど、あなた達の戦闘力なら3・4万人の軍隊相手でも勝てるわよ。それにフランドル王国内では流一とエレンが索敵魔法を交代で使い続けていれば罠や奇襲も防げるしね】


「えっっ?そうなの?もしかしてこの前練習した魔法の威力で?」


【そうよ、流一は軍オタだから米軍の爆風爆弾は知ってるでしょ?】


「もちろん知ってるよ!ってか、もしかしてカタストロフの威力って・・・」


【そのもしかしてよ。テンペストやインフェルノもそこまでの威力は無いけどかなり強力よ】


「そんな・・・・・」


もう言葉も無い流一だった、しかし落胆した訳では無い、大陸の西に行く希望を持ち始めたのだ。

しかしそこへヨネ子の爆弾が投下される。


【私としては流一達にはフランドル王国軍に見つかって戦ってほしいとは思うけどね】


「なんでだよ!」


流石に戦うのは自分たちなのだ、ヨネ子の言葉が無責任に聞こえて怒ってしまった。


【大陸の西に行く時に見つからなかったとしても、今度はその帰りにまた同じ悩みに行き着くでしょ】


「確かにアメリアとユリアナはフランドル王国の東側の国出身だからそうなるね」


【その時には流一は居ないかも知れないのよ、そうなればカタストロフはもちろんテンペストやインフェルノさえ使えない状態でフランドル王国を越える事になるわよ】


「・・・あっ!そうか。俺は帰る方法がわかったらそのままこっちに戻らないかも知れないんだ」


【そうよ。だから行きに決着を付けておいた方が結果的にみんなのためになるのよ】


それを聞いて流一は悩んだ、見つからないようにしたい、でもそれでは帰りが困る、でも戦闘はなるべく避けたい。

しばらく考えていると後ろから声をかけられた。


「誰かと話しておるのか?」


声の主はセラフィムであった。


「ふむ、もしかして今の話し声のような物が『知恵の魔法』とやらか?」


「ええ、そうです。大陸の西に行くのはどうするかを聞いていたんです」


流一は慌てる事もなく答えた。


「そうか、で、良い知恵は授かったかな?」


「ええまあ、良いと言えるかどうかわかりませんが」


そう言ってヨネ子に言われた事をセラフィムにも教えた。


【流一、誰か側にいるの?】


返事が遅い事から何かを察したヨネ子がメールしてきた。

誰かに相談しているのかも知れないと思ったのだ、そしてそれは正しかった。


そのメールを見た流一はしばらく考えた後メールを返した。


「今セラフィムさんに相談してる」


もちろんヨネ子は最初の報告でセラフィムがドラゴンだと知っている。

その上で自分もドラゴンと話してみたいと思った、好奇心からではあるが現地の人(今は人型なのでこう呼んでも良いだろう)からも情報収集したいと思ったのだ。


【ちょっとセラフィムさんと代わって】


「えっ?ちょっ!なんで?」


困惑する流一、今まで『知恵の魔法』は自分しか使えないと散々言ってきたのだから当然の反応ではある。


【いいから代わりなさい】


強い口調のメールを見て渋々セラフィムにスマホを渡す、そして『知恵の魔法』の真実を教える。


「あの、セラフィムさん、実は『知恵の魔法』って言うのは本当は魔法じゃ無くて元の世界にいる妹とメールで話す事なんです」


「何?お前のやって来た世界の人間と話せるのか?」


「そうです、それで、妹がセラフィムさんに代わってほしいって言ってまして」


「本当か!それは願っても無い。で、これはどうやって使うのじゃ?」


そう言いながら恐る恐るスマホを受け取るセラフィム。

流一はセラフィムに丁寧に使い方を教えた。


「ではここに向かって喋れば良いのじゃな。マーガレットとやら、我がセラフィムじゃ」


【初めましてセラフィムさん。私が流一の妹のマーガレットよ】


「おお、本当に通じておる。初めましてじゃな」


嬉々として話し出したセラフィム、それを見た流一は他の者達にその現場を見られないよう警戒していた。


しばらくしてメールが終わるとセラフィムがスマホを返してきた、その顔は初めての体験が楽しくて仕方のない子供のような笑顔になっている。


「待たせたな、良い経験をさせてもらった。話しも終わったのでこれを返そう」


流一はスマホを受け取ると早速ヨネ子にメールした。


「これで良かった?」


【ええ、十分よ。私からもあなた達の事をセラフィムさんにお願いしておいたわ】


「そう、ありがとう。じゃあまた」


そしてメールを終えるのを確認したセラフィムは流一に1つの魔道具を渡した。


「これを持って行け」


「これは何ですか?」


「これはそのスマホとやらと同じ通信の魔道具じゃ。ただしこれは雷華が我のウロコを使って作った物で、我との交信しか出来ぬがな」


「そうなんですか?ではこれを持っていればいつでもセラフィムさんと話しが出来ると?」


「そうじゃ、元々は雷華が会いに来る時などに連絡がつくようにと作った物なんじゃ。彼奴が死んでからは使う者も居らぬ故回収しておいたのじゃ」


「そうなんですね、では有り難く頂戴します」


そう言ってスマホよりはふた回りほど大きな龍のウロコを受け取った。


そして2人でザールの家へと帰って行った。


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