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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
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53 護衛(?)開始

ハンターギルドでランクを上げるには条件がある、それは各種ポイントを貯める事と規定の年数を経過する事だ。

ポイントは3種類、功績ポイント(依頼の受注実績)、達成ポイント(依頼の達成実績)、売買ポイント(素材の買取量)を規定数まで上げる事。

年数は各ランクで2年以上経験を積む事となる。


もちろん依頼は貴族の依頼と平民の依頼ではポイントが変わるし通常依頼か指名依頼かでも変わる。


貴族の依頼は通常Bランクからで、Cランクまでは平民か準貴族の依頼しかない。

そのためBランクに上がる時には貴族への対応を学ぶ必要があるがランクアップの条件にはなっていない。

しかし貴族の不興を買うと功績ポイントと達成ポイントが大きく下がりランクダウンしてしまうので、Bランク以上のほとんどのハンターは貴族に対するマナーを学んでいる。


バルテスでの伯爵からの依頼は特殊な能力が必要だったための特例であり、伯爵もその事は理解しているのでマナーの面では何も言われなかった。


そして『デザートイーグル』であるが、ハンターになって約半年、移動が多かったとはいえ依頼はあまり受けずに常時依頼の魔物ばかり狩っていた。

つまり売買ポイントはかなり貯まってきたが功績ポイントと達成ポイントがあまり貯まっていないのだ。


なので功績ポイントと達成ポイントを貯めるためにも護衛依頼を受けて移動しようという事になった。


目的地はエムロード大王国、王都サフィーアに決まりその方面の依頼を探すと、すぐに一件の依頼が目に入った。

『商隊の護衛、目的地ルンビニー、期間9日、報酬1人1日300マニ、募集人員10〜12人』

ルンビニーはエムロード大王国で3番目に大きな街だ。

募集人員からして馬車5・6台の小規模商隊だろう。


「この依頼でどう?」


「そうだね、他のパーティーと合同って初めてだけど大丈夫だよね」


アメリアの問いかけに流一が答える、どうも戦闘時以外は流一がリーダーとは思えない。


この依頼を受ける事にして流一は颯爽と受付に向かった、そして肩を落とした、受付嬢に猫耳が無かったので。


気を取直して受付で受注処理をしてもらうと早速依頼主の元へ向かった、募集は『デザートイーグル』で一杯になったようだ。


「依頼を受注した『デザートイーグル』リーダーの流一です」


「私が依頼主のヨシュアです」


依頼主のヨシュアと挨拶を交わすとすぐに詳細の打ち合わせとなった。

出発は翌日の朝9時、馬車5台の護衛、他の護衛は『鮮血の誓い』と『蒼穹の狩人』という3人パーティー2組との事だった。

流一達は馬での護衛だと伝えると、その分荷物を多く積めると喜んでいた、だからと言って報酬が増えたりしないのが残念でならない。


依頼主との話しが終わると、今度は護衛達の顔合わせである。


「『デザートイーグル』リーダーの流一です」


「『鮮血の誓い』リーダーのベリルだ」


「俺は『蒼穹の狩人』リーダーのアルベルトだ」


『鮮血の誓い』はリーダーで剣士のベリル、同じく剣士のカーライル、槍士のチャックの3人。

『蒼穹の狩人』はリーダーで弓士のアルベルト、剣士兼弓士のバクスター、水魔法使いのリリアンの3人。

全体のリーダーは唯一のBランクハンターでありもっとも歳上のベリルが務める事になった。


そして護衛計画を練る、今回は先頭馬車に『鮮血の誓い』が乗り全体の指揮と警戒、『蒼穹の狩人』が最後尾の馬車に乗り後方の警戒、『デザートイーグル』は流一が先頭馬車と並走して前方の警戒、左右にそれぞれ2人づつで側方の警戒をする事になった。


翌日、予定通り9時に合流、街の南門からルンビニーに向け出発した。

すると流一はすぐにベリルから声をかけられた。


「流一君、何故『デザートイーグル』の皆んなは武器を持っていないんだ?油断していると死ぬぞ」


ちょっと怒り気味のドスの効いた声である。


「大丈夫です、全員武器は持っていますので」


流一は軽く受け流した、ベリルはさらに言いたい事があるようだが言うのをやめた、流一の態度から言っても意味が無いと感じたからだ。


12時過ぎ、昼食を兼ねて最初の休憩を取る事になった、食事はもちろん依頼主が用意している。

護衛依頼の場合、水と食事を依頼主が用意するのは義務ではないが暗黙の了解となっている、なので条件交渉で一々どうするかを決めたりせずとも用意してある。


流一達は自分達の分は辞退するつもりだったが、せっかく用意してくれているので最初くらいはご馳走になろうと思った。

そして受け取る食事、硬いパンと干し肉に水、これだけである、夕食なら火を起こすのでこれに乾燥野菜スープが付くくらいだ。

嵩張らず日持ちのするものでなければならないため仕方ないとはいえ味気無いし物足りない、次の夕食からは自分達で用意しようと固く誓う『デザートイーグル』の面々であった。


尤も普通のハンターならこれが普通なのでそんな事は考えない、というより十分満足している。

つまり『デザートイーグル』は贅沢なのである、自分達では気づいていないが。


午後の移動を終え野営をする、初日は見晴らしの良い草原だ、ここなら見張りもしやすい。


予定通り夕食は断った、そして収納から調理器具を出す。

料理は基本的にアメリアとユリアナの担当だ、流一も出来るが新しいメニューを披露する時くらいでそれ以外は2人に任せている。

セリーヌとエレンが担当しないのは・・・名誉の為に伏せておく。


今日は野菜たっぷりの天ぷら、氷亀の脂を料理に使うようになって揚げ物に目覚めたようだ。

この世界に醤油は無いので天つゆは作れない、しかしマヨネーズはあるのでタルタルソースで食べる。


「「「「「・・・・・」」」」」


他のハンターや商人さん達はその光景を見て絶句している、その気持ちもわからなくもないが。


食事も終わり就寝となる、商人さん達は馬車を丸く配置してその内側で眠る、ハンターは『デザートイーグル』から1人とそれ以外のパーティーから1人の2人1組で見張りを立てる事になった。

余る1人は『デザートイーグル』以外で唯一の女性リリアンだ、割と大切にされているのが伺える。


そして『デザートイーグル』はいつものように簡易ベッドとテントを用意する、馬は馬車に繋いでいる。


「「「「「・・・・・・」」」」」


再び絶句された、当然ではあるが。

そんな中、アメリアが他のハンターのところに寄って行った。


「リリアンさん、そちらは女性1人みたいですから私たちと一緒に寝ませんか?」


そう言ってリリアンを誘った。

男性5人に囲まれた女性1人、辛いだろうと察したのだ。


「ありがとうございます、でも・・・」


そう言ってリーダーのアルベルトの方を向く。


「俺もその方が良いと思う」


と同意してくれたので喜んでテントの方にやって来た。


最初の見張りはカーライルとセリーヌになった、なので残りのハンターは寝る、『デザートイーグル』以外。


「あの、トイレってこのテントの影でも良いですか?」


流一は別のテントなのでリリアンは思い切ってアメリア達に聞いた。

ここは草原の中のためトイレの出来る物陰までは距離があるのだ、男ならともかく女にはこの状況は辛い。


「トイレならこれ貸してあげる。魔力を流すとトイレに行って、もう一度魔力を流すと戻って来れるから」


そう言いながらアメリアが自分の指輪をリリアンに渡した。


「えっ?この指輪に魔力を流すんですか?」


リリアンは指輪をはめながらそう言うと魔力を流した、すると皆んなの前からリリアンが消える、そして直ぐに現れた。


「これ、皆さんから見えてますよね」


「私たちからは見えないわよ、ほら」


そう言ってユリアナがトイレに行った、そして直ぐに戻って来た。

納得したリリアンは今度はしばらく戻って来なかった。


「これありがとうございます。皆さん便利な物を持ってるんですねー」


指輪をアメリアに返しながら羨ましそうに言うリリアン、名残惜しそうだ、指輪との別れが。


「じゃあ私は先にお風呂に入りますね、お湯を入れないといけないので。それで誰が一緒に来ます?」


風呂は基本的に女性陣が2人づつ入るようにしている、風呂が大きいという事もあるが、主に時間の節約のためだ。


「リリアンさん、お先にどうぞ」


「えっ?お風呂って・・・」


「じゃあこっちへ」


エレンはリリアンの手を引いてテントの外へと出た、テントの中より夜空の元で入る方が気持ちが良いからだ。


「えっ!お風呂ってこんなに本格的なの?」


「そうよ」


返事をしながら湯船と給水タンクにお湯を満たした。


「えっ?お湯?どうやって・・・」


リリアン、驚いてばかりである、仕方ないとはいえ。


そしてシャワーの使い方も教え髪も身体もピカピカに磨き上げて風呂から上がった。


朝、リリアンは何事も無かったかのように仲間の元へ帰って行った。


『デザートイーグル』は2日目の朝食も自分達の持っていたパンと紅茶で済ませた。

流一はコーヒーの方が好きなのだがこの世界では無いので仕方ない、もっとも有るけれど見つけ出していないだけかも知れないが。


2日目も何事も無く過ぎ3日目、この日は早めの野営となった。

4日目はかなり大きな魔物領域二つに挟まれた道を進む事になる、道は魔物領域ではないが二つの魔物領域間を行き来する魔物もいるため魔物に襲われやすい危険地帯だ。

そのため魔物領域から少し離れたところで野営し、1日かけて昼食返上で進む事になるのだ。


3日目ともなると女性陣はリリアンとかなり打ち解けていた、そして時間も早い事もあり皆んなで狩りに行く事になった。


とはいえ護衛任務を疎かにするわけにはいかないのでメンバーはユリアナ、エレン、リリアンの3人だけだ、夕食用の動物を狩るので弓の得意なユリアナと探索魔法の使えるエレンがリリアンと共に行くのだ。


待つ事2時間、皆んなの元へ帰ってくるとエレンが収納からシカ一頭とウサギ2羽を取り出した。


(((((羨ましい)))))


もちろん『デザートイーグル』以外の面々の心の声である。


そしてシカをアメリアが、ウサギをユリアナとリリアンが捌き始めた。

エレンとセリーヌはいつも通りバーベキューの準備、流一は馬に飼い葉と水を与えている。


それをただ眺めるだけの商人さん達と仲間のハンター、仕方ないので馬車の馬にも流一が飼い葉と水を与えた、普通は雇い主の方が流一達の馬に飼い葉と水を与えるものなのだが。


食事の準備が終わると流一が呆けている商人さん達とハンター達に言った。


「準備も出来たようなので一緒に食べましょう」


「良いのか?」

「良いのですか?」


「もちろんです」


流一の返事を聞くや否や全員女性陣のところへ走って行った、よほど硬いパンと干し肉に飽きていたのだろう。


全員満足して馬車の近くまで戻ると女性陣は片付けを始めた、そしてそれが終わると椅子とテーブルを出してティータイムを始めた、もはや商隊の護衛中とはとても思えない。


そしてその中に男は1人、


(((((羨ましい)))))


エレンが獲物を出した時とは別の意味の心の声が響いている。







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