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異世界に飛ばされたらメールだけ現代と繋がった!  作者: ファンタ爺LV999
133/140

133 三度目×5・初めて×2

お祝いから一夜、『琥珀の森』の食堂で朝食をとりつつ今日の予定を相談する、王宮に報酬を受け取りに行くのは午後からだからだ。


とは言え時間は午前中しかないので大した事は何も出来ない、と言うわけでいつもの王都散策となった、流一的にはマルコとメアリと牧場へのお土産探しといったところだ。

この世界にはお土産の習慣なんて無いとわかっていても買ってしまうのは流一らしさと言うより日本人らしさと言うべきか。


その後昼食をすませると全員で王宮に向かった、王宮では徒歩だったこともあり少し確認に時間を取られたが無事財務大臣に面会出来た。


「まさか歩いて来られるとは思いませんでした。コレが討伐報酬の500万マニ、こちらがバハムートの素材代2000万マニですお受け取り下さい」


「有難う御座います」


セリーヌがそう言うと財務大臣の目の前で金額を確認する、『デザートイーグル』の5人で確認するのでそう時間はかからない。

この世界では信用出来る間柄であってもお金の確認はその場で行うのが常識となっている、コレはほぼ商取引における慣習となっているのでしない方が逆に怪しまれる事になる、なので『デザートイーグル』も面倒だが毎回確認している。


「確認しました、それで依頼完了証明書の方は?」


「それは宰相様が用意しています。ご案内しますので付いてきて下さい」


財務大臣はそう言うと『デザートイーグル』+αを引き連れ宰相の執務室へと向かった。


宰相の執務室では宰相が執務机から立って『デザートイーグル』+αを迎えた。


「ようこそ、こちらが依頼完了証明書になります」


宰相はそう言って依頼完了証明書を直接手渡してくれた。


「有難う御座います、ではこれで・・・」


セリーヌが礼を言って執務室を出ようとすると宰相に止められた。


「お待ちください、もう一つこちらを」


宰相の言葉の後、宰相の横に控えていた文官と思しき人物が何やら巻物と思しき物体を恭しく広げた、そしてそれを読み上げる。


「ハンターパーティー『デザートイーグル』セリーヌ=ジークムント殿、アメリア=マルス殿、ユリアナ=マーキュリー殿、ミランダ=フォン=ベルギウス殿、シェーラ殿、並びに旧『デザートイーグル』流一米村殿、エレン殿。この度、バハムート襲撃と言う国難に対し貴殿らの勇猛果敢な行動によりコレを討伐する事が出来ました。その功績と勇気と栄誉を讃えここにアルバート勲章を贈る事とする」


文官は読み上げが終わると、その国王のサイン入りの巻物を『デザートイーグル』の方に向けて皆んなに見え易いように差し出した。


「あのー、ギルドマスターから聞いてませんか?」


セリーヌは確かにギルドマスターのランディに勲章も爵位も要らないと即答した、それを聞いていないのだろうかと質問した。


「確かにランディ殿から勲章も爵位も要らないとの要望は聞いております」


「それではなぜ?」


「それは・・・先日あなた方が帰った後その場で話し合いが設けられまして・・・」


そして宰相は昨日『デザートイーグル』+αが帰った後の会議の様子を話し出した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「王よ、此度の功績に対し王国として金銭以外に何か考えてはいるのですかな?」


最初に声を上げたのは外務大臣だった。


「いや、何も考えてはおらん」


国王は自信なく答えた、国王も今回の功績を讃える何かをすべきとは思っていたからだ。


「それではこれからお考え下されまいか」


「それがのう外務大臣、実はハンターギルドのギルドマスターランディ殿を通じて勲章も爵位も強く固辞されたとの報せがあったのだ。だから国王もどうして良いのか分からず何もせぬ事になったのだ」


答えたのは宰相だ、バハムートが現れて以来その対策にランディと協力して当たっていたので情報の共有はなされている。


「そうでしたか、しかしそれでも私は我が国の最高賞となる『アルバート勲章』の授与を進言致します」


「確かにそれは良い考えだ、王も元々討伐など考えておらず撃退出来ただけでも『アルバート勲章』の授与と叙爵を考えておられた。それを事前に断られておるから無理も出来なくてな」


「それはそうでございましょうが、本来勲章とは国王様から授与を決定するだけで拒否するような類のものではございません。ですのでどうかご再考をお願い致します」


「叙勲する事自体は余も賛成じゃが、何故そこまで強く主張するのだ外務大臣よ。何か理由でもあるのか?」


国王が直接外務大臣に尋ねた。


「はは、しからば申し上げますと、かの者たちは既にエムロード大王国とリシュリュー王国に於いて叙勲されております」


「うむ、それは余も知っておる。たしかどちらの叙勲式にも大使を派遣しておったはずじゃが」


「はい、その通りでございます。そこで問題になるのがリシュリュー王国の勲章でございます。ご存知の通りこれは氷河を荒らすマンモスの魔物の討伐によるものです」


「おお、そうであったな。我が国と同じように国の脅威となっておったマンモスの魔物を討伐して叙勲されたのであった」


「そこでございます。同じ国の脅威となっていた魔物の討伐です、あちらがマンモスの魔物でこちらがドラゴンであるバハムートとなれば功績はこちらの方がより大きいと言わざるおえません」


「はっ!そうか、そう言うことか」


ここに来てやっと国王は事の重大さに気が付いた。


「そうです、リシュリュー王国ではマンモスの魔物討伐の功績で外国人である『デザートイーグル』を叙勲しました。それが自国のハンターでありながら同等以上の功績を上げたにも関わらず叙勲しなければ諸外国に対して我が国は狭量な国、正当な評価の出来ない国との印象を与えてしまいます。これは外交にとって大きな障害となります」


「そうだ、この際相手が欲していようといまいと問題無い。私も叙勲に賛同致します」


外務大臣の言葉に、その場にいた貴族の1人が叙勲賛同を申し出ると直ぐに他の貴族もこぞって賛成し出した。

しかしその中に数人毛色の違う意見の者がいた。


「私も叙勲には賛成致します。しかしそれが『アルバート勲章』である必要は無いのでは無いですかな。要は叙勲した事実が有れば良いのです。で有れば『聖銀十字勲章』いや事によれば『グランベル勲章』でも良いのではございますまいか」


こう主張したのは先の戦争で殺された3人の貴族の内の1人と親友だった貴族だ、他にも数は多く無いがその貴族たちの親戚筋や友人の貴族がこの意見に賛同した、やはり『デザートイーグル』を快く思わない貴族はいるのだ。


因みにアルバート王国では他国と違い勲章に明確な順位はつけていない、しかし一応の順位はある、それは上から順に国名を冠した『アルバート勲章』、ミスリルと十字の意匠の『聖銀十字勲章』、国の英雄の名を戴いた『グランベル勲章』、黄金と星の意匠の『金星勲章』、現代で言う国鳥の名を冠した『白頭鷲勲章』、剣と盾と杖の意匠の『英雄勲章』の6種類となる。


そしてその『デザートイーグル』を快く思わない貴族に対し国王が直接話し出した。


「この場ではっきり宣言しておく、先の貴族3人は戦争により戦死したのだ、決して不名誉な死では無いと。そして同時に『デザートイーグル』は直接手を掛けはしたが勇猛なる戦士が手柄を上げただけで決して恨んだり非難すべき相手では無いと」


「ですが!ですが私はそう割り切れません。戦場で実際に戦えれば我らが勝っていたかもしれませんのに」


最初に意見した貴族が尚も食い下がった。


「どうやらお主は勘違いをしているようだな?」


それを宥めるように国王は静かに言った。


「勘違いとはどう言う事でございましょうか?」


「このバハムートを見よ、かつて「人間には討伐不可能」そう言われていたドラゴンを無傷で討伐してきたのだ、それだけでもあの者たちには決して勝てぬと判らぬか?あの者たちは貴族3人を斬ったのでは無い、貴族3人の首を取るだけでこの国を助けてくれたのだ、寛大な事にな」


「何を仰います王よ。バハムートはいくら強いとはいえ所詮一体、しかし戦争となれば我が軍は5万の軍勢で戦えます。いくら『デザートイーグル』が強かろうと数の力に勝てるわけはございません」


その言葉を聞いた国王は「はー」と大きく溜息を吐くと天を仰ぐように椅子にもたれ掛かり一言言った。


「宰相よ、この者たちの目を覚まさせてやってくれ」


それを受け宰相が『デザートイーグル』について調べた情報の一部を公表する。


「まず実際に戦争になった場合ですが、5万の軍勢では『デザートイーグル』には勝てません、最悪全滅するでしょう」


「ちょっと待て宰相、我が軍5万の軍勢でもあの7人に敵わぬと言うのか?」


「いえ、7人ではありません、その内の5人にです」


この言葉には流石に殆どの貴族が驚いた、そして懐疑的な目を宰相に向けた。

もちろんコウェンバーグ侯爵始め一部の優秀な貴族は独自に調べて知っていた事ではあるので、そう言った貴族は平常心で聞いている。


「なっ、5人だと。何故だ、何を根拠に申しておる」


「先の戦争、我が国から隣国ガベン王国に中止の要請を出したのは知っておりますかな?」


「もちろん知っておる。それがどうした」


「ガベン王国では我が国の侵攻中止を受けて、3万5千だった軍を4万に増やして単独で侵攻致しました。その軍と戦ったのが旧『デザートイーグル』の5人です」


「何?戦ったのはフランドル軍では無いのか?」


「はい、フランドル軍は戦いには参加しておりません」


「それで、その軍に『デザートイーグル』は5人だけで勝ったとでも言うのか?」


「勝ったどころではありません。4万の兵の殆どを生け捕りにしました。フランドル軍はその生け捕りにした兵士の見張りをしただけです」


「なっ、それは本当か?本当に5人で4万もの兵士を生け捕りなど出来るのか?」


「それは出来るとしか言えませんな、これは友好国でもあるガベン王国で直に戦った指揮官に直接確認した事ですので間違いようがありません」


「そんなに強いのか?あいつらは」


「さらに申し上げるならば、これはランディから聞いた、非公式でありギルドマスターだからこそ知ることができた情報なのですが」


「まだ何かあるのか?」


「そもそも我が国が侵攻を考えるに至ったフランドル王国軍の衰退は内戦などではなく『デザートイーグル』と戦ったからだそうです」


「どう言う事だ?」


「詳細は申せませんが『デザートイーグル』はフランドル王国のライナ平原でフランドル王国軍と戦う事になったそうです。その数7万8千と」


「まさかそれにも、7万8千の軍にも勝ったと言うのか」


「そのまさかです。その後『デザートイーグル』はフランドル王国の王宮に乗り込み当時の国王サイラスを討っております」


「そんな、そんなことが本当に人間に出来るのか?」


やや放心状態の貴族たち、まあ始めて聞けば信じられない気持ちの方が大きいので仕方ない。


「つまりあのまま本当に戦争になれば我が軍は敗れていたでしょう。最悪国は奪われ我々は処刑か良くて戦争捕虜となっていたかもしれません。だから国王様は助けてくれたと言ったのです」


元々調べて知っていた一部の優秀な貴族以外はようやく『デザートイーグル』の力がわかってきたようだ、ただその一部の優秀な貴族の数が少ないような気はするが。


「では『デザートイーグル』、流一米村、エレンの7人にアルバート勲章を授与すると言う事で決定ですな」


最後は一部の優秀な貴族の1人の言葉で締められた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「と言うことがあったのでございます」


流石にその理由を聞いてしまうと断れない、受けなければ国に大きな不利益が生ずる、それが外国ならまだしも拠点を置いたばかりの国なのだ、断れるはずが無かった。


「わかりました、そう言うことであればお受けいたします」


セリーヌは静かにそう返事した。


「おお、そうですか、受けてくださいますか。有難うございます。有難うございます」


宰相は心の底から喜んでいるようだ、それほど叙勲の通知が重荷だったのだろうか。


「それでは叙勲式とパーティーは約20日後となります。正式な通知は後ほどお送り致します」


そして『デザートイーグル』+αが『琥珀の森』に帰ると、その日の内に正式な通知が来た。


流一の頭の中では擬人化された『不運』が「何?貴族と付き合うのが面倒?慣れろよ、沢山用意してやるから」「何?勲章ももう要らない?もらうのはお前だけじゃ無いんだから仲間のためにも受けろよ」「何?早くエレンと帰りたい?エレンも仲間と二度と会えなくなるんだからもう少し仲間と一緒に過ごさせてやれよ」と騒いでいた、中々いい仕事をする『不運』である。


しかしこれを他の仲間が見れたとしたら神様か天使に見えるかもしれない。


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