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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
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52 女性ハンターの悩み

翌日、イリアと別れた『デザートイーグル』の姿はまだライヒブルクにあった、そしてハンターギルドで依頼を探している。

ライヒブルクを去るにあたり王都方面へ向かう護衛依頼を受けようと考えたからだ。


「無いわねー」


「無いですね、どうしましょうか?」


依頼ボードを見つめてアメリアとユリアナが相談している、王都どころか他の街への護衛依頼も見つからない。


ライヒブルクはハンターの出入りが激しい、なのでライヒブルクから去るハンターも多いので護衛依頼は出されると同時に奪い合いとなる。

特に氷河に慣れず狩りの成果が上がらなかったパーティーにとっては護衛依頼を受けられるかどうかは死活問題である。

そのため護衛依頼は既に定員一杯になっているのだ。


「とりあえずベイルーンまでは普通に移動しようよ、その後は又南に向かう商隊の護衛依頼を探せば良いよ」


「そうね、無いものは仕方ないし。そうしましょう」


流一の言葉にアメリアが同意して普通に馬で移動が決まった、ベイルーンまでは3日、来る時は途中の魔物領域で狩りをしたが今回は寄り道せずベイルーンへ向かう事にした。


野営1日目、食事の後いよいよ風呂のお披露目だ。


「じゃあそろそろ風呂の説明をするよ」


そう言って流一は収納から風呂を出した、テントからは少し離れた位置だ。


「これがお風呂?すごい本格的ね」


「それよりこれは何だろう?」


驚くアメリア、シャワーを不思議そうに見るセリーヌ。


「じゃあ説明するよ、湯船は説明要らないよね、ここに俺かエレンが『ウォーター』でお湯を張るようにするんだ」


そう言って『ウォーター』で湯船をお湯で満たした、温度は43度、少し高めなのは説明している間に冷える計算だからだ。


「それからこっちがシャワー、この給水塔みたいなところにやっぱり俺かエレンがお湯を入れる。そしてこのシャワーの先から雨のようなお湯が出るようになってる」


そう言うと今度は給水塔をお湯で満たした、これは直ぐに実演するため40度だ。


「今給水塔の中にお湯を満たした。それからこれはシャワーヘッドって言うんだけど、ここに魔力を流すとお湯が出て、もう一度魔力を流すと今度は止まるようになってる」


流一はシャワーヘッドをアメリアに渡し魔力を流すよう指示する。

当然だがアメリアが魔力を流すとお湯が出て、もう一度魔力を流すとお湯が止まった。


「すごーい、おもしろーい」


「ねーねー、私もやって良い?」


アメリアに続きユリアナもやってみた、その後セリーヌとエレンも、かなり好評だ。


「で、最後に、この金具が頭や身体を洗う時にシャワーを固定しておく所だから」


「へー、ここに固定しておけば両手で頭を洗えるんだ。よく出来てるわねー」


素直に感心するアメリア、ユリアナ、セリーヌの3人、それに対しエレンが少し心配そうに聞いてくる。


「師匠、これって外からは丸見えですよね、対策はしてるんですか?」


「!?、いや、俺は皆んなが風呂に入る時はテントに居るから」


考えていなかった流一はちょっと慌てて言い訳めいた事を言った。


「じゃあ護衛依頼を受けてたりすると使え無いって事ですか?」


「・・・・・ごめんなさい!考えてませんでしたー!これから考えます」


久々に土下座した、意味もわかってもらえないのに。

ただ誠意は伝わるので全く無駄という事でも無い。


その後はローテーションを組んで全員風呂を堪能した、満天の星空を眺めながらの入浴である、満足しないわけが無い。


野営2日目、エレンが少し具合悪そうにしているが誰も気付かない、と言うよりエレンが気付かれないように気丈に振る舞っているのだ。


しかしエレンの努力も長くは続かず、ベイルーンに着く頃には顔が蒼白になっていた。

それにいち早く気づいたのはセリーヌだ、セリーヌはそっとエレンに近付いて声をかけた。

馬上であり移動しながらだったので他のみんなはまだ気付いていない。


ベイルーンに着くと直ぐに宿を探した、前回来た時は風呂のある(ちょっとだけ)高級宿屋だったが今回は普通の宿屋にする、そしてライヒブルク同様厩舎優先で探した。


見つけたのは『森の憩い亭』と言う名の宿屋だ、かなり部屋数の多い宿屋なのでそれに合わせて厩舎も整備されているのだ。


馬を厩舎に繋いだ後、やっと流一、アメリア、ユリアナもエレンの調子が悪い事に気付いた。


「どうしたのエレン、どこか具合が悪いの?」


「えぇ、エレンの体調が優れないみたいだから直ぐ部屋に連れて行って寝かせるわ」


流一の言葉にセリーヌが答えてエレンを部屋へと連れて行った。

その後流一達も部屋へと行く、今回は女性陣4人で一部屋、流一が一部屋の二部屋に泊まる。


流一は自分の部屋で少しくつろいでから女性陣の部屋へ行った、アメリアとユリアナにそうするよう言われたからだ。

エレンの体調次第では服を脱がせたり身体を拭いたりするかもしれないからだそうだ、露天風呂では全裸で迫っておいて今更な気もするが。


「エレンの具合はどう、俺が診断してみようか?」


部屋に入るなりそう言った、この世界で仲間が病気になったのは初めてなのでかなり心配している。


「大丈夫みたい、良い薬も持ってるから3日もすれば元気になるわ」


「そうそう、大丈夫だから心配しないで」


セリーヌとユリアナが答える、エレンは薬を飲んで寝ているのだろう微かに寝息を立てている。


「なんの病気か分かってるの?」


「えぇ、分かってるわ。女性ハンター、特に男女混合パーティーの女性ハンターには良くある病気よ。職業病みたいなものね、だからもう大丈夫」


ユリアナが説明してくれたがなんだか歯切れが悪い印象を受ける。


「そうなの?でも一応俺が診断した方が・・・」


「大丈夫よエレンには私達が付いてるから心配しないで。でも3日くらい此処にいる事になるから流一さんは図書館でも行ったら?まだ始まりの魔法使いの事調べてるんでしょ」


ユリアナにそう言われて、流一は仕方なさそうに自分の部屋へ戻った、そしてヨネ子にメールする。


「マーガレット、ちょっと相談。風呂だけど人から見られないようにするにはどうしたら良いと思う?」


【どうしたの?そんなの衝立でも作れば良いでしょ】


「まーそうなんだけど、護衛依頼を受けてる時とかパーティー以外の人に見られるのはどうかなって思って」


【パーティー以外には知られたく無いって事?】


「まあ、有り体に言えばそうかな。裸の時を狙って襲って来るなら索敵魔法でわかるけど、覗きまでは敵意がないからわからないし」


【メンバーの裸体は独り占めしたいのね】


「そんな訳じゃ・・・ない・・と思う・・けど」


【正直ね。まー良いわ、ちょっと考えてみるわ】


「あっ、それからエレンの事なんだけど」


【エレンがどうかしたの?】


「病気みたいなんだ、他のみんなはどんな病気か知ってるみたいだけど俺にはあんまり詳しく教えてくれなくて」


【他のみんなが知ってるならもう良いでしょ】


「そうかもしれないけど・・・俺も心配なんだよ」


【仕方ないわね、じゃあ症状は?】


「よくわからない、ただ具合が悪いだけしか」


【それだけ?流石の私でもそれだけだとわからないわよ。じゃあ何時いつから?】


「それも良く分からない、ただ昨日の野営の時は普通だったから24時間以内くらいかな」


実際は野営の時既に具合が悪かったが誰も気付かなかっただけだ、しかしヨネ子はエレンの性格から流一の話しよりもっと前に発症していた可能性も考えていた。


【見た目の特徴とかはある?】


「馬から降りた時顔面が蒼白だったくらいかな」


【熱はあるの?】


「多分無いと思う、さっき部屋に行った時見たけど頭を冷やしたりはしてなかったから」


【それで、他の娘達は何か言ってた?】


「女性ハンターには多い病気だって言ってた。特に男女混合パーティーにって。この世界独特の病気なのかな?」


【その可能性もあるけど何となくわかったわ】


「本当?流石マーガレット、MDは伊達じゃないね。でどんな病気なの?」


【多分膀胱炎の可能性が一番高いわね】


「膀胱炎?それってそんなに言い辛い病気?」


【女の子が『いつもトイレを我慢してます』って言いやすいと思う?】


「ああそうか、そうだよね。男の俺でもトイレは隠れてするんだから当然だよね」


【でもそうね、確かに女の子にとってトイレは重要ね。それも解決策を考えてあげるわ】


「本当?ありがとう。やっぱマーガレットは頼りになるわ」


メールが終わると安心して眠りにつく流一であった、マーガレットとのメールは子守唄よりも強力な安眠ツールなのかもしれない・・・流一にとっては。


翌朝、例により仕事の早いヨネ子からのメールが送られて来ていた。


早速見ると、そこにあったのは亜空間の魔方陣が2種類とトイレの設計図だった、トイレにはさらに3つの魔方陣を刻む事になっているようだ。

普通の魔方陣は風呂用、そしてトイレ用はまた指輪型だ。


「今メール見たよ、ありがとう。それで少し聴きたいんだけど」


【良いわよ、何を聴きたいの?】


「亜空間って入っても良いものなのか?」


【大丈夫よ、かなり研究したから安心しなさい】


「そうなんだ。じゃあ亜空間の特徴とか聴いて良い?」


【亜空間と現実空間は分子レベルでしか干渉しないわ。そしてエネルギー交換も無いみたいね】


「ごめん、もっとわかりやすく言って」


【分子レベルでしか干渉しないってのは周りの景色は普通に見えるし空気もあるって事、でも亜空間から現実空間の物を触ったりは出来ないしその逆も同じって事よ】


「それだと現実空間からも亜空間を見たり出来るって事は無いのか?」


【マジックミラーみたいなものだと思いなさい】


「なるほど、納得した。でエネルギー交換が無いってのはどういう事?」


【亜空間の気温は現実空間の気温に関係無く24度に保たれてるし、現実空間で熱湯を持ってても亜空間のその部分が熱くなる事は無いって事】


「そうなんだ、じゃあ亜空間から現実空間で魔法を使ったりは出来ないって事でいいのか?」


【そうよ、魔法も一種のエネルギーだし、音も波のエネルギーだから聞こえない。ただ臭いは分子だから干渉するわよ】


「えっ?トイレ大丈夫?」


【トイレに魔方陣を刻むようになってたでしょ、あの便座に刻むのが消臭の魔方陣よ、ただ便座に座るだけでその人の魔力を使って自動で発動するようにしているわ。ただし消臭のイメージは活性炭みたいな吸着では無く、無害で無臭な分子への分解だからそういう風にイメージするのよ】


「わかった。でウォシュレットのスイッチみたいなところはウォーターってわかるけど便器の内側は何?」


【それも亜空間よ、汚物は亜空間から別の亜空間に捨てるのよ】


「亜空間てそんなにたくさんあるのか?」


【そうね、有るとも言えるし無いけど作ってるとも言えるわね。そうじゃ無いと不便でしょ】


「確かに。あと亜空間の中で移動したらどうなるんだ?」


【景色はその場で足踏み状態ね、でも亜空間の中は歩けるから風呂や便器の方が近付いてくる感じになるわね。便器の前で後ろを向くと便器の方が後ろに回り込む感じになるわよ】


「なんか酔いそう」


【使ってれば慣れるわよ。それより面白い使い方を教えるわ】


「面白い?マーガレットがそんな事言うなんて珍しいね」


【確かにそうね、でも役に立つ使い方よ。亜空間はエネルギーの交換が無いって言ったでしょ】


「ああ、だから気温が一定だって」


【そう、それは運動エネルギーにも当てはまるのよ】


「だろうね、それで?」


【崖から落ちても一度亜空間に入れば助かるわよ】


「えっ?どういう事?」


【どんなに高速で落下してても亜空間に入れば静止状態になるわよ、そこから現実空間に戻ればまたスピードは0から始まるの】


「そうか、地表スレスレで一度亜空間に入ってから出てくれば安全に地表へ降りたてるって事か」


【そうよ、実際に崖から落ちる必要は無いけど、対処方法が有るのと無いのとでは安心感が違うでしょ】


「そうだね。後最後に、イメージを流すのは全部俺で良いのか?武器の時はそれぞれが流しただろ」


【武器の時は現実空間に残る物が何も無かったからよ。今回は風呂は魔方陣を刻んだプレートが有るしトイレは指輪があるから大丈夫よ】


「なるほどありがとう。早速作りに行ってくる」


流一はメールが終わると早速街へと繰り出す・・・つもりであったが魔方陣もトイレの設計図もまだ転写していない事を思い出した、結局街に出たのは昼過ぎだった。


翌日、午前中はユリアナに言われた通り図書館に行ったがあまり成果は無い。

それでも気落ちはせず昼食を食べると前日に制作を依頼したプレート、指輪、便器を取りに行った。


全てを収納に入れて部屋へ帰ると魔方陣にイメージを流す。


プレートにイメージを流した後、魔力だけを流して動作確認すると亜空間に入った。

そしてそこへ風呂を備え付けると、その側にチェストのような台を置きその上に脱衣籠を置いた。


次に5つの便器全ての魔方陣にイメージを流した、そして指輪一個一個の亜空間に便器を備え付けて行く。


全ての作業が終わると女性陣の部屋へと向かった。


「エレンの調子はどう?」


「もう大分良いわよ、明日には起きれると思うわ」


「師匠、心配かけてごめんなさい」


「いや、気にしなくて良いよ。それより病名は膀胱炎で合ってる?」


やはり流一はデリカシーが無い、どストレートに聞いた。

しかしそんな事は今更なので、もうその事についてあれこれ言う者は居ない。

そしてセリーヌが仕方ないとでも言いたげに答える。


「そうよ、良くわかったわね」


「まあね、原因はトイレを我慢し過ぎたからだろ」


「いや、恥ずかしいから言わないで」


赤くなった顔を両手で覆うエレン。


それを見てアメリアが口を出そうとする。


「ちょっと流一!あなたねー・・・」


しかし言い切る前に流一が話し出す。


「ごめん、言いたい事はわかる。でも大事な事だから」


「何よ大事な事って」


話を途中で切られて更に不機嫌になったアメリアが聞いてきた。


「原因がトイレならもう大丈夫だから」


「どういう意味よ」


「俺、みんなのトイレを作ってきたから」


そう言って全員分の指輪を出して渡した。


「この指輪に魔力を流すと亜空間にあるトイレに行くから試してみて、戻る時はまた指輪に魔力を流したら良いから」


そして最初にアメリアが指輪に魔力を流すとみんなの前から姿が消えた。


「えっ!?アメリア。どこ行ったの?」


流一以外の全員がアメリアを探す。

するとすぐにアメリアが元いた場所に現れた、そして怒る。


「ちょっと流一、トイレは有ったけど全部丸見えじゃない」


「えっ?アメリアどういう事?あなたさっき消えてたわよ」


「えっ?本当?でも私には全員見えてたわよ」


ユリアナの質問に驚くアメリア、そこで流一がヨネ子から聞いた事を得意げに語った。


流一の話しに納得すると今度はユリアナとセリーヌが指輪をはめて魔力を流す、すると2人とも消えた。

それを見たアメリアは人からは見えないと改めて納得する、ユリアナとセリーヌもお互いが消えた事で納得した。


エレンも試すとベッドは残っているが布団ごと消えた、布団に入っていると服と同じ認識になるようだ。

尤もその原因は流一の流したイメージだから流一のせいと言えなくも無い、しかしそれで困る事も無いので無問題だ。


「流一、怒ってごめんね。これすごく助かるわ。ありがとう」


「本当、毎回毎回流一さんの知恵の魔法には助けられてばかりね。ありがとう」


ユリアナの言葉に全て現れている、知恵の魔法のおかげなのはバレバレだと。

そしてそれは間違いでは無いので流一も苦笑いだ、さっきの得意げな話も全て知恵の魔法のおかげだとバレているのだから。


トイレの説明が終わると今度はプレートを持ち出して風呂の説明をする、指輪とプレートが違うだけで要領はトイレと同じなので簡単に済ませた。


そしてその後、女性陣の部屋で全員風呂に入った。

全員、周りからは見えていないとわかっていても恥ずかしかったようだ。


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