20 初めて依頼を受注します
翌日も同じ場所で狩りをして熊の魔物1、狐の魔物3、イノシシの魔物2の収穫があった。
そして前日と同じくらいの時間に魔物領域を出ると今度は肉用にウサギやホロホロ鳥、イノシシを狩ってから解体をした。
その後は予定通りに途中の森や魔物領域で狩りをしながら11日かけてレクスブルクとテレイオースの中間地点であるバルドアン伯爵領バルテスに着いた。
バルテスは人口約16万8000人で大都市とまではいかないが、テレイオースとレクスブルクの中間地点であるため交易商人が多数行き交うことで発展した商業の街である。
バルテスに着くと早速ハンターギルドで収穫物を売った。
途中に買い取り出張所のある村はいくつもあったがバルテスまで売らずに来ていた。
なぜなら他の素材はどこで売ってもほぼ同じ値段だが、スターフルーツだけは都市で売った方が高値が付くからだ。
これは別にハンターギルドが値段に差を付けているわけではない、高額商品のため売れるのは都市だけであるのに対し傷みが激しいため都市から離れていればいるほど輸送時の劣化を考慮して値付けをしているだけである。
なので直接都市で売った方が高値で売れるのだ。
特に流一の収納魔法のお陰で収穫から約12日経ってはいるが収穫後10分ほどと同じ鮮度のため一個50マニ、全部で33個あったのでスターフルーツだけで1650マニもあった。
現代の価値なら16万5千円ほどだ。
他の素材はオオトカゲの魔物の魔石が一個で1000マニと高額だった。
魔石は黒い1等級が30〜70マニ、少し赤みがある2等級が100〜300マニ、かなり赤い3等級が500〜1500マニ、少しくすんだ赤の4等級が3000〜10000マニ、真っ赤な5等級が20000〜50000マニほどで取り引きされている。
もちろん最上級魔石は国宝なので市場に出る事はないので値段など無い。
そして基本的にはモンスターランクSが5等級、Aが4等級、Bが3等級、Cが2等級、D以下が1等級を持っている。
値段に幅があるのは魔石毎に赤みが違うためだ。
なのでBランクのオオトカゲの魔物の魔石は3等級の平均的な魔石を持っていたという事だ。
それ以外の素材も数が多かったので全部で2726マニ、合計は5376マニで現在の価値なら約54万円くらいだ。
約半月で1人1344マニは高収入とは言い難いが、実質狩りをした日数は5日間で後はずっと移動していたのでそこは仕方ない。
4人は久しぶりの街なので1日休んで面白そうな依頼があれば受けようと考えていた。
『デザートイーグル』はCランクとはいえ新米ハンターでありながら仕事の選り好みをするほど余裕があるのだ、もちろんお金ではなく心に。
4人は一応情報ボードと依頼ボードを確認した。
すると西の隣国フランドル王国で政変があり内戦が起こっているのでフランドル方面へ向かうハンターは気をつけるようにとの情報があった。
その情報ボードを見てエレンが少し悲しそうな顔をしている事にユリアナだけ気が付いたがあえて見ないフリをした。
依頼ボードには魔物の素材に混じり食肉用の動物の捕獲依頼が多いのも都市らしい。
その中に『各種ハーフ魔獣高価買い取り』というものがあった。
「みんなハーフ魔獣って知ってる?」
流一は聞き慣れない言葉だったので3人に聞いてみた。
「いえ知らないわ」
「私も」
「私も」
アメリアの言葉にユリアナとエレンも続いた。
「じゃあ受付に聞いてみよう」
そう言うと流一は受付に向かった。
受付に聞いたところ、ハーフ魔獣とはその名前通り魔物と動物のハーフだ。
通常はあまり生まれる事は無いのだが、何故かバルテスの北にある魔物領域だけはハーフ魔獣が生まれやすいらしい。
ハーフ魔獣の特徴は目が赤くなり角や牙や爪が元の動物より少しだけ大きく硬くなっているところだ。
俊敏性は魔物と同等まで上がっているが魔物のように襲って来る事はなく警戒心が強いため逃げ隠れするので捕獲どころか発見する事も難しい。
素材としての価値は無いが、肉質が上質な動物の肉を熟成させたような深い味わいで非常に美味なのだ。
そのためバルテスの高級料理店から常に高値での依頼が出されている。
依頼ではあるが指定ランクも期限も必要数の指定もない上にペナルティーも無い、ほぼ常時依頼と同じだ。
それでも受注依頼なのは料理店毎に依頼を出しているからということだった。
「どうする?俺はハーフ魔獣って狩ってみたい・・・いや素直に言うと食べてみたい」
流一がそう言い3人の顔を見ると皆同じ気持ちなのかウンウンと頷いていた。
そして受付に受注を告げると、依頼書はボードに貼ったまま受けたい料理店を決めてくれと言う事だった。
4人で相談した結果、依頼を発注している中で最も老舗と思われる『森の料理人の隠れ家』と言う料理店にした。
その事を受付に伝えると受注処理をしてくれた、そして詳細は料理店に行き直接聞いてくれとの事だった。
4人は取り敢えず予定通り翌日はお休みし、その次の日の朝『森の料理人の隠れ家』に向かった。




