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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
38/140

38 氷河の奥地(ではなく森)へ

『雪花亭』へと帰ってきた流一は直ぐに食堂で食事を済ませた、女性陣はまだ帰ってきていなかったからだ。

この時間に帰っていないという事はイリア邸でご馳走になっているのだろうと思ったからだ。


そしてヨネ子にメールする


「マーガレット、今日はありがとう。無事に帰って来れたよ、アドバイスがすごく役に立った」


【そう、良かったわね。それより、植物を使った特殊な魔法はまだ使えないの?】


「ああ、まだ使えない。『マナチャージ』とか使えると凄く便利なのはわかってるけどね、かなり魔力は増えてるはずなんだけど」


『マナチャージ』とは植物の種を使い魔石の魔力をマナに変えて取り込む事で魔力を補う魔法である。


流一のもつ魔法陣には、この世界で森属性と呼ばれる植物を媒介にした魔法がいくつかあったがまだどれも使えていなかった。


【『マナチャージ』は魔力をほとんど使わないわよ】


「えっ?なんで?他の魔法は魔力が上がったら使えるようになったのに」


【そもそもたくさん魔力がいるなら『マナチャージ』に使わずに他の魔法を使った方がいいでしょ】


「あっ!それもそうか。じゃあなんで使えないの?」


【植物に働きかける分魔力量より魔力操作が上手く使えないとダメなのと、想像力が追いついていないからじゃ無いの?】


「そっか、魔力操作は結構出来るようになったとは思うけど想像力は確かに追いついて無いかも。そもそも植物が魔石の魔力をマナに変えるってところが意味不明だし」


【流一は植物の光合成はどこまで習ったの?】


「光合成?葉っぱに光が当たると水と二酸化炭素から酸素が出来るってところかな、なんで?」


【ザックリしすぎだけどまー良いわ。それの光を魔力、水と二酸化炭素を魔石、酸素をマナに変換して想像してみなさい】


「あー!そうか!そういう事か!ありがとう、なんだか『マナチャージ』が使えそうな気がしてきた。明日早速練習するよ」


メールを終えた頃女性陣も戻ってきた。

そして早速アメリアから質問される。


「流一、成果はどうだったの?」


「えー!いきなり?まずはお疲れ様とか無いの?」


「あなた疲れるようなタマじゃ無いでしょ。それより単独行動を許したんだから成果報告しなさいよ」


ひどい言い草ではあるが気兼ねの無い仲の証明でもある。


「一応新種は捕まえて来たよ。他にも魔物がいくらか狩れたからそれなりの収入はあるはず」


「はずって何?報酬は貰ってないの?」


「新種認定は明日になるらしい。新種の素材もこれから鑑定だから価値が決まるのは明日らしいよ」


「あー、それはそうか。いくらギルドでも新種と初めての素材じゃ直ぐに換金なんて出来ないわよね。じゃあ明日報酬を受け取るって事で良いの?」


「そう。で、明日はみんなどうする?俺は出来れば報酬を受け取った後は休みたいんだけど」


「珍しいわね、流一が積極的に休みたいなんて。そんなに疲れたの?」


「いや、そうでも無いんだけど。明日はちょっと魔法の練習をしたくて、出来れば森のような場所で」


「なんで森なの?まー良いけど。みんなどう思う?」


アメリアが他のメンバーに聞いた。


「私は師匠と一緒に行って良いかな?森でする練習って気になるし」


エレンは魔力が上がった事で今まで以上に新しい魔法を覚えたいと思っていたし使いたかった。


「じゃあ明日は全員でピクニックなんてどうだろう。氷河での狩りだとブーケファロス達を走らせてやれないからたまには良いと思うんだけど」


「いい考えね、私も久しぶりにラファーガに乗りたいわ」


セリーヌの考えにユリアナも同意する。


「では明日は報酬を受け取った後みんなで森までピクニックで良いわね」


「「「「おおー」」」」


アメリアの確認に女の子ばかりとは思えないほど勇ましい返事が返って来た。


「ところで、せっかくだからイリアも誘って良いかな?」


セリーヌがさらに提案する


「そうね、良いんじゃない」


「良いと思います」


「私も良いですよ」


「俺も。他の人だと魔法の練習を見られるのは困るけど、イリアさんならもう全属性使えるって教えたから問題無いし」


「じゃあそれで決定ね」


全員が賛成し明日の予定が決定した。


翌朝、『デザートイーグル』は9時過ぎに『雪花亭』を出てハンターギルドへと向かった。

セリーヌ以外はそれぞれの馬をギルドの厩舎に繋ぐと全員ギルドに入って行った。

セリーヌだけはイリアを迎えに行ったのだ。


ギルドでは受付嬢から会議室に行くよう促されたので全員で二階へと向かった。

まだ査定が終わっていないらしくゲイル達『トリプルトライデント』のメンバーは来ていない。


しばらくしてようやくゲイル、エリカ、サブリナの3人が会議室に入ってきた、続いてギルド職員と思われる女性が入ってきた。


「改めて、流一君昨日は本当にご苦労様、そしてありがとう。それから初めての人もいるようなのでもう一度自己紹介しよう」


そう言ってゲイルがメンバーの紹介をし、流一もメンバーの紹介をした。


「ところでゲイルさん、後の3人はどうしたんですか?」


「後の3人は他のメンバーと氷河に狩りに行ってるよ」


との事、ゲイルの話しによれば、メンバーは3人1組で3組に分けられ2組は氷河で狩り、1組はギルドに残り休暇兼情報収集を行っているらしい。

この3人1組で3組というシステムが『トリプルトライデント』というパーティー名の由来だそうだ。

そして今日はゲイルの組が情報収集の番で他の3人とまだ会った事の無い3人が狩りの番だそうだ。


「ではそろそろ良いですか?」


ゲイルの話しが終わった頃ギルド職員の女性が話しに入ってきた。


「今回の査定額は魔物が新種認定されましたのでその分が10000マニ、新種の魔石が4等級で8000マニ、新種の素材が全部で12000マニ、ただしこれは初めての素材という事のご祝儀価格みたいなものですから次からは大分安くなると思って下さい、最後に既存の魔物の魔石と素材が合計で5200マニ、全部で35200マニになります」


と言って大量の金貨や銀貨の入った袋を置いて部屋を出て行った。

分配や使い勝手を考えて白金貨は入っていない、ギルドのささやかなサービスである。


「では5分の1が報酬額なので7040マニが流一君の分で良いかな」


「はい、結構です。ありがとうございます」


「これで依頼は終了ということで、流一君にはもう一つ頼みたい事があるんだが・・・」


ゲイルが報酬の分配が終わるとなんだか言い辛そうに切り出した。

流一達も、特に女性陣はスカウトでもする気かと思い緊張した。


「先日の目印を付ける方法を教えてもらえないだろうか?俺たちはまた何度もあそこへ行く予定だし、それ以外でも目印のある範囲の外での狩りをするつもりだ。だからその時のために覚えておきたいんだ。報酬はこの中から10000、いやもっと払っても良いとにかくパーティーの安全のために是非とも教えてほしいんだ」


ゲイルは机に頭を擦り付ける勢いで懇願してきた、これはさすがに他のハンターには見せられない、入場制限のある会議室ならではだろう。


「あれは魔法ですから魔法使いの人しか使えませんよ」


「何、あれも魔法だったのか?では属性は?どの属性の魔法使いなら使える?」


相変わらずこの世界では属性が重要視される、魔法は属性とは関係無い事を知っている流一にはかなり違和感があるがそれを広めるわけにもいかない。


「あれは無属性なので魔法使いならだれでも使えるようになりますよ」


「本当か?ではうちの3人の魔法使い全員に教えて欲しいがどうだろうか?」


「わかりました、引き受けましょう」


「ありがとう、それで報酬は?いくらで教えてもらえる?」


「報酬は最初に言った10000で良いですよ」


結局流一が1人で決めてしまったが他のメンバーを見る限り不満は無さそうだ、と言うより嬉しそうだ、自分達は何もせずに10000マニの収入が入るのだから当然の反応とは言えるが。


ゲイルが他のメンバーが帰ってから話すので明日教えてほしいと言ったので了承した。

そして明日の9時にギルドで待ち合わせる事になった。


流一達は報酬の7040マニを受け取りギルドの外へと出た、魔法を教える分の報酬は成果報酬として明日受け取る事になっている。

この世界では先払いはよほど信用のおける相手では無いと持ち逃げされるリスクが高いのでほとんど行われない、なのでこれは流一がまだ信用されていないと言うより慣習として後払いにしたのだ。


ギルドの外ではセリーヌとイリアが談笑しながら待っていたので合流した。

そしてイリアに話を聴くと、ライヒブルクの南東に結構広い草原とその先に森があるとの事なのでそこへ行く事にした。


イリアは騎士爵であり兵科としては軽騎兵になる、なので馬は同じレインボーン種だが名前は付けていない。


6人は早速森へと出かける、天気は良いがいつもの弱い北風が吹いているため氷河の冷気がここまで届いて少し肌寒い。

それでも馬達も久しぶりに厩舎を出られて嬉しそうだ。


早駆けはしないが馬が喜んでいるのか、時折ギャロップ程度で走る事もあった。

そして11時過ぎ頃目的の森の前に着いた。


昼にはまだ少し早い、なのでアースウォールで広めに馬場を作ると馬達は馬具を全て外して放した。

アメリア、ユリアナ、セリーヌ、イリアの4人は剣や槍の訓練をするようだ。

そして流一は森の木のそばまで行き練習を始める、エレンもそれに着いてきた。


まずは『マナチャージ』から、一等級の魔石と市場で買った木ノ実を1個づつ取り出して集中する。

イメージは光合成、前日ヨネ子に言われた通りにイメージすると木ノ実から根が生えて魔石を包み出した。

そして今度は芽が出て数枚の葉っぱを作ると、そこからマナが放出され口や鼻から入ってくるのを感じた後アースウォールで減ったマナが回復した事を実感した。


マナは目に見えないため流一は感覚で成功した事を感じたがそばで見ていたエレンには木ノ実の変化しか分からず不思議そうな顔をしていた。


「師匠、これは木ノ実を発芽させる魔法ですか?」


「違うよ、エレンも少し魔法を使ってみて。そうだ、ついでだからウォーターの温度を調節する魔法を教えるよ」


流一は次に自分以外の者の魔力も回復出来るか試そうと思ったのだ、ついでにエレンの魔法のレベルアップも。


「まず水を出して、そして水を小さな粒がゆっくり動いているようにイメージして」


「はい、ウォーター」


普通に水の塊が現れてエレンの前方で球体を形作っている。


「次にその粒の動きがだんだん激しくなるようにイメージして、そうすれば激しく動いた後の体温のようにだんだんと水の温度も上がっていくよ。激しく動けば動くほど温度は上がるからね」


この世界の人には液体がどうとか分子がどうとか言っても分からない、なのでこの世界の人にもわかる表現でそれを教えなければならない。

そういう意味では流一はエレンにとって優秀な師匠と言えた。


しばらくすると100度が近くなったのであろう、気泡が出来始めた。


「師匠、温度が高くなりました」


「ああ、見てるよ。それを何度も繰り返すと粒の動きの激しさで温度を自由に変えられるようになるよ」


「本当ですか、私頑張ります」


「でもその前にちょっと休憩」


そう言ってエレンのそばへ寄って行った。


エレンにとって初めての魔法のためまだロスが多い、そのため流一にとっては丁度いい魔力の減り具合であった。


そして魔石と木ノ実を収納から取り出し『マナチャージ』を使う。

するとまた根が魔石を包み葉っぱが出来た、今度はその葉っぱをエレンの口元に近づける。

すると、今度は流一には分からないがエレンは魔力が回復した事を実感する事が出来た。


「えっ!これってさっきと同じ魔法!魔力を回復する魔法だったんですか?」


「そうだよ、正確には魔石の魔力を木ノ実の力を使って取り込む魔法だね」


「これってエルフしか使えないって言われてる森属性の魔法ですよね、師匠は何故使えるんですか?」


「これってエルフしか使えないの?って言うかエルフっているの?」


ちょっと目の輝きが増す流一、久しぶりにオタク心を刺激されてしまった。


「エルフは大陸中央にあるフィールマ大森林の奥深くに住んでるって話しですよ」


「そうなんだ。あっ、でも前にも言った通り魔法に属性は関係無いからキチンとイメージ出来ればエレンも使えるようになるよ、ってか覚えてもらうつもりだけど」


「本当ですか?早く覚えたいです」


「それよりもうお昼だよ、みんなを呼んでご飯にしよう」


そう言って2人はみんなの所へ戻った。


「みんなー!お昼にしよう」


流一がそう叫ぶと


「「「「はーい」」」」


と普段とは違う可愛らしい声で返事が返って来た、みんな女の子なのである、たとえ剣や槍を構えていても。


全員集まるとエレンが収納から野営の時のバーベキューセットを出した。

そして流一はライヒブルクに行く途中で狩った鹿のハーフ魔獣の肉を出した。


それからアメリア、ユリアナ、エレンが手際良くバーベキューの準備を始めると流一は馬に餌と水を与えに行った。

イリアはお客さんなので何もしていない、と言うよりみんなの手際が良すぎて何も出来ないと言った方が良い。


いつもは狩りの後、日が傾いてから始めるバーベキューであるが、初めて青空の下で食べるバーベキューは格別に味が良く感じる。

『デザートイーグル』の面々ですらそうなので、初めてハーフ魔獣の肉を食べるイリアには尚更である。

なので全員ちょっと食べ過ぎたようだ。


「あなた達いつもこんな美味しい食事をしているの?」


イリアが羨ましそうに聞いて来た。


「さすがにいつもと言う訳にはいかないわね。それに今日はハーフ魔獣の肉だから特別なのよ」


セリーヌが答えた。


「ハーフ魔獣って何?そう言えばこんな美味しい肉食べた事無いわ、何の肉だったの?」


「ハーフ魔獣って動物と魔物のハーフだからハーフ魔獣って言うのよ。今日のはライヒブルクの南にある魔物領域で偶然狩った鹿のハーフ魔獣なの」


「鹿のハーフ魔獣ってすごく美味しいのね」


「鹿だけでは無いわよ、ハーフ魔獣はどれも全て美味しいわよ、って言っても私はこの鹿しか食べた事無いんだけど」


「他の皆さんは食べた事があるんですか?」


「俺たち4人はウサギのハーフ魔獣なら食べた事があるよ、やっぱり普通のウサギに比べて凄く美味しかったのを覚えてる」


と流一が説明しながら収納からレモンを出した。

前日に市場で買った物だ、それをサバイバルナイフで半分にして全員のカップに半玉分づつ絞るとウォーターで水を足した、即席のレモン水である。


濃い味のバーベキューにサッパリしたレモン水、流一は割と気がきく男であった。


その後食事の片付けが終わるとまた流一とエレンは魔法の訓練、後の4人は剣と槍の訓練に戻った。


エレンはウォーターの温度調節の訓練を続ける事にした。


流一は次に『ソーンコントロール』を使ってみる、ソーンとはイバラの事であるが別に根でも蔦でもあまり関係は無い、要は植物の長くしなやかな部分を使い自由にコントロールするのだ。

しかしただコントロールするだけでは無い、棘を纏わせて武器にしたり強化してロープがわりにしたりと割と使い道はある。


そしてもう一つ、『アースソナー』を練習する、これは植物の根を使った索敵の地下版である。

元々はトリュフのような地下に出来る食べ物や資源探査のための魔法なのだが、地下や岩の隙間のような索敵では発見困難な場所の魔物や動物の探索にも使えるので練習するのだ。


日が傾きかける16時頃、流一はどちらも魔力操作が難しく魔力のロスが大きかったが感覚は掴めた。

エレンも大分安定して温度調節が出来るようになった。

他の4人も充実した訓練が出来たようだ。


その日の夜、食事はイリア邸に誘われた。

『デザートイーグル』は前日も女性陣がお世話になっているにもかかわらず遠慮しない。


流一はさすがに遠慮しようと言ったが却下された、リーダーなのに・・・。


結局『雪花亭』に帰り着いたのは21時を過ぎていた。


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