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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
41/140

41 氷河の奥地(どころかその先)へ

《おはようございます》


流一が目を覚ますとエルクが挨拶をしてくる。


《おはよう》


時間は8時、市場や商店が開くのは9時頃が多いので氷河に出なければ丁度良い時間だ。


食堂に行き二人で朝食を食べていると女性陣がやって来た、皆しっかり化粧をして。


《皆さんおはようございます》


「「「「おはよう」」」」


エルクが最初に挨拶をする、躾がしっかりされているのだろう気持ちの良い挨拶だ。

女性陣も言葉は分からなくてもエルクの態度と雰囲気で何を言っているのかわかったので挨拶を返した。


『雪花亭』はハンターが多いためこの時間に食事をしている者は居なかった、なのでエルクの氷河人語(?)を聞かれずに済んだのは運が良かった。


流一はあまり気にしていなかったが、ライヒブルクは最北の地の一つであるとされているので氷河の奥地の更に奥地に人が居ると言うことが知れるのは問題があるのだ。


なのでその事についてセリーヌから、エルクは人前では喋らないようにと注意を受けた。


「じゃあ俺達は市場で食料を買ってから商店を見て回るから12時に此処に集合で良いかな?」


「一度戻るのは面倒だし私達も買い物に行くつもりだから一緒に買い出しをするわよ、その後お昼ご飯を食べてから直接イリアさんの所へ行きましょ」


とアメリアが提案してきた、前日はセリーヌだけ先にイリア邸に行くようにしていたが、他の皆が何も言わない所を見ると既に相談していたようなのでそうする事にした。


無事買い出しも終わり13時頃に近くのレストランで食事をしながら相談をする。


「エルクの住む街は結構大きくて他にもいくつか街があるらしい、だからエルクを送るだけじゃ無くてしばらく泊まりたいと思うんだけどどうだろう」


「しばらくってどれくらい?」


「んーーーー、1週間くらい?」


「なんで疑問形なのよ!」


流一とアメリアがコントのようなやりとりをする。


「とりあえず予定は未定って事で、それよりその間イリアには迷惑をかけるから昨日もらった白金貨をイリアにあげたいんだけど良いかな?」


「そうね、予定が未定ならそれくらいは必要かもね」


パーティーの金庫番ユリアナが真っ先に賛成してくれたのであっさり決まった。


「それともう一つ、今安い一等級の魔石は売らずに結構持ってるけど3等級以上の魔石もいくつか売らずに取っておくようにしたいんだけど」


「なぜ?何に必要なの?」


「実はこの前森で練習してたのは『マナチャージ』って言って、魔石の魔力を使って魔力を回復する魔法なんだ。だから魔力切れに備えて沢山の魔力を持つ3等級以上の魔石を持っておきたいんだ」


「「「魔力を回復?そんな事が出来るの?」」」


「出来ますよ、私も今練習中です」


アメリア、ユリアナ、セリーヌの息の合った質問にエレンが答えた。


「それならそうしよう、ところで回復出来るのは自分だけなの?」


「いや、誰でも出来るよ。アメリア達も身体強化で魔力が減ったら回復してあげられるよ」


アメリア、ユリアナ、セリーヌの3人も少ないが魔力を持っている、そして以前アメリアとユリアナが『ファイアー』の魔法を使えた事で3人も魔法が使える事は分かっていた。

しかし流一やエレンが居るのに『ファイアー』や『ウォーター』を覚えても仕方ない、なので3人は身体強化を練習して10分くらいは戦えるようになっている。

魔力切れになると流一以外は昏倒してしまうため普段は使わずに狩りをしているが、本当に必要になれば必殺技的に使えるのだ。


「それなら絶対に必要だね、前回の雪狼戦の時使うかどうか迷って結局使わなかったから。あの時は魔力切れで倒れるのが心配だったけど次からは使っても直ぐ回復出来るって事だろ」


「確かにあの時私も迷って結局使わなかったのよね。それが迷わず使えるようになるなら絶対必要ね」


セリーヌとユリアナが雪狼戦の反省を踏まえて賛成してくれた。


それを聞いた流一は

『前衛の3人なら一等級魔石の魔力でも十分なんだけど』

などと失礼な事を考えてはいたが声には出さなかった。

鈍感ではあっても馬鹿では無いので当たり前だが。


相談も終わり『デザートイーグル』プラス1はイリア邸へと向かった。


「こんにちはイリア、今日は口の硬い友達として貴女にお願いがあって来たの」


「なんだか含みのある言い方ね。でも良いわ、他ならぬ親友セリーヌと『デザートイーグル』の頼みですもの、話しくらいは聞くわよ」


そう言いながら皆んなを邸の中へと招いた。


「さっそくだけどセリーヌ、私達氷河に行くからその間私達の馬を預かって欲しいの」


「えっ?氷河にはいつも行ってるじゃないの」


「いつもとは違うの、今回は一度行ったら何日も帰ってこないのよ」


「何を言ってるの?そんなの自殺行為じゃないの。何でそんな事を?無茶は止めて」


「実はこの子、氷河の先に住む氷河人らしいの。それでこの子を街まで連れて行く事になったのよ」


「何ですって!氷河人って。そもそも氷河の先に人が住んでるどころか街ですって?どう言う事?」


そして此処からは流一が詳しく説明した。

そして遺品の一部を見せるとイリアもようやく納得した。


「じゃあエルクくんだったかしら、この子の街まで行ってくる間馬の世話をすれば良いのね」


「そう、初めての場所だから少し泊まって様子を見て来ようと思ってるからちょっと長くなるかもしれないけどお願い出来ないかしら」


「そういう事なら預かっても良いわ、その代わり帰ったら氷河人や街の事を私にも詳しく教えてくれる?」


「ええ、約束するわ。ありがとう」


《このお姉さんが馬を預かってくれるって、だからもう安心だよ》


《本当?お姉さんありがとう》


流一がエルクに伝えるとエルクもお礼を言って頭を下げた。


「エルクもありがとうって」


今度はイリアにエルクの言葉を伝えた。


「はー知らない言葉を話す人って。それより初めての人や言葉でも話せるって、超言語って魔法も凄いわね」


「それからこれ、馬の餌代とかに使って欲しい」


そう言って流一は白金貨を1枚イリアに手渡した。


「ありがとう、本当は要らないって言いたいところだけど正直助かるわ」


「こちらこそ5頭もの馬の面倒を見てもらうんだから少なくて申し訳ない」


「そんな少ないなんて。それより馬の事は気にせず無事に帰ってらっしゃい」


「もちろん、ありがとう。じゃあ明日出発前に連れて来るから」


「わかった、待ってるわ」


商談(?)も無事成立し安堵の表情を浮かべながら『デザートイーグル』プラス1は『雪花亭』へと帰って行った。


この日は全員早めに就寝し翌朝は7時に起きて食堂で朝食を食べる。

食後は『雪花亭』の精算を済ませて8時頃出発した、さすがに宿を契約したまま氷河に出て何日も帰らなければ問題になるからだ。


『雪花亭』を出るとセリーヌがエルクを同乗させてイリア邸へと向かった。

そして馬を預けるとイリアに見送られながら氷河へ出発した。


先ずはエルクの父親達の遺体を隠した現場へ向かう、途中一度の休憩だけで目的地に着いた。

エルクはよほど氷河に慣れているのであろう、少年とは思えないほどの健脚で『デザートイーグル』に着いてきた。


遺体を隠した場所に着くと流一が収納から木の箱を出した、そしてそこへ全員の遺体を入れるとまた収納へと仕舞った。


そして此処からはエルクの先導でメルカートを目指す、エルクの住んでいる街の名前だ。


途中で一度キツネの魔物に襲われたが難なく撃退し順調に進む、すると突然エルクが薪用に木の枝をとるように言ってきた。

普通に考えれば氷河の中の生木が薪になるとは思えないがとりあえずエルクの指示に従って小枝を集めた。


小枝を集め終わり出発すると直ぐに大きな岩が見えてきた、この岩の陰に今から泊まるキャンプの入口があるそうだ。


キャンプの中に入るとかなり広い空間が確保されており沢山の薪用と思われる小枝が積み上げられていた、流一達はその小枝の山の端に持ってきた小枝を積み上げた。


エルクの話しによると、全てのキャンプが同じで泊まる時は必要な量の薪用の木を持って行くそうだ。

そしてそれは乾燥させるため薪の山の端に置き、使うのは前から置いていて乾燥した木を使うそうだ。

そうすればいつでもキャンプで火を使う事が出来るし薪も無くならない氷河人の知恵だ。


そうして氷河人はあちこちにキャンプを作り何日も氷河に泊りがけで狩りをするらしい。

獲物や素材はソリのようなもので運ぶためかなりの量を狩れるらしいがエルク達のソリはマンモスに破壊されていた、なので流一達が収納持ちで無ければ遺体はもちろん遺品も全て置いて帰るはずだった。


その後同じような岩の陰や枯れた大木のウロなどのキャンプを経て6日後、メルカートの前線基地のような建物が見えた。


建物に近づくと門番のような氷河人が出てきた、もちろん氷河人ではない来訪者に警戒している。


そこへエルクが出て行き成り行きを説明するとすんなりと通してくれた、そして建物に入ると馬車で街まで送ってくれると言う。

『氷河なのに馬車?』と不思議に思ったが建物の裏手に回ると立派な馬車が用意してあり土の道が街の方向へと続いていた。


エルクの説明によるとこの建物は狩猟のための前線基地だそうだ、メルカートを含め街は全て土の地面に作られているので氷河の中に前線基地を作り獲物や素材をソリから馬車に積み替えて運ぶための施設らしい。


そして事情を聞いた門番は気をきかせて馬車を使わせてくれたのだ。


馬車に揺られる事約10分、ここからは氷河どころか雪さえ無い土地に畑が作られていた。


さらに約2時間程馬車に揺られるとメルカートの街に着いた、来る途中所々に村らしき建物が有ったがここは規模が段違いである。

しかも人間の街と違い魔物よけと思われる柵は有るが城壁で囲ったりはしていない、戦争が無い若しくはいくつか有る街全てで一つの国なのだろう。


街に着くとエルクは直ぐに家に帰った、そして母親に抱きつき大泣きを始める。

ついさっきまでは帰ってくる為に気を張っていたのだが、母親を見て本来の少年の姿へと戻ったのだ。


母親もエルクの姿を見て悟ったのだろう、エルクの頭を撫でながら大粒の涙を流している。


流一達はただ二人が、特にエルクが泣き止むのを黙って見ているしか出来なかった。


小一時間ほどすると泣き疲れたのかエルクはそまま寝てしまった、子供には過酷とも思える旅をしてきたので仕方ない。


母親はエルクを部屋へ連れて行き寝かせると!やっと流一達に挨拶をしてきた。


《皆さんエルクを連れて帰って頂いたようでありがとうございます。私はエルクの母親のリルと言います、あの子はご覧のように寝てしまったので良ければ話を聞かせてくれませんか?》


そう言って全員に椅子を勧めてくれた。


《その話し私たちにも聞かせてくれないか?》


流一達が椅子に座ると数人の女性がそう言いながらエルクの家に入ってきた、親戚か何かなのだろうかえらく遠慮が無い。


《さっきエルクだけが余所者を連れて帰って来たって街の連中に聞いたからやって来たんだけど、あんた達がそのエルクの連れかい?》


どうやらエルクの父親と一緒に狩りに出ていた男達の配偶者たちのようだ、一緒に狩りに行くほど親しい間柄なので遠慮が無いと言う事だ。


あまりに人数が増えすぎたので椅子はもう無い、なので女性達はリルの後ろに立って話しを聞くようにした。


そして流一は自己紹介とメンバー紹介に続きエルクとの出会いの場面から知っている限り詳しく説明した、そして収納から遺品を取り出し床に並べた、あまりに多くてテーブルの上には乗り切らないからだ。


それを見てリルを始め女性達は泣き始めた、流一達は再びなす術無くただ泣き止むのを黙って待っていた。


しばらくしてやっと心の整理がついたのか全員泣き止むと最も年長と思われる女性が話し始めた。


《恩人の前で醜態を晒してしまって申し訳無かったね》


《いえ、お気持ちは察します》


《ところで遺体も持って帰ってくれたそうだけどそれはどこに?》


《それも収納で》


そう言って流一は遺体の入った木の箱を収納から取り出した。


《ありがとう、ありがとう。これで大事な家の人をゾンビなんかにせず火葬してあげられる。本当にありがとう》


年長と思われる女性の言葉に合わせ全員が頭を下げて来た。


この世界では死者は火葬にするのが一般的だ、そうしないと魔素の影響でゾンビ化してしまうからだ。

ただしハンターなどが狩場等で死んだ場合は、魔物や動物の餌になって死体が残らない事がほとんどなのでその時は何もしない。


そして一人の女性が部屋を出て行き、しばらくして老人を連れて戻ってきた。

老人はこの地域の長老という事だった、そしてエルクの父親達の話しを聞いてやって来たのだ。


《あなた達がこの街の男達の亡骸を届けてくれたのか、私からも礼を言う、ありがとう》


そう言って長老は『デザートイーグル』全員に向かい一礼するとテキパキと葬送の指示を出し始めた。

火葬の指示はこちらに来る前に既にしているようだ。


どうやら地域の集会所のような場所で合同の葬式のような儀式めいたものをするとの事で全員準備を始めた、しかも既に夕方なのに今日中にするそうだ。

この街ではそれが当たり前なのだろう、全員動きに迷いが無い。


準備をしている間流一達はリルが軽い食事を用意してくれたので食べて休んでいた。


そして夜、葬式のような儀式が始まる。

流一達もせっかくなので参加した。


集会所には近所の人達が多数参集していた、そして話しは聞いているのであろう流一達を見ても特に何も言ってくる者は居なかった。


儀式は現代の神父か牧師に当たると思われる人物が精霊への報告と来世への願いを込めたお祈りから始まった。


祈りを捧げる場所には火、水、風、土、森それぞれの精霊を象徴するオブジェが飾られ、その前に死んだ男達の遺品が一人一点づつ並べられている。


通常であれば火葬前の遺体が棺に入れて並べられ、参列者の内特に親しかった者は顔を見てお別れをする事が出来るそうだ。

しかし今回は遺体の損傷が激しいため見せない方が良いとの判断により、遺体の代わりに遺品を並べるようにしたらしい。


お祈りが終わると参列者達は遺族の元へ行きそれぞれにお悔やみの言葉を伝えている、そして精霊を象徴するオブジェに簡単な祈りを捧げて帰って行く。


簡単ではあるが、長引けば遺体がゾンビ化して動き出すリスクが高まるので短時間で済むようにしている内にこの形が定着したそうだ。


通常であればこの後直ぐに棺を火葬場に移し火葬されるが、今回は死亡後かなり時間が経っているため既に火葬された後だった。


因みに、今回死亡後かなり時間が経っているにも関わらずゾンビ化しなかったのは雪に埋めていたため魔素の影響をあまり受けなかったからだ。


流一は知らなかったが、魔物に食べられないようにと雪に埋めた事で偶然ゾンビ化を免れたのだ。


儀式も滞りなく終わると流一達はエルクの家に泊めてもらう事になった。

宿屋はそれなりに有るが、時間が遅くなった事とエルクがどうしても泊まっていけときかなかったからだ。


そして流一達は眠りにつく、翌日からの事は明日考えれば良いのだから。





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