21 初依頼達成(ヨネ子のおかげで)
『デザートイーグル』の4人は朝早い時間に『森の料理人の隠れ家』へと向かった。
ハンターギルドから連絡が行っていたのであろう、早朝にもかかわらず『森の料理人の隠れ家』の主人が待っていてくれた。
ここで依頼内容を詳しく確認する、それによると魔獣の種類はウサギ、鹿、イノシシ、狐、ホロホロ鳥の5種類がこの料理店のメイン料理のため高額、それ以外はギルドの買い取り額と同じで全量買い取りするが種類は問わず最低1匹は収穫が無ければ依頼失敗となる。
期間は魔物領域までの往復にかかる2日を含めて5日以内でとの事だった。
依頼ボードでは期限無しであったが、これは常時受け付けていて締め切りが無いという意味なので間違いでは無いのだが流一は常時依頼と同じように好きな時に行って好きな時に帰って来れば良いと勘違いしていたようだ。
もちろん依頼失敗のペナルティーはギルドの依頼ボード通り無い、しかし当然個人とパーティーのランク評価には影響する。
詳細を確認して早速4人は魔物領域へと向かった。
4人の移動はかなり早い、それは収納魔法のお陰で荷物が少ないからだ。
なので普通のハンターなら日没後にやっと到着するところ『デザートイーグル』は日没の2時間ほど前に到着した。
なので様子見がてら少し狩りをする事にした。
そしてこの依頼の難しさを実感する、野営の準備も必要なため2時間しか出来なかったがハーフ魔獣は狩るどころか発見すら出来なかった。
獲物がいないわけではない、強くはないが通常の魔物なら沢山いたのだ。
そして野営の準備をして夕食をすませるとその日は早めに寝た、もちろん見張りは忘れていない。
翌日、ユリアナは弓を用意した、前日は忘れていたがハーフ魔獣は襲ってこないので動物狩りの時と同じように遠距離攻撃しなければならないからだ。
準備が終わるとアメリアは剣をユリアナは弓を構えて、エレンと流一はウィンドカッターをいつでも放てるようにして魔物領域へと入って行った。
アメリアが剣なのは魔物からの防御のためだ、魔法使い組が対応可能だとしても狩猟としてはアメリアが剣で守る方が最も効率が良いと思ったからだ。
そして頑張るアメリア、流一もたまに加勢する。
ユリアナとエレンは出番がない。
そう魔物以外出会わないのだ、前日は4人とも魔物と戦っていたがそれではチャンスを逃す可能性が高いのでアメリア1人、対処が間に合わない場合は流一と2人で魔物に対処すると決めていたのだ。
「どういう事?ハーフ魔獣なんて本当にいるの?」
疲れきったアメリアが言う。
「そうだな、昨日から全然それらしい動物が居ないな」
流一も少し諦めモードだ、が、スマホの中の魔法陣に『探知』が有ったのを思い出した。
これまでは使う必要が無かったため忘れていたのだ。
「そうだ『探知』を使えば良いんだ」
「『探知』?なにそれ」
アメリアが聞いてくる。
「『探知』って近くにいる生き物の気配を知る魔法だよ、今の俺の魔力なら大体半径500メートルくらいはわかるはず」
「そんな便利な魔法があるなら最初から使いなさいよ!ってか500メートルってなに?距離の単位か何か?」
この世界での長さの単位は統一されたものがない。
服屋や武器屋や建築家など職人やギルド毎にそれぞれの長さの単位があり一般的に使われる単位は無いのだ。
そのためメートルと聞いても何のことかわからなかった。
しかし今は悠長に説明している時間は無いのでその事は無視した。
「ゴメン、今まで使う必要が無かったから忘れてた。今から使うよ」
そして『探知』の魔法を使うとエリア内にいる生き物の場所が手に取るようにわかった。
しかし生き物の場所だけでありどんな生き物かは分からない。
それでも闇雲に動くよりは効率が良い、なので生き物の反応を頼りに狩猟を行うが結局この日も魔物以外は発見出来なかった。
その日の野営ではアメリアは疲れ切っていたので早めに休ませ見張りからも外すことにした。
アメリアを休ませた後食事の後片付けを終えると
「流一くん知恵の魔法でなんとかならない?」
とユリアナが聞いてきた、3人とも魔法の真実を知った事で知恵の魔法に信頼を置くようになっていたのだ。
実際はヨネ子の知恵と知識なのだが。
「そうだな、ヨ・・魔法で聞いてみよう」
そう言うとまた皆んなから少し離れてヨネ子にメールする。
「マーガレット、また知恵を借りたいんだけど」
【今度は何?】
「ハーフ魔獣って言う獲物を狩ってるんだけど上手くいかなくて・・・」
とハーフ魔獣の説明と『探知』魔法について説明した。
【なるほど、分かったわ要するに探知で魔物とハーフ魔獣の違いがわかれば良いのね】
「そうなんだ、出来るかな?」
【次の狩猟に出るまで何時間ある?】
「10時間か11時間くらいかな」
【じゃあそれまでに魔法陣を作って送っておくわ】
「そうか助かるよありがとう」
そうメールを送ると2人の元へ帰って行った。
「すぐには無理だった。今日の見張りは3人でエレン、ユリアナ、俺の順だよね、だから明日の朝の見張りの時にはどうにかするよ」
「分かったわ、じゃあ明日に備えて私たちも寝ましょう」
ユリアナの言葉に合わせ流一もテントに入った。
翌朝ユリアナに起こされ流一の見張りの番になった。
すると新しい魔法陣の写メとメールが来ていた。
さすが『マッド才媛ティスト』仕事が早い。
【魔法名『索敵』、使うと頭の中にマップが展開して味方が青、害意のある敵が赤、それ以外は緑の光点で表示されるわ。ハーフ魔獣は襲って来ないらしいから緑で表示されるはずよ。問題があればまたメールして】
と書かれていた。
さっそく使ってみると青の光点一つと緑の光点が8個ほど現れた。
どうやら意識の無いものは表示されないようだ、青一つはまだ寝付いていないユリアナでアメリアとエレンは表示されないからだ。
緑は動物か魔物かわからない、魔物領域に入っていないのでこちらの存在に気付いていないため害意が無いからだ。
朝日も登って来たので皆んなを起こし朝食にする。
その時に『探知』の魔法がグレードアップしたことを伝えた。
そしてちょっと早めに狩りを始める。
『索敵』の魔法を使うと魔物領域内に赤、外に緑の光点が十数個づつ現れた。
その赤の光点に混じって緑の光点が2つ有った、念願のハーフ魔獣と思われる。
距離は近い方が2時の方向約150メートル、遠い方が前方約210メートルだ。
先ずは近い方に行く、連携は前日と同じだが魔物の位置が分かっているのでアメリアは前日のような無駄な戦闘が省けた。
しかし、約30メートルまで近づいた所で逃げられた、しかもそれはもう一匹がいた方向だったため二匹とも『索敵』のエリア外へと消えていった。
結局何のハーフ魔獣かさえ分からなかった。
気を取り直して魔物領域の中へと進んで行くとまたいた、3時の方向300メートル。
次は音を立てないようにと慎重に進んだが、やはり約50メートル手前くらいで気付かれてしまった。
なぜなら魔物も多いため魔物にさえ見つからずに何百メートルも移動するなど不可能に近かったのだ。
そのため何の成果も無いまま昼過ぎになってしまった。
4人は一度魔物領域の外に出て軽い昼食を取りながら作戦会議をする。
普段は狩りの時には昼食は取らないが今日は特別だ。
そして今度はハーフ魔獣を見つけると移動先に先回りして待ち伏せる事にした。
でも上手く行かない。
臭いでわかるのかと思い風下で辛抱強く待ったが結局この日も成果0である。
さすがの4人にも焦りが出てきた。
そして夜、焦りと疲れで野営の準備も力が入らない。
結局流一はまたヨネ子に泣きついた、事実ほぼ涙目であった。
「マーガレット、ハーフ魔獣が狩れない」
【おかしいわね、『索敵』の魔法陣は失敗作だった?】
「いや、それはちゃんと役に立ってる。でも姿が見えるまで近づけないんだ。すぐに気付かれて逃げられる」
【そんなの気配を消して近づけばいいだけでしょ、馬鹿なの?】
「気配を消すなんて簡単に出来ないから苦労してるんだよ」
さすがに『お前は出来るのか』とは言えなかった、言えば即答で『出来る』と返って来そうだったからだ、まあ実際そうなので間違った判断ではない。
【しょうがないわね、じゃあいる場所は分かってるんだから見えなくても弓なり魔法なり打ち込みなさい】
「それだと遠すぎて当たっても致命傷を与えられなくて逃げられるよ」
【流一、やってみて言ってるの?】
流一はやってないので返事が出来ない。
【まあいいわ、それなら風魔法のブローがあったでしょ、ユリアナに弓を撃たせてブローで矢の威力を上げなさい。それくらい出来るでしょ】
ブローとは圧力を強化した風を起こす魔法だ、つまり風圧で弓の速さと威力を増すよう指示したのだ。
「そっか、その手があったか。わかったありがとう」
そして翌日に備えた。
メールが終わるとヨネ子は、『そんなに狩るのが難しい動物なら普通は罠でも張って捕まえるんでしょうに、気が付かないのか気が付いてて意地になってるのか?』
やれやれと思っていた。
事実この依頼を受けるハンターの多くは罠での狩猟を行なっていたが流一達がそれを知るのは帰ってからだ。
狩猟最終日、もう後がない流一達は朝食も早々に切り上げ魔物領域へと入って行った。
さっそく反応があった11時の方向約200メートル、息を殺し約40メートルまで近寄った。まだ姿は見えないが茂みの中に確実にいる。
ユリアナの弓の腕では50メートル以上離れると威力も命中率も格段に下がる。
しかし40メートルまで近寄ってもウサギかホロホロ鳥でもなければ致命傷はあたえられない。
そのためここからブローで補助するのだ。
そして弓が放たれると同時に流一がブローをかけた。
『どっ!』
と鈍い音が聞こえた、
「手応えがあった」
ユリアナの小さくしかし確信に満ちた声がもれた。
4人で矢の放たれた場所に行ってみると狐のハーフ魔獣が倒れていた。
「「「「やったー!」」」」
全員が一斉に歓喜の叫びをあげた。
その後は順調に狩れるようになり
結果、鹿2、狐2、ウサギ5、ホロホロ鳥1、野ネズミ1、亀1のハーフ魔獣を仕留めた。
ちなみに亀は半分土に埋まって隠れていたのをエレンが偶然見つけたのだ。
その日の日没後、野営地まで戻って来るとさっそく獲物の血抜きを始める。
通常血抜きは狩ったその場ですぐにしないと肉に血が回って商品価値がなくなるのだが、流一の収納魔法のお陰で夕方まとめて血抜きする事が出来た。
血抜きにかかる時間も狩りに使える事も成果が上がった要因の1つだ。
そしていよいよ夕食、全員一致でウサギのハーフ魔獣を食べる事にした。
なにせ普通のハンターパーティーは必要最低限の荷物しか持たないのに対し、『デザートイーグル』は調理器具も食器も調味料もふんだんに持っているので野営地でも家庭と同じ料理が作れるのだ。
にもかかわらず食べ方は凝ったことをせずタレだけ用意し焼き肉にした。
シンプルイズベストというより肉の味をダイレクトに楽しめるからだ。
そして一口
「ウマー」
「「「美味しいー」」」
女性陣だけハモッた、やはり流一は流一なのだ。
ウサギ1匹だと約3キロの重さがあるので可食部分だけなら約1.3キロとなる、たとえ女性3人含む4人だとしても肉体労働の後なので足りない。
しかしさすがに2匹目を食べるとは誰も言えず、足りない分はいつも通りの食事にした。
帰りは少し早めに出発し15時の鐘の前にバルテスに着いた。
帰るとすぐに『森の料理人の隠れ家』へと向かい納品する。
料理屋の厨房で獲物を全て出すと、
「えっ、こんなに有るんですか?」
と主人は驚いている。
そして獲物をマジマジと見てまた
「弓で狩ったんですか?」
と二度驚いてる。
「え?普通は弓で狩らないんですか?」
こんどは『デザートイーグル』の4人が驚く。
「はい、ハーフ魔獣は警戒心が強く俊敏なため殆どの方は罠を使って獲ります。罠以外の方法で獲って来た方は5年ぶりくらいです」
4人は声には出さないが初日からの悲惨な結果を思い出し『最初から知っていればこんな苦労はしなかったのに』と思った。
しかし
「でも罠の場合は暴れて肉質が少し落ちるので値引きさせてもらいますし、最悪魔物に横取りされますから可能なら罠以外の方が良いですよ」
と言われたので『やっぱり良かった』と安心するのであった。
そして査定額は全部買い取ってもらい11000マニ、現代の価値にすると約110万円にもなった。
そして依頼完了証明書をもらいハンターギルドへ報告に行った。




