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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
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46 武器を作ろう

食事も終わりそろそろ部屋に帰ろうかと言う頃になって商隊リーダーのセルバンテスと武器屋の主人が帰ってきた。


「お疲れ様です、今日は宿の予約だけでは無く宿代まで払って頂きありがとうございます」


それに気が付いた流一が早速声をかけた。


「いやいや、流一さん達には世話になりっぱなしですからね。これくらいは当然ですよ」


セルバンテスが感謝の気持ちを前面に出して言った。


「ところで、マンモスの魔物は明後日解体してオークションが開かれるみたいですね。今街中がその話題で持ちきりですよ」


「そうなんです、ですから僕たちは予定を変更してもうしばらくボレアースに居る事にしました」


流一は来た時と同じ商人さん達と明後日メルカートに帰る予定にしていたが、一緒に帰れなくなったので申し訳無さそうに報告した。


「それなら大丈夫ですよ、我々も予定を変更してもう少し居ますから」


「そんな、僕たちの為に予定を変更させる訳には行きませんよ。どうぞ商人さん達は予定通りに行動して下さい」


流一は自分達の為に予定を変えさせるのは申し訳ないと思いセルバンテスにそう告げた。


「いえいえ、予定変更は流一さん達の為ではありません。マンモスの魔物の解体を見たいからですよ」


「そうなんですか?」


「そうです。これから先もう二度と見ることが出来ないかもしれない魔物の解体ですよ、これを見逃す訳にはいきません。それに・・・」


「それに何ですか?」


「それにオークションにも参加したいと思いまして。出来ればマンモスの素材を扱いたいですが、それが無理でもマンモスの素材を使った商品を仕入れる事が出来ないかと思いまして」


流一には鮪の解体ショー程度の認識しか無いので商人の気持ちが今一つ理解出来ないが、商人からすればこれは商売のチャンスなので当然の判断だ。

『マンモスの魔物の素材を使った商品』これは世界初の商品なのである、この希少価値が分からない商人などいないのだ。


「はあ、そうなんですか。では帰りも予定通りお願いします」


「はい、一緒にメルカートに戻りましょう」


流一は何となくマンモスの魔物の素材の希少性がわかって来たので牙の事は内緒にした、『帰りにサプライズで渡した方が喜ばれるかな』と考えて。


流一は部屋に戻るとヨネ子にメールした。


「マーガレット、マンモスの魔物の素材は明後日オークションする事になったよ」


【そう、それでそのお金で武器を買うのね】


「正解!マーガレットはどれくらいの武器が買えると思う?」


【全員の武器と防具を作り直してもお釣りが来るでしょうね】


「えっ!そんなに?」


流一はマンモスの魔物とは言ってもそう高く売れるとは思っていなかった、そもそも氷河人の世界のお金は氷河の外では使えないのでそれで良いと思っていたのだ。

今まで周りのみんなは凄いと言っていたが流一はそう凄いとは思っていなかった、しかしヨネ子にも言われた事で考えを変えざるを得なかった。


「だったら全員の武器を作った方が良いかな?どうせ氷河の外にはお金を持って行っても使えないし」


【そうね、かなり良い装備が出来るわよ】


「じゃあせっかくだからマーガレットが設計してくれないかな?」


【良いわよ。ただし素材についてはこっちではわからないから鍛冶屋と相談するのよ】


「そうだね、それは大丈夫」


【それで、流一の武器はどうするの?】


「えっ?俺の?・・・そうか日本刀は無理でも同じ形で出来るかな?」


【分かったわ、じゃあ日本刀1、ロングソード2、槍1で良いわね】


「後、ショートソードも一本欲しい」


流一はイリアの分も考えたのだ、馬の世話のお礼は忘れない、さすがザ・日本人である。


【じゃあそれもプラスするわ。他には?】


「それだけでいいよ」


【流一、それじゃあエレンはどうするの?エレンには何も無いの?】


流一は武器の事ばかり考えていて完全に忘れていた。


「そうか、そうだねありがとう。完全に忘れてた。でも魔法使いの杖ってよくわからないんだよね。どうしたらいいと思う?」


【だったら明日杖を見に行きなさいよ。とりあえず見ないとわからないでしょ。それからまたメールしなさい】


「わかった、じゃあ明日またメールする。今日はありがとう」


翌日、起きて見るとヨネ子から武器の設計図の写メが送られて来ていた、さすがヨネ子、仕事が早い。

なので全部の武器を確認した後、朝食の時に流一が提案をした。


「明日のオークションでかなりのお金が手に入ると思うからこの際全員の武器を新調しようと思うんだけどどうかな?」


「良いわよ、どうせどんなにお金をもらっても氷河の外では使えないんだからここで使ってしまった方が良いしね」


ユリアナが真っ先に賛成した、商人の娘としてお金が死蔵されるのは経済に悪影響なので許せないのだ、それがたとえ自分達とあまり関係の無い氷河人の事でも。


他のみんなも当然賛成である、ユリアナに言われるまでも無くお金を持っておく意味が無いと分かっているのだから。


「それで、武器は全部俺に任せてくれないかな?」


「それってまた知恵の魔法?」


セリーヌが聞いてきた、自分の使う武器を他人に任せるのである、慎重にならざるを得ない。


「そう、知恵の魔法で設計した物をドワーフの鍛冶屋に作って貰うつもりだけど」


セリーヌだけでは無い、アメリアもユリアナも考えている。


「良いわ、流一に任せる。今まで知恵の魔法で失敗した事は一度も無いもの、信じてるわよ」


「ありがとう、絶対に良い剣を作ってもらうよ」


アメリアの言葉に自信を持って答えた。


「じゃあ私も任せる」

「それなら私も」


ユリアナとセリーヌも同意してくれた。


「じゃあ作ってもらうのは明日になるけど、俺はこの後鍛冶屋で話だけでもしてこようと思ってるんだ」


「わかったわ、言葉も喋れるようになったし、私達は街に出るわね」


アメリアがそう言うと残りの3人もうなづいた。


「あっ、エレンは俺と一緒に来てくれる?」


「師匠、何かあるんですか?」


「ああ、鍛冶屋の後魔法具屋でエレン用の杖も見ようかと思って。俺は杖の事はイマイチわからないから自分で選んで欲しいんだ」


「本当ですか!ありがとうございます」


今日一番の笑顔になった。

それを見て『ヨネ子ありがとう』と心の底から思う流一であった。


「そう言う事ならしょうがないわね。じゃあ私達3人で出かけましょう」


とアメリアが承認してくれた、もちろん他の2人も異存は無い。


鍛冶屋には武器屋の主人と一緒に行った、ボレアース1番の鍛冶屋と職人を紹介してもらうためだ。


「久しぶりだなグレンデル」


「久しぶりだなセルジオ」


今さらだが武器屋の主人はセルジオと言うらしい、そしてグレンデルがボレアース1番の鍛治師であり鍛冶屋グレンデル工業の主人である、もちろん屈強なドワーフだ。


「早速だがグレンデル、商談の前に紹介したい者がいるんだが」


「そっちの兄ちゃんと姉ちゃんかい?」


「そうだ、この人達は氷河の外の人で男の方が流一、女の方がエレンと言うんだ」


「初めまして、流一です」

「初めまして、エレンです」


セルジオの紹介の後挨拶をする流一とエレン。


「ああ初めまして、俺がこのグレンデル工業の経営者で鍛治師のグレンデルだ。それにしても氷河の外とはまた随分と遠くから来たもんだな」


「それはちょっと訳ありでな、それはまた後で話すとしてこの2人はお前に武器を作って欲しいそうなんだ」


「へー、どんな武器だい?」


「特殊な剣1本、ロングソード2本、ショートソード1本、槍1本の計5本です」


「なっ!なんだと、5本だと。氷河の外のお人は随分と金持ちなんだな。俺の剣はそんなに安くは無いぞ、お前に払えるのか?」


あからさまに不機嫌になった。

ボレアース1番とは自称では無く評判だ、それだけに高いプライドを持っている。

そんな職人の武器を一度に5本もオーダーしようと言うのである、『安く見られたものだ』と不機嫌になるのも仕方ない。


「グレンデル、明日のマンモスの魔物の解体ショーとオークションの話は知ってるかい?」


セルジオがグレンデルに聞いた


「なんだ唐突に。それなら俺も見に行って出来ればマンモスの素材を手に入れてーと思ってるよ」


「この人達はそのマンモスの魔物を狩った人達だよ」


「なんだって!・・・・・」


次の言葉が出てこない、よほど驚いたのだろう。


「実はそのマンモスの魔物に襲われたのが俺たちで助けてくれたのが流一さん達なんだよ」


「じゃあお前、その現場を見たのか?マンモスの魔物が倒されるところを」


「ああ、怪我をして動けなかったがしっかり見たさ。どうだい、明日のオークションの売り上げじゃあ足りそうに無いかい?」


「いや、十分だ。いくらになるか見当も付かないが俺の武器5本程度では無くならないくらいの金額になるのは俺でも分かるぜ」


「じゃあ武器を作ってくれるな?」


「ああもちろんだ、マンモスの魔物を倒した英雄の剣ならこちらから打たせて欲しいくらいだ」


セルジオとグレンデルの話が終わったようだ。

流一はそれを聴きながらやっと凄い事になってると実感した、ヨネ子に言われて考え方を変えてはいたが実感はまだ無かったのだ。


「じゃあ先にセルジオとの商談が終わってからゆっくり話を聞こう。それで良いか?」


「はい、大丈夫です」


それから2人の商談が続いた、取引が長く信頼が醸成されているのであろう話は約1時間ほどで終わった。


「よし、それじゃあ話を聞こうか。まず最初に言っていた特殊な剣ってな何だ?」


「それは日本刀と言いまして、ソリのある片刃の長剣です。少し柔めの素材で刃の部分を作り硬めの素材で横と背面を覆う感じで作って欲しいんです。詳しい設計図は他の武器と一緒に明日持ってきます。どうですか?」


実際の日本刀は4種類の鋼を圧着接合するが、ここでは鋼以外の金属で通常の鍛造では無い作り方になるはずなのでヨネ子は2種類の素材にしたのだ。


「出来るが素材はどうするんだ?何を使う?」


「僕は素材については詳しく無いのでグレンデルさんの意見を聞きたいのですが」


「だったら刃の部分をミスリルにして、それ以外をミスリルとドラゴナイトにティタノシウムと言う土を少し混ぜた合金を使うのが良いかもしれん」


「ではそれでお願いします」


流一には素材の事は全くわからないのでグレンデルを信じるしか無い。


「次は剣か?」


「はい、剣は3本とも刃を薄めで作って欲しいんです」


「確かに薄ければ軽くて扱い易くはなるが強度が減るな、だがさっきのミスリル・ドラゴナイト合金ならそれも問題は無いだろう」


「本当ですか、ではそれでお願いします。後は槍ですが、刃先は笹の葉状で硬く、そして横に三日月状の刃を付けて欲しいんです」


「何!刃を2種類だと?」


「はい、僕の世界では方天画戟と呼ばれる武器です」


「なら刃先はオリハルコン、三日月状の刃はミスリルでどうだろう」


「良いですね、後柄の部分は何が有りますか?」


「柄は氷河の奥地に自生する黒樫の芯が良いだろう」


「黒樫ですか、僕は聞いた事ありませんがグレンデルさんを信じます」


これで素材は決まった。


「後、剣と柄は全て別々にして下さい」


「何か理由があるのか?」


「はい、そこに魔方陣を刻んで欲しいんです。全ての剣を魔剣にします」


「何だと、そんな事が出来るのか?」


「はい、刻む魔方陣も明日持ってきます」


「わかった、それじゃあ明日。待ってるぜ」


流一の商談も終わり次は魔法具屋である、流一達はボレアースの事は良く分からないのでグレンデルに紹介してもらい紹介状も書いてもらった。

氷河人の街には魔法使いが少ない、そのためほとんどの魔法使いは魔法具屋で働いているし数も少ないので表通りを探しても見つからないと言われたからだ。


そしてセルジオとも別れ魔法具屋へと向かった。


『魔女の館ボレアース本店』と書かれた看板が掲げてある、その名前に似ず明るい雰囲気の店だ。


2人は店に入ると早速グレンデルから貰った紹介状を店員に見せる、すると店員はその紹介状を持って店の奥へと消えてしまった。


しばらくして奥から店主と思われる人物が店員と共に帰ってきた。


「お待たせしてすいません。私が当店店主のローガンです」


「流一と言います」


「エレンです」


軽く挨拶を交わす。


「早速ですが、グレンデルさんの紹介と言う事で魔杖をお探しとか」


「はい、後で装飾や魔方陣を刻んだりしてもらおうと思っていますが良い素材は有りますか?」


「はい、お客さんは運が良いですよ。昨日幻の素材と言われる一角獣の角が入荷しまして、これ以上の素材はございません」


紹介状には流一達がマンモスの魔物を倒した事と明日のオークションの事が書かれていたため出し惜しみは一切無いようだ。

だからと言って足元を見たり騙したりと言う事はしない、紹介だからと言う事もあるが、マンモスの魔物を倒せる相手に不埒な事をしてバレたら命が無いと思ったからだ。


「ではそれを見せて下さい」


ここで今まで大人しかったエレンが行動に移った、自分の使う杖なのでしっかり確認したいのだ。


それを聞いたローガンは直ぐに奥にある、現代で言えば金庫のような場所から一角獣の角を取ってきた。


「これが一角獣の角です。これほど魔杖に適した素材は他に見当たりません」


「これ、凄いです。持っただけで魔力の流れが実感出来ます」


エレンが一角獣の角を手に持って確認した後、そう言いながら流一に渡した。


「本当だ、これなら凄い魔杖が出来そうだ」


流一も確認した、素人でも感じる凄みがある。


「ところで一角獣ってどんな生き物ですか?」


流一は、凄い事はわかったが聞いたことの無い生き物なので質問してみた。


「一角獣とはここボレアースのさらに北の海に棲む海棲の亜竜です」


亜竜とはヒュドラやワイバーンのような竜の仲間だがそこまで強く無いものだ、しかし竜よりは弱いと言うだけで氷河の外では全てSランクであり、Aランクでも上位のパーティーがやっと倒せるレベルの強さを持つのが亜竜だ、因みに竜と亜竜は魔物しか存在しない。


「それって物凄く強いって事ですよね。そんな魔物を倒せるハンターがいるんでね」


流一は感心した、単純に凄いと思った、が少し話が違うようだ。


「それが、一角獣はまだ誰も狩った事が無いんですよ」


「「えっ?」」


エレンと初めてハモった、いや今はそれどころでは無い。


「じゃあ何でここに一角獣の角があるんですか?」


「それは、一角獣には特別な習性がありまして。実は墓地と言うか、寿命が来ると決まった場所に集まる習性がありまして」


流一は思わず『象かよ』と叫びたくなった、もっとも象の話はただの伝説だが。


「1組だけその場所を見つけたハンターのパーティーがあるんですよ。それでそのパーティーがたまにその墓地のようなところに行って死んでいたら角と魔石を持って帰るんです」


「「死んでなかったら?」」


当然の疑問を投げかける流一とエレン、また綺麗にハモった。


「殺したりはしないそうです。死にかけでも亜竜ですからどんな反撃をされるかわかりませんし、死の間際くらいは安らかにと思って自然に死ぬのを待つそうです」


「そうなんですか。それでたまたま最近死んだ一角獣が居たと言う事なんですね」


「そうなんです」


本当に運が良かったんだと思う流一、エレンも同じことを思っている。


「じゃあエレン、これで作って良い?」


「はい、凄く嬉しいです」


そう言って喜ぶエレンを見て、流一は再びヨネ子に感謝した。


「じゃあ明日また来ますのでこれを取っておいて下さい」


そうローガンに言って店を出ると2人は少し街を散策した、アメリア、ユリアナ、セリーヌの3人が街に出ているのでエレンにも街を楽しんで欲しいと流一は思ったのだ。


そして『熊熊亭ゆうゆうてい』に帰ると3人は既に帰っていた。


夕食時、武器について色々聞かれたが内緒にした、流一はサービス精神が旺盛なのかサプライズ好きなのだ。


そしてヨネ子に一角獣の角についてメールすると、翌日には魔杖の設計図も送られて来ていた。

そして剣の鞘に付ける魔方陣も送られて来ていた。





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