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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
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5 異世界人と接触せよ

さすがの流一も経験が有るとはいえ野外に寝袋では熟睡は出来ない。

もっとも異世界最初の夜ということもあり、危険生物がいないとも限らないので熟睡しない方が都合が良かった面もある。


ともあれ、無事朝を迎えた流一は魔力が回復しているのを確認すると魔力が切れるまで訓練をした。


昨夜は訓練後すぐに寝たので汗が気持ち悪い、なので時期的にも問題ないので訓練後川で水浴びをする事にした。


天気が良かったので放射冷却のためちょっと寒いくらいだが流一は気にしない。

しかし念のためプールに入る時のように、心臓から遠い部分から順に水を掛けて徐々に冷たさに身体を慣れさせながら川に浸かった。


本当は風呂の方が良かったが贅沢は言っていられない。

石鹸は無いが頭までしっかり洗ってから、首まで川に浸かり川の中で身体を洗っていた。

風呂では出来ない行為だ。


すると、森の方からウサギが飛び出してきた。(もちろん元の世界とは少し違って頭に小さなツノが生えている。)

そして矢を受けて死んでしまった。


それからすぐに軽鎧を付けた若い女の子がやって来た。

赤い髪に赤い瞳、ちょっと魅力的な女性に驚くと同時に見入ってしまった。


女の子はウサギを拾い上げると、流一と目が合った。

すると一瞬『えっ?』という表情になり慌てて大声を出した。


「¥2#$★#⇒♭¥$#%・・・・・・・・」


流一を指差して何やらまくし立てているが全く理解出来ない。

多分『あなた誰?』とか『こんな所で何してる?』とか言ってんだろうなーなどと考えながら生暖かく眺めていた。


全裸ではあるが、首から上しか見えておらず恥ずかしさが無いので落ち着いているのだ。

そして熟睡出来なかった影響か、異世界に人間がいたという重要な事実に気が付いていない。


しばらくして言いたいことを言い終わったのであろう、女の子はウサギを持って走り去っていった。


流一は女の子が帰った後もしばらく『可愛い子だったなー、どこの国の人だろう』と考えていたが、ふと我に返ると慌てて服を着て女の子を追いかけた。

やっと自分が異世界にいた事を思い出したのだ。


しかし追いつけるはずもなく、元の場所に戻るとヨネ子にメールした。


「人間が居た!人間が居たよー!」


我に返ってよほど驚いたのか小学生のような反応である。


それに対しヨネ子からは至って冷静なメールが来た。


【で、何か貴重な情報は聞けた?】


「無理無理無理、知らない言葉喋ってた」


【流一、何を焦ってるの?少し落ち着きなさい】


流一はそれを見てようやくいつもの調子に戻った。


「ごめん、あんまり驚いたから。もう大丈夫」


【で?超言語はどうしたの?】


「あるけど使えなかった!何言ってるか分からなかった」


【あんたいったい何してたのよ!】


ヨネ子的にはダメな兄に対しての叱責の言葉であった、それ故の『!』であったが、流一は『?』と勘違いして状況を話し始めた。


「魔法の訓練して汗かいたから川で水浴びしてたんだ。そしたら森からウサギが出てきて、あっ、頭にちっちゃい角みたいなものが付いたウサギなんだけど、矢が刺さって死んだらそのあとウサギを取りに可愛い女の子がやって来て目が合ったんだ。でその時俺の事指差して何か言ってたけど何言ってるか分からなかったんだ」


面倒くさいのでヨネ子は最後まで喋らせてから一言。


【じゃあその時スマホは持って無かったのね】


それを見た流一は『あっ!』という顔を浮かべて、やっと理解した。


「そうだった、だから何言ってるか分からなかったのか」


流一には見えないが、ヨネ子は明らかに『我が兄ながら情け無い』という表情を浮かべている。

しかし終わった事をとやかく言うつもりは無い、それよりもこれからどうするかが重要なのだ。


【で、どんな人間だったの?】


「可愛い女の子、髪は赤かった。なんか軽装だけど防具みたいなの着てた」


【なるほど、可愛い女の子だから見惚れて話しかける事も追いかける事も忘れたわけね】


さすがヨネ子である、見ていたように言い当てた。

それに対し流一は図星を突かれて返事に窮する始末だ。


【しようのない人ね。とりあえずその世界にも人がいる事が分かったんだから良しとしましょう。それより今度はそっちの世界の人間とどう接触するかね】


「それはそうだけど・・・」


今ひとつ煮えきらない返事をする流一、ヨネ子からは『この世界の人間』とどう接触するかと言われたのに『さっきの女の子』にどう声をかけるかを考えていたのだ。


そう考えればまだ高校生で純情(?)な流一の反応は分からなくもないが勘違いが甚だしい。


それを察したヨネ子は明らかに『ヤレヤレ』といった感じの溜息を漏らすと


【はあ〜】


とそのまま送られた。


もちろん文面だけなので流一にはどんな意味のメールかわからない。


【それじゃあ司令を出すわ!今日はその場を離れて異世界人との接触を目指しなさい】


さすがのヨネ子もこれ以上話すより何か行動させた方が良いだろうと思い司令を出した。

何より人間と接触出来れば異世界の情報が手に入るのだから。


「そうだね、俺もずっと1人は寂しいし」


流一も思いは同じなので、そうメールするとバックパックを背負い女の子が走って行った方角に向かって歩き出した。


どの方向に向かえば町や村があるのかなど流一には分からない、しかし女の子が狩りに来るくらいだから向かった方向のなるべく開けた場所を選んで進めば良いだろうと軽く考えていた。


それに早朝という程では無いが、朝の内に流一の所まで来れたのだからそう遠くない所に町か村があるはずだとタカを括っているのだ。


しかし午前中に出発してもうかなり時間が経ったが一向に人家らしきものが見当たら無い。さすがに『道に迷ったか?』と焦り始めていた。


実際は開けた道を選んでいた為遠回りになっただけで方向は間違っていなかった。


なので日が傾きかけた頃、ようやく少し拓けた場所に小屋らしき建物を見つけた。

人家では無かったがようやく見つけた人間の痕跡である、流一は涙が出るくらい嬉しかった。


小屋には誰もいない、しかし鍵も掛かっていないので入ってみると、中には狩りの道具らしきものがいくつかあるだけだった。

とはいえ小綺麗に片付けられてはいるので廃屋というわけでもなさそうだ。


また野宿だと外敵が心配で熟睡出来ないため流一はこの小屋を今晩の宿として借りる事にした。

もっとも持ち主を知らないので『借りる』というより『勝手に使う』と言う方が正しい。


そしてバックパックを床に下ろすとビーフジャーキーを取り出した。

今日はずっと歩きっぱなしだったので食糧を確保していない、なので晩ご飯は非常食を食べる事にしたのだ。


さすがに一日中歩き詰めだったので疲れてはいるがヨネ子への報告メールは忘れ無い。


「マーガレット、今日は人には会えなかった。でも猟師の小屋みたいなのを見つけたから今日はそこで休むことにした。」


【そう、それは残念ね。でも小屋があるのなら明日は人に会える可能性が高いわね】


そう反応が返って来た。


流一も同じように考えていたので安心して眠ろうとした時、スマホが警告を表示した。


(電池残量残り20%)


「あっ、もうすぐ電池切れだ」


独り言を呟くがあまり慌てていない、なぜなら流一には頼りになるリアルチートのヨネ子がいるから。

なにせヨネ子はMIT卒である、電気くらいどうにかしてくれるだろうとまたタカを括っているのだ。


「マーガレット、スマホの電池が無くなりそう!どうしたら良い?」


軽い気持ちで聴くと予想外の答えが!


【あらそうなの?もう連絡が取れなくなるなんて残念ね】


「えっ!!!」

「えっ!えっ!えっ!」


それを見て頭が現実を拒否しだした。

なにせヨネ子がどうにかしてくれると勝手に思い込んでいたのだ、流一の脳細胞はそれ以外の答えを受け入れる準備が出来ていない。

なので軽くパニックを起こしている。


もちろんヨネ子は方法を考えていた、この世界に電気を使う技術があろうと無かろうと流一は森の中にいたので自力でどうにかしなければならなかったからだ。


しかしどうも流一の態度が危機感を持っていないように感じた、あまり自分を頼りにし過ぎるのは良くないと、なので流一自身がもっと考え行動するよう促したかったのだ。


そしてそれは成功する。

ようやく流一は自分の置かれた状況を真剣に考えるようになった。

そしてそれを現実として受け止める。


「今までありがとうマーガレット、こっちの世界に来てもイマイチ人ごとのように感じてたけどスマホの電池が無くなってようやく本当の意味で実感した。後どれくらいメール出来るかわからないけどそれまではよろしくたのむ。もしこの世界にも電気を使う技術があれば充電してまたメールするから」


中々殊勝なメールである。

ヨネ子的にも最初に感謝の言葉が有ったのは嬉しい驚きであった、これまでの『助けて当たり前』という態度から悪態が先に来てもおかしくないと思っていたからだ。

なのでちょっと気分が良くなった。


【どうやらようやく自分の置かれた状況を認識出来たようね。ではスマホの充電の仕方を教えるわ】


流一的にはまたまた『えっ!』である。

さっきまでの覚悟はなんだったのか、いや覚悟が必要なのは必要なのだが。


「どう言うこと?充電する方法があるならなんであんなメール送って来たの?」


当然の疑問である、が最後が(!)ではなく(?)なのが成長を表している、電池が切れかかるまでなら確実に怒っていただろうから。


【なんだか私に頼りすぎてる感じがしたからよ、流一の事なんだから流一自身がもっと真剣に考えるようにしたかったのよ】


流一は何か釈然としないものを感じた、しかし正論なので何も言い返せない。

もっともヨネ子に言い返せるほどの頭がそもそも無い。


だが釈然としないものを感じた流一の感覚はある意味鋭いと言える。

なにせヨネ子は元々、魔法が使える今の状態が便利・・・いや異世界に飛ばされた兄が心配で助けるつもりだったのだが、あまり頼られすぎても面倒なので『少しは自分で考えろ』的な気持ちで言ったのだから。


「で、どうやって充電するの?」


すると唐突に古い話を始める、


【流一は昔、壊れたコンセントで感電したことがあったわよね、覚えてる?】


もちろん日本での話だ、アメリカなら感電死している。


「覚えてるよ、でもなんで今その話?」


これは7歳くらいの頃の話だが嫌なことはいつまでも覚えているものである。


【それが日本の標準的な100ボルトの交流電流よ】


「そんな事は知ってるよ、だからなんで今その話なんだよって聞いてるの」


怒ってはいないが少し不満気味である。


【まだわからない?あなたはサンダーの魔法も使えるでしょ】


そこまで聞いてようやく納得した。


「そうか、あの時感電した感覚でサンダーを使えば良いのか」


【そうよ、ACアダプターのコンセント側からサンダーで電気を流せば充電出来るはずよ】


「ありがとうヨネ子、これで安心して寝る事が出来るよ」


本当に安心したのであろうつい本名で呼んでしまった。


【私はマーガレットだって言ってるでしょー】


本当に申し訳ないと思った流一であるが最後に


「ゴメン、マーガレット」


と送るのが精一杯であった。


そして寝る前に充電と思ったが、失敗して充電器を壊すと不味いのでちょっと練習する事にした。


夜の訓練はまだだったので丁度良い、


「交流、100ボルト、60ヘルツ」


イメージを膨らませサンダーを発動させるが思ったより大きな電気が発生した、いうなればプチ雷のような。

要するに失敗したわけだ。


しかし失敗したからと諦めるわけにはいかない、魔力の制御はまだまだ流一には難しいが魔力もまだまだあるので練習を繰り返す。


そして魔力を3分の2ほど使ったところでそれらしい電気が作れた、だがまだ自信がない。

なので流一は意を決して電気を自分の足に当てた。

懐かしい(と言うほど良い思い出では無い)感電した感覚があった。


この無謀(?)な実験で大丈夫と確信した流一はようやっと充電を開始する。

すると理由はよく分からないが高速充電よりも早く充電が終了した。


しかし流一は理由を考えようとはしない、また寝られなくなるから、何より自分に理解出来るはずは無いと分かっているからだ。


そして残りの魔力を使い切るとその日は熟睡出来た。


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