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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
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54 護衛(?)終了

4日目の朝、前日和んだ事もあり全員に流一の持つパンと紅茶を分けてあげた、いや売った・・・高額で。


さすがに全員では量が多いので仕方ない、そもそも商品の価格は需要と供給のバランスで決まる、街中と同じ値段の訳はないし高いと思うなら買わ無ければ良いだけだ。

ともあれ値段で争う事も無く無事(?)に食事は終了して9時過ぎに出発した。


今日は2つの大きな魔物領域の間を通るコースであり国境越えの日でもある。

進行方向右側は約3キロメートル先から約17キロメートルに渡ってリシュリュー王国側の魔物領域が続いている。

進行方向左側は約14キロメートル先から約20キロに渡ってエムロード大王国の魔物領域が続いている。


特に2つの魔物領域に挟まれる事となる14キロメートル地点からの6キロメートルが最大の難所だ。

挟まれるとは言っても左右の魔物領域の間は300メートルほど空いており道はその中央を通るように出来ているのできちんと注意していれば魔物の発見は難しくはない、あくまでも(発見は)であるが。

もっとも『デザートイーグル』は流一かエレンが索敵魔法を使うのであまり関係は無い。


そして荷物を満載した商隊の馬車がその危険地帯を通り抜けて反対側の安全地帯まで行くのには大体7時間前後かかるのが普通だ。


ただ、今回はもう少し早く抜ける予定なので、通常より遅い9時過ぎ出発となった。

早く抜ける理由は『デザートイーグル』である。


通常の商隊は護衛が警戒しながら徒歩で進むため遅い、しかし今回は通常徒歩で進む護衛が馬に乗っている上に索敵魔法のお陰でゆっくり警戒しながら進む必要が無いからだ、そのため今回は何も無ければ6時間かからずに抜ける予定だ。


因みに流一達の調べたこのコースの魔物とのエンカウント率は約40パーセント、大きな魔物領域に挟まれているとは言っても魔物領域外なので思ったより高く無い。

さらにその内の70パーセントはCランク以下の魔物とのエンカウントである。

つまりBランク以上の魔物と出会う確率は10回に一回ほどであり、さらにBランクであればCランクのハンターパーティーでも十分討伐可能なので商隊が引き返したり壊滅したりという被害がほとんどない。

それが危険地帯でありながら商隊が往来できる理由だ。


そうこうしている内に商隊は2つの魔物領域に挟まれた部分に差し掛かった、さすがにここはもっとも警戒しないといけない場所なので流一とエレンの2人で索敵を行いながら進む事にした。


そして魔物領域に挟まれた部分を三分の一ほど進んだところで魔物の気配を察知した、しかも左右の魔物領域両方から猿の魔物の群れに狙われている。


猿の魔物はCランクだが10頭以上の群れの場合Bランクになる、それが左側の魔物領域は12頭、右側の魔物領域は15頭の群れで狙っているようだ。


「この先で猿の魔物の群れが待ち受けています」


商隊の進行を一度止めて流一が全体リーダーのベリルに報告した。


「何頭だ?」


「左の魔物領域に12、右の魔物領域に15」


「なっ!10頭以上が2組だと」


ベリルは少し考えてから引き返す事にした、普通のBランクの魔物なら2頭でもCランクハンターが3パーティーなら討伐は無理では無い。

しかし群れだと負ける事は無くても殲滅前に馬車が襲われて被害を受ける可能性が高いからだ。

そしてその旨を商人さんに告げた。


しかしそこへ流一が口を挟む。


「あの、討伐しませんか?」


「聞いていなかったのか?いくら魔物を討伐しても馬車や商人さん達に被害が出ては意味がないんだぞ」


「それって商隊が襲われたらですよね。商隊の護衛に1パーティー残して後の2パーティーが二手に分かれて討伐に行けば良いんじゃ無いですか?幸いその猿の魔物2組以外には魔物の反応はありませんし」


「無理だ!お前達は魔物の場所がわかるんだろうが俺達には分からん。俺達の向かった群れが回り込んで商隊を襲ってくるかもしれんからな」


「それなら大丈夫です。エレンも索敵魔法は使えるので俺はあなた達に付いて行きますから」


「本当か?いやお前達はそれで良いのか?お前が抜けて彼女たちだけで猿の魔物の群れと戦えるのか?」


「もちろんです、あの娘達なら15頭の方に行かせても汗もかかずに帰って来ると思いますよ」


「・・・・・そんなに強いのか?」


「もちろんです」


半信半疑のベリルに余裕で答える流一、もはやどちらがリーダーかわからない。


「なら俺達『鮮血の誓い』とお前で右側15頭の方、『デザートイーグル』の君以外の4人で左側12頭の方を討伐に向かう、『蒼穹の狩人』はここで商隊の護衛をするという作戦で良いか?」


さすがにベリルにもプライドはある、いくら余裕で勝てるとは言われてもフルパーティープラス1人の4人パーティーがフルパーティーマイナス1人の4人パーティーより少ない敵を相手にするのは納得出来ない、特に自分は全体のリーダーでもあるのだから。


「わかりました、じゃあそれで行きましょう」


作戦も決まり全員に作戦を告げた、『蒼穹の狩人』は戦いに参加出来ず残念そうだが仕方ない。


「じゃあ皆んな、今回は最初から身体強化で頼んだよ」


「了解、なるべく早く帰って来て商隊の護衛に着くわ」


流一の言葉にアメリアが答えて別れた。


そして『鮮血の誓い』と共に流一が出発する、目的地は右前方500メートル先の魔物領域辺縁部。

索敵魔法を使いながらなので走って行く、猿の魔物はまだそこにいる。

普通なら魔物の方も襲って来るが、群れで行動する魔物の中でも猿の魔物のように待ち伏せ作戦を使う魔物はあまり動かないからだ。


流一は『鮮血の誓い』の後ろから方向の指示を出している、もちろん先制の魔法で猿の魔物の出足を挫くためだ。


そして魔物領域の直前まで来ると、


「上から来ます、気を付けて。アイスジャベリン」


『鮮血の誓い』に指示を出すと魔法を放った。


「「「「「ギャギャー」」」」」


飛びかかる準備をしていた猿の魔物が悲鳴をあげて、その内の2頭が木から落ちて来た。

ベリル達がそれを見逃すはずはない、落ちて来た2頭はすぐに殺された。


それを見たであろう猿の魔物達は一斉に襲いかかって来た、その数10頭。

3頭はアイスジャベリンが効いているのだろう、タイミングがズレたようだ。


猿の魔物は動きが早い上に数も多い、伊達に10頭以上の群れがBランクに指定されているわけではない。


ベリル、カーライル、チャックの3人もCランクのパーティーとは言え負けてはいない、スピードでは負けていてもBランクのベリルを中心に良く戦っている。


流一は付け焼き刃のパーティー戦など考えず日本刀で遊撃をする、その流一にはアイスジャベリンでタイミングのズレた3頭が仕返しとばかりに向かって来た。


しかしAランクの雪豹と戦った流一には猿の魔物のスピードなどさほどの脅威では無い、最初の攻撃で簡単に1頭を返り討ちにし、次の攻撃で2頭纏めて倒した。


その間『鮮血の誓い』は苦戦していた、深手は追っていないものの少し血を流している上にまだ2頭しか倒していない。


残りは8頭、全て『鮮血の誓い』と戦っていたが、その内の2頭が流一の方に向かって行った。

前の3頭とは違い連携して襲って来た、最初に戦った3頭はアイスジャベリンで逆上していたので連携などしなかったのだろう。

連携した猿の魔物は手強かった、いや、強いわけでは無い、流一の攻撃を避けるのが上手いのだ。


だからと言って流一は慌てたりしない、この魔物領域は猿の魔物がいる事でわかる通り森なのだ、なのでソーンコントロールで猿の魔物の動きを止める、そしてまた2頭倒した。


ただこの世界では『ソーンコントロール』はエルフだけが使う森魔法だと思われている、そのため『鮮血の誓い』に見られるのは少し都合が悪い、そう考えて流一は『鮮血の誓い』から少し離れて見えない場所で戦っていた。


戦いが終わって『鮮血の誓い』のところに戻ると残り1頭にトドメを刺しているところだった。


「やっと終わったか。それにしても流一、君は強いな!半分は君が倒したんじゃないか」


「いえ、5頭なんで三分の一ですね」


「馬鹿言え、最初の2頭は魔法で落ちて来たんだから俺達がトドメを刺しただけで倒したのは君だろう」


「そう言ってもらえると嬉しいですね。ありがとうございます。では護衛の続きもありますし戻りましょう」


流一は猿の魔物を収納に入れながら言った。


そして歩いて商隊の元に帰ると『デザートイーグル』女性陣は既に帰って来ていた。


「そっちの首尾は?」


「上々よ」


ベリルの質問にアメリアが答えた、些か簡単過ぎる返事に思えるが。


そしてベリルは『蒼穹の狩人』の元へ行き、居残りの護衛を労う振りをしながらリーダーのアルベルトに聞いた。


「あいつらはいつ頃帰ってきたんだ?」


「出てから10分くらいで帰ってきたよ」


「なっ!それで討伐は出来てたのか?」


「あぁ、俺も信じられなかったんで獲物を見せてもらった。確かに猿の魔物12頭倒してたよ。それよりそっちは?」


「実質半分は流一が1人で倒した」


「ほっ、本当か?」


「「・・・・・」」


黙り込む2人、そしてベリルが呟く。


「『デザートイーグル』・・・何者なにもんだあいつら」


予定外の商人さん達の休憩も終わり最初と同じ陣形で出発した。

いくら魔物領域の近くとは言え、これ以後は魔物とのエンカウントは無く無事安全圏まで出られた。


今回は普通の商隊より早く危険地帯を抜けられたので、少し先にあるジャブルという子爵の領都まで行き宿屋に泊まる事になった。

ここはルンビニーまでにある2つの交易場所の1つだ、なので翌日の護衛は1日休みとなり2日後の朝出発となる。

しかし護衛料は発生する、契約は途中が休みだろうと何だろうと9日間の料金となっているからだ。

ただしその分宿代は出ない、ハンターには宿に泊まらず野営と言う手もあるからだ。


流一達は当然宿に泊まる、お金にも心にも余裕があるのだから。

そして今回は『鮮血の誓い』と『蒼穹の狩人』も同じ宿に泊まる事になった。


翌日、休みなので『デザートイーグル』『鮮血の誓い』『蒼穹の狩人』全員揃ってハンターギルドに向かった、小さくても街であり子爵領の領都なのでちゃんと支部があるのだ。


理由はもちろん前日の猿の魔物の換金である、全部で27頭、都合良く1パーティー9頭づつだ。


ハンターギルドではまず解体場を借りて自分達で解体をする、なのでまず流一とエレンの収納から全ての獲物を出して9頭づつ分けた。

それを見たギルド職員は驚いて声が出ない、もちろん猿の魔物ではなく収納魔法にだ。


その後それぞれで解体して売った、解体技術には大差が無いようで全パーティー同じ金額だった。


その後は全員別行動にするが『デザートイーグル』とリリアンは一緒に行動する事になった。


そして最初に昼食を食べに食堂へ、そこで食事を摂りながらリリアンが聞いてきた。


「あの、皆さんのその指輪はどこで手に入りますか?」


さすがに食事中なのでトイレとは言わなかった。


「これは俺が作った物なんだ、正確には店でオーダーして魔力は俺が流した」


「では私にも作ってもらえませんか?もちろんお金は払います」


割と必死である、『男女混合パーティーの女性』なのだから当然と言えば当然と言える。

流一もエレンの事があったからこそトイレを作ったのだから気持ちは良くわかるのだ、もちろん女性陣も。


「じゃあこれをあげる、料金は1000マニで良いよ」


そう言って自分の指輪を渡した、


「えっ?これだけのものが1000マニって、そんなに安くて良いんですか?」


「大丈夫、材料費と技術料がほとんどだから。それだけあれば俺の分はまた作れるから」


「本当ですか、ありがとうございます」


まだ食事中なのに長々と頭を下げている、よほど嬉しかったのだろう。


食事の後は全員で街を見て回った、そして宿に帰る前に商業ギルドに寄りリリアンはお金を引き出して流一に支払った。


この世界には銀行は無い、しかしそれでは不便なので商業ギルドが『資金預り業』と言う業務を行なっている。これは年会費100マニで無制限に資金を預かり、手数料10マニでどこの商業ギルドからでも預けたお金を好きな分引き出せるというサービスだ。

手数料は高いが国を跨いで仕事をする商人やハンターにとっては有り難いサービスだ、もっともそれほどの大金を預ける事が出来るハンターは少ないのではあるが。


そう考えると『蒼穹の狩人』は優秀なパーティーでありリリアンは堅実な性格なのだと推測出来る。


ジャブルを出ると、その後は予定通りもう1つの交易場所に一泊してベイルーンを出てから9日後、無事ルンビニーに着いた。


もちろん依頼達成の証明書は最高評価だ。

それをハンターギルドに提出すると早速次のサフィーアまでの護衛依頼を探す・・・・・のでは無く2日休みにした。

流一はトイレに慣れすぎていたため、ジャブルを出発してから少し苦労したのだ。

なのでルンビニーで急いでトイレを作りたかったからだ。


「師匠、ここで作って渡した方が良かったですね。でも師匠のそう言う優しいところ好きですよ」


エレンに慰められた、何気無い告白も混ざっているようだが深くは追求しないでおこう。

ただ、相変わらず流一は鈍感なので分かっていない、が可愛い女の子にそう言われれば元気が出るのが男なのだ。

(下半身じゃ無いよ)




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