6 第一種接近遭遇1
ちょっと時間が無くて短くなってしまいました。
ゴメンなさい。
『ガタ、ガタガタッ』
翌朝、早朝にもかかわらず小屋の戸が開いた。
そして聞こえる女の子の声
「えっ!なんで?」
「アメリア、どうかしたの?」
「この小屋の中に魔物がいるの」
「なんですって!どうしてここに?」
女の子2人の困惑した会話が聞こえる。
「2人で倒すわよ、初めて見る魔物だけど私達ならやれるわ」
「分かったわ、すぐ行く」
会話が物騒な方向へと進んでしまった。
それを聞いて慌てる流一。
「ちょっ!ちょっと待って!俺は魔物じゃないよ」
この世界には寝袋というものは存在していなかった。
なので形といい大きさといい正に大きな芋虫である、女の子達が魔物と間違っても仕方がない、と言うより間違って当然の見た目だった。
「ちょっとユリアナ、この魔物人間の言葉を喋るわ」
「すごいわねアメリア、だったら生け捕りにする?見世物小屋が高く買ってくれるかもしれないわよ」
アメリアは剣を構えて流一を睨み付けている、そこへユリアナがさらに物騒な事を言いながら小屋の中へ入って来て弓を構えた。
「だから俺は人間だって!」
そう言って流一は慌てて寝袋から出た。
「キャー!って、あら?あなた本当に人間なの?ならなんで人の小屋で魔物のマネなんてしてたのよ」
何を思っての『キャー』だったのか?と言う疑問は置いておいて、さっきまでの殺気が嘘のように冷静になるアメリア。
ユリアナも驚いたようだが声は出さない。
「これは魔物のマネじゃなくて、寝袋という野営の時に使う布団なんだ」
「寝袋なんてそんな物今まで見たことも聞いたことも無いわ。それよりあなた何者なの?なぜ私達の小屋にいるの?」
アメリアとユリアナにとって寝袋が魔物の着ぐるみだろうと布団だろうと関係ない、自分たちの小屋に変な格好の不審人物が居る事の方が重要なのだ。
なので剣と弓を構えたまま流一の事を警戒しつつ聞いて来た。
「俺の名前は流一、米村流一って言うんだ」
流一はもちろん抵抗する気は無い、だが武器を構えたまま明らかに警戒されている事は感じる。
なのでこの世界でも通じるかは分からないが両手を挙げて降伏の意思表示をするとともに、不審者と思われないように出来る限りの笑顔で答えようとするが少し引き攣った笑いになっている。
「そう、流一ね。私はアメリア、この子はユリアナよ。で、流一さんはなぜここで寝てたのかしら?」
少し怒り気味の雰囲気だが無愛想ではあっても自己紹介はしてくれた、どうやら不審人物では無いと分かってくれたようだ、それが笑顔のおかげかどうかは定かでは無いが。
しかしここで流一は真実を話して良いものかどうか迷ってしまった。
そもそもいきなり異世界から来たと言って信じてもらえるとは思えない、言えばまた不審者と思われかねない。
しかしこの世界の知識を得るためにはこの世界の人間と関わらなければならない、何より地球に帰る目処が立つまで1人で居続けるのは不可能だ、そうなれば嘘をつき続けるのは流一には荷が重い。
別に真実を打ち明けて協力を仰ぐのがこの二人である必要はない、しかし人が変わっても同じ悩みに行き着く。
いつかは真実を話さなければならないのなら今この2人でも良いのでは?と。
しばし考えた後、覚悟を決めて真実を話す事にした。
割と長い時間考えていたのだが、その間アメリアとユリアナは剣と弓を構えたまま警戒を解く事なく返事を待ち続けていた。
この2人は割と気が長いのかもしれない。
「実は俺はこことは違う世界からこの世界の森の中に飛ばされて来たんだ。それで森を彷徨っていた時たまたまこの小屋を見つけたから一晩の宿を借りたんだ」
「こことは違う世界?飛ばされた?あなたは外国人ってこと?」
流一としては割とストレートに表現したつもりだが、2人は常識の範囲内で捉えたため良く理解出来ていない。
「いや、こことは世界そのものが違う。ここにもこんな表現が有るかはわからないけど異世界ってやつだ」
「異世界?それなら物語で聞いたことがあるわ。でもそれは神様の世界とか死者の世界よね、あなたは神様の世界から来たとでも言うの?」
とりあえず異世界という概念は存在するようだが偏っている。
「神様の世界から来たなんて言わないけどイメージはそんな感じかな、そんなこことは違う世界の1つに君たちとは違う人間の世界があって俺はそこから来たんだ」
「1つって何?他にも沢山あるの?」
「有るよ」
自信満々に答える流一、地球ではパラレルワールドは理論の1つであり、知っている者は多いが現実にあるかどうかは確認出来ていない。
しかし流一だけは現実にパラレルワールドの世界に来ているので理論が正しかったと確認出来たからこその自信である。
「確かにあなたの着ているものは見たこと無いものだし、さっきの寝袋?だったかしらアレも始めて見るものよ。でもそれは私が知らないだけでこの世界の物では無いと言う事にはならないわ」
元の世界もこの世界もやはり人間は同じようなものだ、常識や先入観といったフィルターを通らない物は理解しようとしない。
逆にフィルターを通すために勝手に形を歪めて理解しようとするものである。
『知らない物だからといってこの世界の物では無いとは限らない』そう言われてしまえば他の何かを証明のために出したとしても意味がない。
その一言で流一は異世界人を証明する術を失ってしまったのだ。
しかしそれでも嘘をつくよりは、今はまだ信じてくれないという方がずっと良い。
基本的に嘘は時間が経つほどバレるリスクが上がるが、真実は時間が経つほど証明されて行くものだから。
あくまでも『基本的には』だが。
それに今の流一にとってはこの世界を知る事の方がずっと重要なのだ。
「信じてもらえないのは残念だけど今は良いよ。それより俺はこの世界の事を何一つ知らないんだ、だから二人にこの世界の事を教えて欲しい。その代わり俺に出来る事なら何でもするから」
アメリアとユリアナは未だに武器を構えているため、手を挙げたまま頭だけ下げてお願いした。
するとやっと2人は武器を下ろして警戒を解いてくれた、そして返事をする。
「「イヤ」」
即答である、しかも綺麗にハモって。